パナソニック ホールディングス(パナソニックHD)技術部門は、ガラス型ペロブスカイト太陽電池を事業化すると発表した。「ENEFACE」の商品名で、2026年9月から先行量産品として販売を開始しているほか、2029年4月から本格量産を開始する。
同社では、ガラス型ペロブスカイト太陽電池の本格量産時期を、2030年4月と発表していたが、これを1年前倒しした格好だ。
先行量産品は、パナソニックHDの開発拠点である大阪府守口市の守口拠点で行い、本格量産は、滋賀県長浜市の技術開発拠点である長浜拠点で行う予定だ。先行量販時は、パナソニックHD 技術部門が事業化を担う。
なお、「ENEFACE」の商品名は、ENERGYとFACEを掛け合わせたもので、「建物の顔であるファサードがエネルギーを生み出し、街の新たな景色をつくっていくという未来への想いを込めた」としている。タグラインとして、「まちの表情とエネルギーをつくる太陽電池」を掲げている。
パナソニック ホールディングス 技術部門 執行役員 グループCTOの小川立夫氏は、「将来のビルや建物の建築市場に入るための受注活動を開始した。まずは、先行量産品として、1.8m×1.0mの製品を出荷する。さらに、メンバーの努力によって、本格量産を1年前倒しできることに目途が立った。ガラス型ペロブスカイト太陽電池は、10年以上に渡り、R&D部門で進めてきたものであり、建物や街路など、街のデザインに溶け込み、価値を高めながら使ってもらえる」と位置づけた。
また、パナソニック ホールディングス 技術部門 コーポレートR&D戦略室長の吉川祐一氏は、「ガラス型ペロブスカイト太陽電池が、R&Dのフェーズから、事業活動のフェーズへとチェンジする。これは、技術部門の技術未来ビジョンで掲げた『資源価値の最大化』を実現するものになる。そして、2050年にはなくてはならない技術になる。これまでの太陽電池とは、想定される用途がまったく異なる。見える場所に設置する太陽電池になる。まずは、先行量産の導入を通じて、施工や運用ノウハウの蓄積を進める。社会実装を通じた市場形成を加速していきたい」と述べた。
パナソニックHDが発売するガラス型ペロブスカイト太陽電池は、「発電する建材ガラス」と表現するように、建材一体型としている点が特徴だ。
従来型の太陽電池は、屋上への設置や、メガソーラーなどとしての設置が前提となっていたが、この用途では、都市部を中心にして設置に適した場所が少なくなっている。それに対して、ガラス型ペロブスカイト太陽電池は、建材と一体化することで、ビルの窓や壁など、これまで太陽電池の設置が難しいとされていた部分に活用でき、新たな市場が創出できると見ている。窓や壁のほか、手すりやバルコニー、天窓、フェンス、カーポートなどへの設置も想定。これらの場所への設置は、カスタマイズ性や機能性が求められるが、そうしたニーズに対しても、ガラス型ペロブスカイト太陽電池は適していることを強調。発電層をガラスに塗布する仕組みとなっており、サイズや厚みには自由度があり、カスタマイズが可能だとしている。
パナソニック ホールディングス 技術部門 ペロブスカイトPV事業推進室の金子幸広室長は、「窓ガラスのサイズは千差万別だが、パナソニックHDのガラス型ペロブスカイト太陽電池であれば、そうした幅広いニーズに柔軟に対応できる」とした。
同社によると、国内において、太陽電池が設置可能と想定される面積は、従来型太陽電池がメインとしていた屋根が35億平方メートルであるのに対して、窓では16億平方メートル、壁では71億平方メートルが見込まれ、ガラス型ペロブスカイト太陽電池がターゲットとなる面積は合計で87億平方メートルに達する。屋根に比べて2倍以上の規模になるのだ。
吉川室長は、「商業ビルやマンション、公共施設、大型商業施設などが、ガラス型ペロブスカイト太陽電池の対象ユーザーとなる。デベロッパーや政府、自治体、環境配慮の高い企業に向けて提案を進めていく」という。
また、パナソニック ホールディングス 技術部門 ペロブスカイトPV事業推進室 事業開発課長の中村雄志氏は、「現時点では、具体的な販売目標はないが、狙った市場においてはトップシェア獲得を狙う。他のペロブスカイト太陽電池との競合というよりも、既存の窓ガラスや壁を、どうやってENEFACEに置き換えていくかを考えたい」と意気込みをみせた。現時点では、建材ガラスに比べて5~10倍以下の価格となるが、パナソニックHDでは、発電する価値を訴求しながら、建材ガラスの5倍以下の価格を目指すという。
一方で、窓になどに設置した場合には、開口性やデザイン性が求められるが、ここにも、パナソニックHDの独自技術が活用されている。
発電能力の維持においては、独自の材料組成により、高効率と高信頼性を両立するとともに、必要な強度の透明電極付(建材)ガラスを活用する一方、柔軟性やデザイン性を実現するための技術を採用。同社が蓄積してきたディスプレイ製造ノウハウを応用したインクジェット技術により、太陽電池層をインクジェットで塗布し、自社開発の製造装置によって、大面積化やサイズフリーに対応しているという。また、レーザースクライブ技術によって、微細なパターニングや透明化、デザインにも柔軟性を持たせたほか、封止技術の進化によって、水に弱い発電膜をしっかりと守り、合わせガラス化を実現したという。
とくに、カスタマイズやデザインの豊富さは、「ENEFACE」の大きな特徴となる。
建材ガラスのサイズ、厚み、透過性、グラフィックパターンのカスタマイズが可能で、デザインの自由度の高さを生かして、新たな景色を生み出すことができる。ここでは、インクジェットで塗布した太陽電池層を、レーザースクライブ技術を使って、デザインを施すことができるという。
幅広い用途で採用しやすいベーシックなパターンによる「調和するデザイン」、素材感やリズム感で空間を演出するパターンによる「空間をつくるデザイン」、ランドマーク性や物語性を生み出すパターンによる「象徴となるデザイン」を用意。文字を入れることも可能だ。デザインの違いによるコストの差はほぼないとしている。
吉川室長は、「ENEFACE」が提供できる価値として、創エネ設備としての「発電価値」、長く快適に使える「建材価値」、企業評価につながる「環境価値」、人や環境と調和する「意匠価値」、安心安全につながる「レジリエンス価値」をあげ、「様々な付加価値を提供できるのがガラス型ペロブスカイト太陽電池である。これにより、入居先として選ばれる理由の創出、環境認証の取得のほか、PR力の向上、賃料や売価の向上、入居率の向上といったように、不動産価値や企業価値の向上、電気代や非化石証書費用の削減といった効果を生むことができる。収益やブランド資産を増やすことができ、コストを減らすことができる商材だといえる」と述べた。
パナソニックHDのガラス型ペロブスカイト太陽電池は、先行量産品が1.8×1.0mのサイズとなり、合わせガラスのタイプを採用。ガラス板厚は、最も需要が多い3+3mmと6+6mmの2種類。デザイン加工を可能としている。また、2029年4月からの量産品は、合わせガラスに加えて、合わせ複層ガラスを用意。1.8×1.2mのサイズとなり、ガラス板厚は3+3mm、4+4mm、5+5mm、6+6mmの4種類にラインアップを広げる。同様にデザイン加工が可能だ。発電効率は、30cm×30cm角で約18%としており、2029年4月の量産時には、1.8×1.2mのサイズでこの水準を維持するという。
なお、先行量産品は、1.0m幅のものを、1.8mの長さで生産するという考え方だが、量産品は、1.8m幅のものを、1.2mの長さで生産するという。「同じように聞こえるかもしれないが、量産品では設備を増設することで、将来的には3mの長さまで実現できる。つまり、1.8m×3mのガラス型ペロブスカイト太陽電池が実現できる」と説明した。量産化の経験を持つ事業会社のメンバーが長浜拠点での生産体制の構築に参画しており、これが量産の1年前倒しにつながったという。
また、先行量産品と量産品のいずれもが、建築基準法に準拠し、IEC61730およびIEC62790に関して、社内試験をクリア。「建築用途での施工や保守を想定し、配線や接続部の設計にも配慮している」という。
政府では、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、再生可能エネルギーの主力電源化や、経済およびエネルギーの安全保障を担う次世代技術の切り札として、ペロブスカイト太陽電池の導入を促進する考えを示している。2035年度には、公共施設などに5GW程度のペロブスカイト太陽電池の導入が見込まれ、第7次エネルギー基本計画では、2040年度には、20GWのペロブスカイト太陽電池の導入が計画されている。
パナソニックHDでは、2025年9月に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業の採択により、ガラス型ペロブスカイト太陽電池の量産技術や施工技術の開発を進めてきた経緯がある。
吉川室長は、「発電する建材ガラスであるENEFACEは、ガラスが使われているあらゆる場所で発電が可能になる。空間とエネルギーをつくる太陽電池で、どこでも発電できる世界を実現する。ENEFACEによって、夢がある提案が可能になる」と自信をみせた。
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導入事例も増えてきた。神戸の「かもめりあ」での運用は、先日、こちらのリンク先の別記事でも紹介したものだ















