この世にコロナウィルスが現れ早や数年、一時期のような緊迫感はなくなってきたが、その分カジュアルに罹る者も増え、私の周囲でもコロナ経験者が増えて来た。
そんな中、私は未だにコロナノーエンカウント、外出しないことこそ最強であることを示し続けていた。
しかし、私が外に出なくても同居家族は出る。その結果夫が罹患し、持たず、作らず、持ち込ませずの非コロナ三原則がついに破られることとなった。
夫の職場はすでにパンデミック状態であり、同空間にいた者の大半がその日のうちにコロナ症状を訴えているそうだ。
強力な感染力である、そんなウィルス保有者と同居している私ももはや感染不可避であり、こうなると「外出しない」が逆に感染率を上げる自爆行為になってくる。
しかし、私が唱える非外出最強論が指す「外」が「家の外」だと思っている人間はまだ青い。
私の言う外は「部屋の外」のことである。
よって、コロナ保持の夫とずっと同じ家屋内にいたが「自分の部屋から出ない」という平常運転を貫いた結果、コロナに罹ることはなく、夫も誰もが誤差と惰性で1日ぐらいおかわりしそうなところを、医者が示した最低出社禁止期間のみを消化して職場復帰した。
また外に出ないことこそが最強と知らしめてしまった、敗北が知りたい。
だが、すでにインフルエンザと同レベルの扱いになりつつあるコロナだが、重篤になる場合もあるし、後遺症に苦しむ人もいる。
夫の症状も強めの風邪程度であったが、職場復帰後になって「嗅覚を失っている」という後遺症に気づいたそうだ。
私が部屋の外に出るタイプだったら「いつものハミング未使用鳥獣臭がしない」という理由で、夫も嗅覚喪失にすぐ気づいただろう。
完璧に見えた部屋不出最強論の意外な盲点だ。早急に「部屋から出てこないが臭いだけ貫通してくる」など、バージョンアップを検討しなければならない。
コロナの症状は一週間程度でも、後遺症はいつまで続くかわからない。夫も現在は徐々に嗅覚を取り戻しつつあるようだが、当初は不安だったようで「鼻が良いことだけが俺の取り柄だったのに」と、20年近くつきあって初めて知った特技の消失を嘆いていた。
慢性的な疲労や体の痛み、味覚異常などに比べれば、嗅覚はまだ大したことないように思えるが、嗅覚がないと食事の楽しみも半減であり、不便さもあるという。
今思えば、確かに夫は鼻がよく、私が弁当に「要審議」なおかずを入れると、すぐに「弁当が腐ってた」とLINEで報告してくることが昔はよくあった。
このような野生の殺し屋を家族に持つ場合はもちろん、冷蔵庫から発掘された賞味期限的にあやしい食べ物と対峙する時、最終的に信じるのは無機質な日付表示ではなく、己の嗅覚だ。
せっかくコロナから生還しても、嗅覚が戻らねば判断を誤りセルフ服毒自殺を図ってしまう恐れがある。
賞味期限に従えば済む話かもしれないが、期限が切れた瞬間ゲル状になるというわけではない。見た目的にまだイケそうなら期限が切れていてもトライする人は多いと思う。
だが消費者が期限切れに挑むのは自己責任だが、製造や販売側が期限切れ食品を何も起きないことにワンチャンかけて売るのは違法である。
前置きが長くなったが、本題のAIの話である
企業は期限切れ食品は廃棄しなければならず、もちろん廃棄は損失だ。
よって廃棄にするぐらいならと、期限間近の弁当や総菜を割引や半額で投げ売るスーパーも多く、夕刻になるとそれを狙ったハンターたちが集まり「賑わっているのに寂しい」という、情緒不安定な光景を作り出すことになる。
買う側からしたら半額弁当は救世主だが、売る側からすれば廃棄よりマシというだけで、割引販売は普通に損であり、できれば夕方前にちょうど売り切るのが理想だ。
しかし、数を絞りすぎて午前中で完売宣言を出す壁サーみたいになったら、その後来る客からの利益を逃すことになる。
結局多めに作って、余ったら割引で一掃という、ある意味非効率な方法が続けられていたが、なんとここにも「AI」の波がきているらしい。
あるスーパーが、AIで生鮮や総菜の需要を予測し、それに基づいて発注を行ったところ、実際にロスが減ったそうだ。
フードロスが問題の解消につながっているなら何よりだが、このままだと廃棄の運命にある弁当を自腹で買い取り胃に収める慈善活動を行ってきた、アフターシックスハンターにとって、割引総菜の数が激減するというのは、「令和の大飢饉」として教科書に載っていいレベルの事件である。
しかし、物価高の影響なのか、今どきは割引総菜争奪戦が激化し、半額になる前から商品をカゴにキープし、半額時間になってから、店員に半額シールを貼れと迫るアウトローが増えるなど、治安悪化が深刻化しているそうだ。
いくら総菜が安くても、3分に1回客がバックヤードに連れていかれているようなスーパーには行きたくない。AI導入により総菜売り場の治安回復効果も期待できる。
しかし、そのせいで半額総菜目当ての客が来なくなり、その客がついでに行う買い物による利益が激減するのではないかとも思う。
1円セールが撒き餌で、そのついでに買われる大して安くない商品で利益を出しているように、血を血で洗って半額総菜を手にしても、そのついでにいらない物を買ってしまったら無意味である。
半額総菜ハンターをやるなら「半額総菜だけ買って帰る」というストイックさも必要なのだ。