次世代のアプリ開発者を発掘・応援するべく、Appleが学生を対象に開催したアプリ開発コンテスト「Swift Student Challenge」。2026年も、優れた作品を手がけた世界の350名の学生が受賞したことがすでに発表されましたが、特に卓越した作品と認められた50名の優秀受賞者(Distinguished Winner)がWWDCに合わせて米国のアップル本社に招待されました。世界の優秀受賞者やアップルの開発者とさまざまな交流の機会を得て、濃密な3日間を過ごすことになります。
それを前に、数名の優秀受賞者が自分のアプリについてアップル幹部に直接プレゼンする機会を与えられました。日本の優秀受賞者として、この3月に高校を卒業したばかりの伊藤莉乃さんがプレゼンに参加。会場には、ティム・クックCEOだけでなく、次期CEOのジョン・ターナスさんも顔を見せ、10代の若者が作った独創性豊かなアプリに目を輝かせていました。
受賞歴のある先輩の協力を得てアプリを仕上げていった
今回のSwift Student Challengeでは、実に14名もの日本の学生が受賞を果たしました。さらに、全世界でわずか50名の優秀受賞者にも2名の日本の学生が選出されるなど、日本人学生が大いに飛躍したチャレンジとなりました。
WWDC基調講演前日の6月7日(現地時間)、数名の選ばれた受賞者がアップル幹部にアプリを直接プレゼンする特別なイベントが開かれました。ワールドワイドデベロッパリレーションズ担当副社長のスーザン・プレスコットさんが受賞者と雑談をするなか、ティム・クックCEOとジョン・ターナス次期CEOが笑顔で登場。2名を前に自作アプリを説明するという、今回限りの特別なプレゼンがスタートしました。
プレゼンの機会が与えられた日本人の受賞者は、今年の4月に慶應義塾大学(SFC)に入学したばかりの伊藤莉乃さん。伊藤さんが受賞したアプリ「ColortheGoalDaruma」は、日本の伝統的な「だるま」をモチーフに、若者をターゲットに設計した目標設定・意思決定支援アプリ。若者になじみのあるチャットベースのインターフェースで目標を入力できるのが特徴で、ユーザーの状況や目標に応じてだるまの色が変わるほか、Visionフレームワークによるテキスト認識でユーザーが直接だるまに願いごとを書き込める機能も備えます。もちろん、本物のだるまさながらの「目入れ」もバーチャルに実行できます。
小学生のころからプログラミングスクールに通っていた伊藤さんですが、本格的にiOSアプリ開発を始めたのは高校2年生の時に開かれたアプリ開発コンテスト「アプリ甲子園」がきっかけ。このアプリ甲子園で勝ちたい!という強い夢を持ち、専門的な学習を始めることになったそうです。
今回のSwift Student Challengeですが、2020年と2025年に受賞者に選ばれた杉山丈太郎さんがSFCに在籍していることもあり、杉山さんからアドバイスをもらえたそう。伊藤さんは「日本に根付いているが外国にはなじみの薄い伝統文化をAppleの人に伝えられるよう、UI/UXのデザインや言語での説明を工夫する必要がある、とアドバイスをいただきました」とコメント。このフィードバックにより、内容やデザインをブラッシュアップできたといいます。
Swift Student Challengeへの挑戦を通して、伊藤さんはデザインにまつわる力が付いたと振り返ります。「ユーザーの視点に立って、使う人の気持ちを理解して見やすさや使いやすさを考慮したアプリを作れるようになりました。私でなければこのデザインは思いつかない!と思えるようなオリジナリティも発揮できたかなと思います」
恐れずに最初の一歩を踏み出してアプリ開発に挑戦してほしい
伊藤さんから受賞アプリのプレゼンを受けたWWDC担当副社長のスーザン・プレスコットさんは、「伊藤さんは独創的なアイデア、アイデアをアプリとして具現化する思考力、情熱が伝わる表現力、総合的な技術力のすべてが卓越していた」と高く評価しました。
伊藤さんからプレゼンを受けたティム・クックCEOも、以下のようにコメントを寄せています。
「伊藤莉乃さんの作品は、テクノロジーが一人ひとりに寄り添い、自分らしい有意義な形で目標に向かう力になれることを見事に示してくれています。日本のだるまの伝統から着想を得て、若者たちが夢を言葉にし、有言実行へと踏み出すことを後押しするアプリケーションを開発された莉乃さんをはじめとする日本の次世代のデベロッパーを称えることを、大変嬉しく思っており、その創造性と創意工夫には常にインスピレーションをもらっています。」
今回、伊藤さんをはじめとする50名の優秀受賞者は、Apple本社で3日間の体験を得ることができます。「この3日間で、Appleのエンジニアリングチームや世界中の開発者と対面でさまざまな交流ができるのが、優秀受賞者のみなさんにだけ与えられる特別な体験です。開発者コミュニティの一員になれるのはもちろん、ティム・クックCEOなどの経営陣ともコミュニケーションできる機会があるので、将来優れたリーダーを目指すうえでも重要な機会となるでしょう」(スーザン・プレスコットさん)
昨今話題のAIについては、学生の情熱や創造性を取って代わる存在ではなく、技術的なスキルを手助けしてくれる「素晴らしいパートナー」として活用すべきだとアドバイスします。「今回のSwift Student Challengeでも、多くの学生がアプリのデバッグやデザインのブラッシュアップでAIの力を借りたと聞いています。アプリ開発は、単なるコード作成ではなく、個人の情熱をもとに進められるもの。学生のみなさんの才能とAIを適切に組み合わせることで、困難な問題に直面しても素晴らしいアプリの完成に導いてくれるでしょう」
Swift Student Challengeに関心を持つ若い学生に対しては、「Start」(まず始めてみよう)というひとことを贈りたいと話します。「失敗への懸念から、最初の一歩を踏み出せない気持ちはよく分かります。ですが、アプリはみんなのためにみんなで作っていくもの。周りのかけがえのない仲間、学校の先生、Appleなど、さまざまな人がサポートしてくれるはず。考え続けていては何も進みません。決して一人ではないので、恐れずに最初の一歩を踏み出してください」









