未だに何かと議論がつきないAIによる画像生成だが、その精度は目覚ましく進化しているようで、すでにAIと気づかずにAI生成画像を目にしているような気もする。

このままいくと「やっぱAIにこの絶妙なラインは描けねえよ」と言いながら、左手にはAI生成画像を映し出したスマホ、右手は股間、というマヌケになりそうで怖いのだが、現時点では見た感じでAI生成だとわかる画像も多い。

AI絵は普通に上手いし、どこが変なのかはっきり言えないが、見た瞬間「不自然」と感じることが多いのだ。

先日会った友人曰く「AIは手を描くのが下手」だそうだ。

「俺の方が下手だ」と瞬時に対抗しそうになったが、それを抑えて黙って話を聞いていると「顔は精巧に描かれているが、よく見ると手は死ぬほど適当に描かれており、それがアンバランスで不気味」とのことである。

やっぱり俺のことじゃねえかと思ったが、私は顔も精巧に描いていなかったのでやはり私はAIではないようだ。

これからも「私はロボットではありません」の認証に堂々と「はい」と答え、「バイクの画像を3つ選んでください」の問いに「バイクの定義は?」と、人間特有の屁理屈をこねたいと思う。

そもそも人間の造形がキモいのかもしれない

さて、実際「手」というのは非常に難しいのだ。

人間の体は、他の動物から見ると総じて気持ち悪いと思うが、その中でも手は桁違いにキモい。

指なるものが基本10本生えているだけでも信じられないのに、その長さが全部違い、さらに関節が2つも3つもあり、それが全部バラバラに動いたりするのだ。

8本脚の蜘蛛を気持ち悪いと感じる人間は多いが、蜘蛛から見れば指が手足あわせて20本も生えている人間の方が気持ち悪いに決まっている。

構造だけでもかなり変態的なのに、動きがさらにこの世のものとは思えない人間の手を描くというのは非常に難しく、プロでも手は苦手という人は多いし、だからこそ手を描くのが好きという狂人(くるんちゅ)もいる。

おそらくAIにとっても手は描くのが難しい部位であり、マスターするには少し時間がかかるのかもしれない。

  • マックの生成AI動画の騒動で、人間が株を上げた気分になる

    ラーメンを手づかみで食べちゃったりするのが逆に評価されたりもする生成AIさん

だが今後AIはもっと正確な絵を描けるよう進化していくだろう。

しかし、技術的に精巧なことと、絵として我々が「いいね」を押すかどうかは全く別だったりもする。

現在でも人間と見まごうばかりのリアルなCG絵を作ることは可能である。

だが、我々オタクが「キャラクターは本物の人間に近ければ近い方がいい」と思っているかというと、全然そんなことはない。

目が2つで足が2本など、人間の基本設定は踏襲していても、目が顔面の2分の1を占めていたり、足が5メートルはありそうだったりと、本物の人間ではありえないバランスで描かれているキャラを、本物の人間より「いいね」と感じたりするのだ。

むしろ、人間も自分たちの造形が他の動物に比べて格段にキモいと本能的に理解しているせいかのか、「人間に近いが人間ではないもの」を見ると不気味に感じることがあり、この現象のことを「不気味の谷」という。

西暦20xx年、人類はAIいらすとやに敗北した

先日、マクドナルドがAI画像生成によって描かれた女性たちがハンバーガー食べる絵を用いたCM動画を流したところ、「食欲がなくなった」という、飲食店としては致命的な批判が多数寄せられたという。

「彼女たちが頬張っているハンバーガーはどうみても男根のメタファー」など、いつもの性消費的批判ではなく、「何となく不気味」と感じる人が多かったようで、これは不気味の谷現象が起こったのではないか、と言われている。

しかし、特に違和感を感じないという人もおり、この批判はAI生成画像に対する嫌悪感込みで起こったのではないかという意見もある。

元々AIに嫌悪感を抱いている人なら、AI使用とわかった時点で拒否反応を示してしまうこともあるだろう。

しかし、法的な問題さえクリアできていえば、クリエイターに受注するよりAIに作らせた方が安上がりなので、今後もいらすとやさんのように、AI生成画使った広告類は増えると思われる。

だが、今のところAI画像を使った広告類で不自然さを感じることがあるのは確かだ。

指とかもあるのだが、そこまで目を皿のようにしなくても、表情が気になってしまう。おそらく、AIはシチュエーションに合わせて人間の表情を細かく描き分けるところまではできていないのだろう。

よって特にテーマのない一枚絵なら良いが、例えば「法律事務所の広告バナー」とかになると、「今からFXで債務整理をしようという奴がそのツラはないだろう、俺が弁護士なら断る」というような不自然さを感じることがある。

そう考えると、いらすとやさんの違和感のなさはすごい。

例え債務整理広告に満面の笑みの男女イラストが配置されていても、「こういう顔で来るギャン中夫婦依頼者いそう」という謎のハマりかたをしてくる。