「スマートフォンに適したBluetoothスピーカー」編の第4回は、ボーズが昨年10月に発売した「SoundLink Wireless Mobile speaker」(以下SoundLink)だ。SoundLinkは、ポータブルタイプのスピーカーだ。スタイルについては、写真を見てほしい。

ボーズのポータブルスピーカー「SoundLink」。これは収納・移動時のスタイル

保護カバー部分がスタンドになる。左がスタンダードタイプで、右が「SoundLink LX」

カバーを閉じたときのサイズはW244×D48×H130mm。カバーを開いた状態で「Creative D80」と比べるとこのような感じになる

似たようなサイズということで用意した標準的なサイズの煉瓦と比べてみる。幅はほぼ同一で、高さはSoundLinkがやや上回る

セカンドバッグのような形状だが、これは収納時あるいは持ち運び時のスタイルだ。外側にある保護カバーを開けると、カバーがスタンドになる。これがリスニング時のスタイルだ。電源はACアダプターまたは内蔵のリチウムイオン充電池。内蔵充電池の場合、フルボリュームで使用しても最長3時間の連続再生が可能だ(フル充電の場合)。なお、保護カバーを閉じると電源はオフになる。そのため、持ち運んでいる際に知らぬ間に電源がオンになってバッテリーが空になるということもない。SoundLinkには、スタンダードタイプとプレミアムタイプの「SoundLink LX」の2つのモデルがある。2モデルの違いは本体のカラーと保護カバーの材質で、スタンダードタイプでは本体がブラック調でカバーがナイロン製、LXタイプは本体がシルバー調でカバーはレザー製となる。なお、保護カバーはオプションとしても販売されており、レザー製が7,140円で、ナイロン製が4,200円だ(同社Webサイトでの価格)。この記事で最初に紹介し、以降基準として使用している「Creative D80」の同社のショッピングサイトでの価格は4,980円だった。前回紹介したソニーの「RDP-NWV25B」が、同社のショッピングサイトでの価格は17,800円。そして今回のSoundLinkの価格は、スタンダードタイプで36,750円。プレミアムモデルの「SoundLink LX」では43,260円となっている(いずれも同社Webサイトでの販売価格)。このペースで行くと、次にチェックする製品は10万円前後になりそうな感じだが、安心してほしい。そんな高価なBluetoothスピーカーは多分存在しないし、たとえあったとしても「スマートフォンに適した」というカテゴリーからは外れてしまうだろう。

オプションとして用意されている保護カバー。標準とは違ったカラーにアレンジできる。左の2つはレザー製で、右の2つはナイロン製

SoundLinkの操作パネル

入力端子は、3.5mmステレオミニジャックが1系統

コンパクトなキャビネットには、ネオジウムマグネットを使用したドライバーが左右2本ずつ、計4本使用されており、中央部分には低域増強用のパッシブラジエーターが配置されている。アンプには、ボリュームを下げて聴いても音のバランスが損なわれないようにするために、レベルに合わせて低域や高域の自動補正を行う回路も搭載されている。Bluetoothのバージョンや対応しているプロファイルといった仕様については、A2DPに対応している点以外は公開されていない。Bluetooth以外の入力は、3.5mmステレオミニジャックによるアナログ入力が1系統だ。ジャックは背面パネルに装備されている。カバーによる電源のオフ以外の操作系統は、すべて天面パネルに配置されている。ボタンは、実測値でW33×D17mmの大型のもので、左から「電源」「AUX」「Bluetooth」「ミュート」「ボリュームダウン」「ボリュームアップ」と並ぶ。AUXボタンは、アナログ入力への切り替え、BluetoothボタンはBluetooth機器とのペアリングと、ペアリング済みの機器の切り換えに使用する(ペアリング済みの機器は6台まで記憶される)。

SoundLinkをスマートフォンとペアリングし、スマートフォンに保存されている音楽を再生してみる。D80と切り替えて聴き比べてみると、D80のサウンドは若干眠たく感じられる。これは中高域の出方に差があるためだろう。また、低域に関してもSoundLinkのほうがはっきりと出ている。ただし、SoundLinkのバランスは、決して重低音再生を重視したものではない。同社では、ウェーブガイドシステムによる重低音を特徴とした「SoundDock 10」を発売している。筆者は以前、SoundDock 10を試聴したことがあるのだが、その迫力とはやはり異なる。SoundLinkはフラットに近い、どちらかというと一般的なバランスのサウンドといえるだろう。筆者はこのくらいのバランスが好みだ。また、サウンドの密度の違いにも気付かされる。D80は、非常に聴きやすい中域を持つスピーカーだが、その中域に関しても明らかな情報量の違いを感じる。

ここからは記憶に頼ることになるが、前回試聴したRDP-NWV25Bと比べると、本当に低い領域ではRDP-NWV25Bのほうが存在感があったような気がする。それに対して中低域はSoundLinkのほうが前に出てくる印象だ。両者の中域の性格は、ボーカルがリアルに感じられるのはSoundLinkのほうだが、クリアで伸びを感じるのはRDP-NWV25Bだ。臨場感の面では、SoundLinkに軍配が上がるが、これはモノラルとステレオという、2つの製品の形式の違いによる影響が大きいため、仕方がないといえば仕方がないところだ。

これまで聴いてきた2台と比べると、SoundLinkには指向性がある程度存在する。リスニングポジションをスピーカーの横方向に移動すると高域は減衰するし、低域も本来のものよりも薄くなる。もっとも、それは広い指向性を持つRDP-NWV25BやD80と比べたからであって、指向性が強いスピーカーというレベルではない。いずれにせよ、こういったコンパクトなアクティブスピーカーの場合、聴く側の人間が適正なポジションに移動するのではなくて、スピーカー側を動かせばよいだけの話だ。特にSoundLinkは、電源コードに縛られないバッテリー駆動が可能なスピーカーだ。この仕様は、外に持ち出すというだけでなく、いつも同じ場所で音楽を聴くとは限らないというユーザーにとっても、なかなか便利なものといえるだろう。

さて、SoundLinkの特性を測定してみよう。測定の方法は従来と同じで、1kHzの時に-6dBになるように設定して、他の周波数の時のレベルを計っている。あまり意味のない、20Hz、50Hz、20kHzでの測定は、今回からは行っていない。100Hzのグラフでは、-3.3dBという高い数値が出ている。ただし、ピークの周波数は144Hzと出ており、100Hz以外の周波数が混ざっているようなので、実際のレベルは不明だ。440Hzでは-6.4dB。RDP-NWV25Bだけでなく、D80よりも低めだ。2kHzでのグラフはピークが-4.9dB、4kHzでは-1.6dB、10kHzでは-35.6dBとなっている。2kHz・4kHzともに、今まで測定してきたスピーカーのなかではもっとも高い。10kHzは、RDP-NWV25BとD80の中間ぐらいの値だ。16kHzでは、ちょうどその周波数に山が見られるが、この音は聴力こえてきていない。

100Hz

440Hz

2kHz

4kHHz

10kHz

16kHz

ホワイトノイズを流したときのグラフを見てみると、SoundLinkでは比較的なだらかな形をしていることがわかる。RDP-NWV25Bのホワイトノイズのグラフでは、中低域とは別に5kHzを越えたあたりにもうひとつピークが存在しており、3kHzあたりで落ち込みがあった。D80のグラフでは、1kHzを超えたあたりで若干の落ち込みがあったが比較的なだらかな形だ。SoundLinkはどちらかというとD80のグラフに近い。これはおそらくフルレンジユニットを使用したスピーカーの特徴なのだろう。

ホワイトノイズ

RDP-NWV25Bのホワイトノイズ

D80のホワイトノイズ

SoundLinkは、サイズはミニマムではあるが、同社らしいサウンドを楽しむことができる1台だ。エントリークラスとはいえ、ゼネラルオーディオのカテゴリーではなくオーディオ製品のカテゴリーに入る製品ということなのだろう。ただし、気になる点がないわけではない。まず、ペアリング時の確認音のボリュームがかなり大きい。これは、ここまで大きくしなくてもよいのではないだろうか。また、ACアダプターのDCプラグにストレートタイプを使用しているのも気になる。充電は、リスニング時のスタイル、またはカバーを閉じたスタイルで行うことになるが(それ以外のスタイルは無いのだが)、閉じた状態ではSoundLinkは自立できない。そのため、次の写真のように裏返しの状態で置かれることになる。L字形のプラグを使用したほうが、見栄えがよいのではないだろうか。

保護カバーを閉じた状態で充電を行う際には、L字型プラグのほうが見栄えがよいのでは