「マイクロソフトのイルカ」を知っているだろうか。

若人は知らないだろうし、返事を待たずにしゃべろうとしているインターネット老人会員を前にますます興味を失っているだろう。

これが本物のおじいちゃんおばあちゃんであれば敬老精神で聞く気になるかもしれないが、相手は中学生みたいな格好をしている40代だ。

しかし、GTOも復活することだし「予行練習」としてこの手の話に慣れておくことも大事だろう。

マイクロソフトのイルカとは、1990年代後半のOffice 97~2000頃に登場したアシスタント機能のことである。

WordやExcelを開くとこのイルカが出現し「わからないことがあれば聞いてくれ」と言うのだが、今でもソフト内のヘルプで問題が解決することが稀なようにこいつに質問しても何かがわかることはなく、むしろ作業の邪魔になるため、このイルカに「お前を消す方法」を問うのが当時の大爆笑インターネットギャグだったのだ。

その後イルカは本当に消えてしまったのだが「Copilot Keyboard」のキャラクターとして令和に復活したとして、一部の中高年の間で話題となった。

マイクロソフト課金ユーザーが挑む「お前を出す方法」

  • あの頃はどうにかして消したかったのに、今は出してみたくなる矛盾……

    あの頃はどうにかして消したかったのに、今は出してみたくなる矛盾……

「Copilot Keyboard」とはマイクロソフトのAI「Copilot」搭載の日本語入力システム(IME)であり、これを使用することにより、新語やトレンド語の変換にもすぐに対応するなど、日本語の入力が捗るようになるらしい。

また例のイルカを画面に表示させAIと対話しながら文章作りをすることも可能だそうだ。

LINEが突如「Agent i」を出現させたように、マイクロソフトも以前から独自のAI「Copilot」を発表している。

そういえば私はマイクロソフトの課金ユーザーだ。

他のAIで調べものをしながら書くのではなく、同画面でCopilotに質問しながら書くことも可能であったし、何ならWordにイルカを出現させることもできたのではないか。

そう思い、まずは「Copilot Keyboard」をインストールすることなく、Wordに搭載されているCopilotに「イルカを出す方法」を聞いてみた。

四半世紀前「お前を消す方法」を執拗に聞いてきた奴が、時を経て今度は「お前を出す方法」を尋ねてくるのだから人間はつくづく勝手である。

乱獲により絶滅寸前になった動物を慌てて保護しているような滑稽さを感じる。

すると「Copilot」は「『イルカ』が何を指しているかで答えが変わります」と返答してきた。

他のAIならいざ知らず、お前だけは「イルカ」と言われたら秒であのイルカだと合点がいかなければダメだろう、しかもWordの中で聞いているのだから、どう考えてもあのイルカしかいない。

いきなりCopilotの性能が不安になってきたが、文中に「イルカが何を指してイルカ」とイルカ世代の中高年じゃなきゃ見逃しちゃうギャグを見つけて落ち着くことができた。

それにCopilotも全くピンときていないわけではなく「例えば昔のOfficeのイルカ型アシスタントを出したいとか…?」と、わかっていながら焦らすそぶりを見せてきている。

こちらも「さてどうかな?」と駆け引きを楽しむべきかと思ったが、率直に「Officeのイルカ型アシスタントのことだ」と聞くと「現在のWordで昔のイルカ型アシスタントを表示することはできません」と率直に言ってきた。

だが、ただ事実を述べるだけでなく「あれは古いOfficeの機能です」と、こちらがつい最近までOffice97を意固地に使い続けてきた老人や、25年ぐらい意識不明だった人間である可能性も考慮した、諭すような一言も付け加えられていた。

そして「イルカの絵文字」や「イルカの画像を生成」「イルカ風の案内文や文面を作る」など、代替案も提示してくれた。

しかし代案を提示するなら「Copilot Keyboardを使え」と言えば良いのに、それは言ってこない。

イルカがアップル社のものなら拷問してもその名は言わないだろうが、完全に同社のものだし使っているAIは同じなのだから、まずそれを提案すべきだろう。

今どきWordでイルカを出したい、なんて聞いてくるのは面倒な老人だけなので「Copilot Keyboardを使えばいい」などと答えたら「俺はWordで使いたいと言っているのに、バカなの?」と嫌なキレ方をしてくることを想定して言わないのかもしれないが、あまり連携は取れていないようである。

しかしWordにとってCopilot Keyboardのイルカの話は地雷というわけではなく「他にイルカアシスタントに会う方法はないのか?」と、誘い受け的質問をするとCopilot Keyboardを使うことを提案してきた。

そして、言われた通りにCopilot Keyboardをインストールしてイルカに再会したかというと、していない。

何せ我々にとってあのイルカは「邪魔だった」という印象が強いのだ、うっかり出現させてまた居座られたらどうしよう、と思ったら軽い気持ちで画面にイルカを召喚できないのである。