様々なスマートフォンが販売されていますが、iPhoneならば上位モデルに「Pro」の名前を付けるなどして製品を区分しています。それ以外のメーカーは製品の特徴ごとに複数のシリーズを展開しており、たとえばサムスンは折りたたみモデル「Galaxy Z」シリーズ、高性能カメラのハイエンドモデル「Galaxy S」シリーズ、価格を抑えたコスパ重視の「Galaxy A」シリーズという3つのモデルを日本で展開しています。

その日本で販売されるGalaxyに、新たに「Galaxy M」シリーズが登場します。4月21日に発売となる「Galaxy M23 5G」は日本初上陸のMシリーズであり5,000万画素カメラや120Hzの高速駆動ディスプレイなどなかなかの性能を誇る製品です。とはいえスペックを見てみると同時に発表された「Galaxy A53 5G」の下位モデルという印象を受けます。わざわざ「Galaxy M」という別のシリーズで出てくる理由は何故なのでしょうか?

  • 日本初上陸のGalaxy Mシリーズ「Galaxy M23 5G」

Galaxy Mシリーズ最初の製品「Galaxy M10」「Galaxy M20」は2019年2月、インドで発売になりました。インドではサムスンとシャオミがスマートフォンシェアの1位を争っていましたが、シャオミは低価格な「Redmi」シリーズを主にオンラインで販売し急激にシェアを伸ばしていきました。インドは国土が広く、物流が整備されるとともにEコマースが拡大しています。シャオミはその波に乗ってシェアを大きく伸ばしました。2018年にシャオミはサムスンを抜いてインド1位になっています。

  • インドのAmazon専売として登場した「Galaxy M11」

そんなシャオミの攻勢に対抗して登場したのがGalaxy Mシリーズです。Galaxy Mシリーズはオンラインに特化したモデルで、価格も抑え「いつでもだれもが手軽に買える」製品として登場しました。もちろん低価格スマートフォンとしてGalaxy Aシリーズの下位モデルもECサイトで販売されていましたが、新しいモデルとすることで「オンラインだから買える」というプレミアム感も持たせたのです。販売はインドのAmazonで、SIMフリースマートフォンを多数販売しているAmazonにとってみれば「限定Galaxy」として差別化できる、特別な製品にもなりました。

日本で販売される「Galaxy M23 5G」も同様に、Amazon.co.jpでの専売モデルとなります(家電量販店やMVNOでの販売も検討中)。日本販売のGalaxyシリーズは原則としてこれまでキャリア扱いの販売でしたが、Amazon.co.jp専売とすることで新しいユーザーを広げようと考えているわけです。

  • Amazon.co.jpのGalaxy公式ストアで販売される

当初は新興国向け製品として生まれたGalaxy Mシリーズですが、販売が好調によりモデル数を急増させ、カメラ画素数をアップしたりバッテリー容量を増やした上位モデルも次々と投入されていきました。2021年発売の「Galaxy M62」は7,000mAhの巨大なバッテリーを搭載、6,400万画素+1,200万画素+500万画素+5,000万画素カメラに、フロントカメラは3,200万画素とカメラも高性能。日本でも十分通用する製品でしょう。

  • 高性能カメラに7,000mAhバッテリー搭載の「Galaxy M62」

2022年は「Galaxy M23 5G」のほかに、「Galaxy M33 5G」「Galaxy M53 5G」も海外で発売になっています。モデル名を見るとなんとなくわかると思いますが、10桁の数字が大きいほど高性能で、一桁台の数字は「0=2019年モデル」「1=2020年モデル」「2=2021年モデル」「2=2023年モデル」。これはGalaxy Aシリーズも同じで、新製品の「Galaxy A53 5G」は2022年向けのミドルハイレンジ、昨年発売の「Galaxy A52 5G」は2021年ミドルハイレンジ、「Galaxy A32 5G」は2021年ミドルレンジモデルです。

  • 日本向けのもう1つの新製品「Galaxy A53 5G」は2022年モデル、性能はミドルハイレンジ

現在海外で3モデル販売されているGalaxy Mシリーズの中で、日本向けに「Galaxy M23 5G」が選ばれたのはAmazon.co.jpで売っている他社のSIMフリースマートフォンの価格と性能バランスを比較してのこと。一つ上のモデル「Galaxy M33 5G」はカメラが6,400万画素ですが海外の販売価格は約5万円、「Galaxy M53 5G」は1億800万画素カメラを搭載しさらに高価となります。Galaxy M23 5Gは5,000万画素カメラ搭載で4万円という価格が、Amazon.co.jpが販売するSIMフリースマートフォンラインナップをうまく拡充してくれるわけです。

  • 「Galaxy M23 5G」は「iPhone 13」と同じリフレッシュレート120Hzディスプレイを搭載

なおサムスンはインドで「Galaxy F」シリーズも展開しています。これは同じくインドのEC大手「Flipkart」向けの製品です。オンライン向けに2つのラインを展開するとは、インドではまだまだサムスンブランドは強く、またECサイト側も独自モデルの投入で客を呼び込めると考えているのでしょう。

  • インドのFlipkartから販売される「Galaxy F23」。「Galaxy M23 5G」のカラバリ違いだ

サムスンのハイエンドモデルは今のところ通信キャリアのみの販売であり、SIMフリーでの販売の予定は無いようです。とはいえ高性能なカメラを搭載したスマートフォンを、オンラインでいつでも好きなタイミングで買いたいと考える人も多いでしょう。今回「Galaxy M23 5G」がSIMフリーで販売されたことで、Amazon.co.jp経由で上位モデルのSIMフリー投入の可能性も出てきました。日本での製品数増と販売ルートの拡大をぜひお願いしたいものです。

  • 上位モデルのSIMフリー版販売も期待したい