今回は、オンキヨーの「SBX-200」についてお届けしたい。最初にお断りしておくが、SBX-200は、純粋なBluetoothスピーカーというわけではない。本体前面にiPad/iPhone/iPod対応の格納式ドックコネクタを備え、ドックスピーカーとしても利用できるモデルだ。
今まで明言していなかったが、この「スマートフォンに適したBluetoothスピーカー」編では、Android OSを採用したスマートフォン用のBluetoothスピーカーを取り上げる趣旨で執筆している。では、なぜ取り上げるのかというと、SBX-200がドックの利用を中心としたスピーカーにはなっていないためだ。つまり、Android端末のユーザーでも違和感なく使用できて、ドックについてはメインで使うことが想定されていない製品であるように筆者には感じられたのである。なお、本製品はドックコネクタ以外にもオーディオ入力(LINE IN)も備えている。
さらに、他のBluetoothスピーカーに比べて、明らかにサイズが大きいという点も、取り上げてみたくなった理由のひとつではある。非常に基本的な話で恐縮だが、スピーカーは、現実的な範囲では、大きければ大きいほど音が良いという"傾向"がある。コンパクトでもよい音だと評価されているスピーカーもあるではないかと言われるかもしれないが、それはたいていの場合、「サイズのわりに」という一言が省略されていると考えたほうがよい。SBX-200も、単品のスピーカーに比べれば、やはりキャビネットのサイズには限界があるし、ワンボディという制約もある。しかし、今まで試聴してきたコンパクトタイプのスピーカーとは違った方向性が期待できる。
SBX-200のサイズはW450×D131×H176mm。上の写真では「Creative D80」とサイズを比較しているが、450mmという幅は、HDDレコーダーやAVアンプなどの一般的なAV機器よりもよりもわずかに広いことになる。本体上部は、アルミのバーとなっており、本体の剛性確保と同時に、持ち運びの際のグリップとしても利用できる。比較的余裕のあるキャビネットはバスレフ方式で、搭載されているユニットは、10.5cm径のフルレンジ×2。アンプの定格出力は24W×2だ。
操作パネルは、本体の右サイドにまとめられている。一番上が電源のオン・オフで、下に向かって「INPUT」「VOLUME」「S.BASS」「PARING」(Bluetooth)と並んでいる。一般的な操作は付属のリモコンからも行うことができるが、Bluetooth機器とのペアリングは、ここに配置されたPARINGボタンを使用することになる。
今までこのコラムで紹介してきたスピーカーとSBX-200で、操作の異なる点が1つだけある。今まで紹介してきたスピーカーは、電源を入れると、とりあえずBluetooth機器が接続できる状態になっていた。それらは、入力をBluetoothだけしか持たない、あるいは補助的にアナログ端子を1系統持つ程度のスピーカーであり、ファンクションの切り換えについてはそれほど考える必要はなかった。メインで使うと考えられるBluetoothを優先しておけば問題はないわけだ。
それに対してSBX-200は、ドックコネクタも装備しているスピーカーだ。入力を3系統持っていることになる。そのため、どれかを優先させるというようにはなっていない。Bluetooth機器を使うには、まずはペアリングを行う必要があるが、そのための手順は(1)「入力をBluetoothに切り換える」→(2)「PARINGボタンを押してペアリングモードに入る」となる。なお、その後の操作はリモコンかスマートフォンで行うことになるので、特に不便ということはない。慣れの問題だ。
入力がiPad/iPhone/iPodの場合には白、Bluetoothでは青、LINE INの場合には緑に点灯する。
さて、実際にそのサウンドを聴いてみよう。ソースとして使用しているのは、今までと同様に、スマートフォンに保存したMP3形式の音楽ファイルだ。まず、ワンボディタイプのシステムでありながら、音の広がりがかなり感じられることに驚かされる。ワンボディのスピーカーの場合、近い距離で聴かないと音の立体感が得にくいが、SBX-200では至近距離で聴かなくても、ライブ音源などで高い臨場感を感じられる。これまでこのコラムで聴いてきたシステムのなかで、臨場感の高さに関しては、他の追随を許さない感じだ。
また、中低域の質感の高さも特徴的だ。前回は、クリエイティブメディアのD100を試聴した。D100は、D80に比べて中低域のクリアさが引き立っていたが、SBX-200はそれをさらに上回る。おそらく使用されているアンプの差によるものだろう。ただし、中高域に関しては、D100のほうが聴きやすく感じられた。
SBX-200には、低域を強化する「S.BASS」機能が搭載されている。S.BASSには「Super Bass 1」「Super Bass 2」の2つのモードがある。聴いてみるとその差は明確で、Super Bass 2のほうが、より低域のエネルギーを感じる。
この点を踏まえたうえで、SBX-200の特性を測定してみよう。測定の方法は従来と同じで、1kHzの時に-6dBになるように設定して、他の周波数の時のレベルを計っている。測定している周波数は100Hz、440Hz、1kHz、2kHz、4kHz、8kHz、10kHz、12kHzだ。
100Hzのグラフでは、ノーマル状態で-6dBという数値が出ている。ピークの周波数は132Hzで他の周波数も混ざっているようだ。Super Bass 1にすると、-12dBとなる。Super Bass 2では-35.4dBだ。ただし、両方とも他の周波数が混ざっているようで、実際に聴いた感じでは、明らかに「ノーマル→Super Bass 1→Super Bass 2」の順でレベルが強く感じられる。
440Hzでは-10dB前後、2kHzでは-1dB前後、4kHzでは-14dB前後と、3つのモードにほとんど差が現われなかった。
8kHzでは、ノーマルモードが-14.2dB、Super Bass 1が-16.2dB、Super Bass 2が-16.6dBと、低域が強いモードになるほど、この帯域は抑えられていることが分かる。
ところが10kHzになると、ノーマルモードとSuper Bass 1が-45dB前後であるのに対して、Super Bass 2モードでは-37dB程度と、他のモードよりも上回っている。
12kHzでは、3つのモードいずれも-35dB前後だった。3つのモードは、ここで測定した結果だけを見ると、単純に、「ノーマル→Super Bass 1→Super Bass 2」という順に低域を強くしているというだけではなさそうだ。
筆者の測定環境は不正確なものなので、これだけでは判断できないのだが、SBX-200のサウンドは、中域を少し抑え気味にすることで、低域と高域にエネルギー感を持たせているのではないだろうか。そしてその傾向が一番強くなるのが、Super Bass 2というように感じられた。
いずれにせよ、SBX-200は、モードの切り換えによって、大きく変わるサウンドの傾向を楽しむことができるシステムだ。ワンボディタイプのスピーカーでダイナミックなサウンドを楽しみたいという人だけでなく、さまざまなジャンルの楽曲を聴く人にも、なかなか面白い製品だといえるだろう。