少し前に「某県ではマイナ保険証の使用に成功した例は一件もない」というニュースを見た。

ソースとなる記事が現在見つからないのと、さすがに「そんなことあるか」な話なので、釣り見出し記事の可能性は高いが「マイナ保険証使用成功例ゼロ」というあまりにも頼もしいワードに「某県やるな」と思ったし、我が県も負けていられないと気持ちが新たになった。

実際、マイナ保険証使用についてのトラブルは相次いでいるようだ。むしろ最近のマイナンバーカード関連ニュースは大体トラブルであり、文春された時だけ名前が上がってくる芸能人みたいになっている。

2024年には現行の健康保険証が廃止されるはずである。

しかし現在病院窓口などでマイナンバーカードを差し出すと「果たしてこのカードは使えるのか」と立木文彦の煽りが入り、立ち込める緊張とドラムロールのあと「残念!」の判定が下され、会場が落胆の声を上げる中、挑戦者は頭をポリポリしつつ「健康保険証」を財布から出すチャレンジ企画が各所で行われているのではないか。

マイナ保険証が使えない理由は「マイナンバーカードを医療保険と紐づけしていない」ケースが一番多いという。マイナンバーカードは発行しただけで保険証として使えるわけではなく、医療保険と紐づけして初めて保険証として使えるのだ。

現在はマイナンバーカード発行と同時に保険証との紐づけをする人が多いと思うが、割と初期段階でカードを発行した者は紐づけしていないことがある。

実は私もその一人であり、カードは持っているが保険証と紐づけしておらず、このまま2024年を迎えると窓口で残念判定をされ、とりあえず医療費10割負担という罰ゲームに突入してしまう可能性が高い。

さらに使えない理由としては「電子証明書の有効期限切れ」がある。マイナンバーカードの電子証明書の有効期限は5年であり、これが切れるとe-Taxなどの電子証明や保険証としては使えなくなり、マイナンバーカードは実質ただの顔写真付き身分証明証になる。

実は私にも先日「マイナンバーカードの電子証明書の有効期限が切れるから更新しろ」というお達しが来たところだ。

つまりこのまま行くと私のマイナンバーカードは、現行保険証が廃止されたころには医療保険と紐づけしていない上に電子証明が切れている「よくこれを出してきたな」と窓口を戦慄させる1枚になっているということだ。

ちなみに電子証明書の更新方法は「市区町村窓口に行く」なので、このまま期限を切れさせる気しかしない。

マイナンバーカードにあとから増える「メリット」と効果の薄さ

  • 窓口で「残念」判定されたらつらすぎる……

このように、マイナンバーカードは「早めに作った奴ほど余計面倒くさいことになっている」ので「面倒くさい」という理由でなかなか作らなかった者はある意味正しく、私も自分の面倒くささに従っておくべきだった。

「安全性の問題」など、確たる理由があってマイナンバーカードを作っていない人も多いと思うが「発行がとにかく面倒」という理由で作っていない者も多いだろうし、むしろ一番発行させるのが難しいのはこの層である。

その層をポイントなどの「特典」や「メリット」で釣ろうとする政策は間違っているとしか言いようがない。

何故ならそういうタイプは「早めに病院へ行った方がいい」という進言すら「面倒くさい」という理由で無視するからだ。つまり、生命を脅かすレベルの損を被ってでも、今この瞬間きらめく「面倒」という気持ちを優先したいのである。

「マイナンバーカードを作らなければお前は死ぬ」と言っても五分五分なのに、「作ればいいことありますよ」と言って動くわけがないのだ。

それにもかかわらず、またしても政府は「マイナンバーカードを作ればこんなことにも使える!」という提言をしているようだ。

その提言とは「マイナンバーカードをフェスで活用」である。

ちなみに、ネット上やソシャゲで行われる「フェス」は含まないようで、音楽フェスなどのリアルフェスを対象にした話らしく、この時点でターゲットが狭いとしか言いようがない。

「野外音楽フェスなどで、入場時の本人確認や酒類提供時の年齢確認のほか、チケットの不正転売の防止に役立てるねらい」である。

確かに、マイナンバーカードを利用することで長らく問題になっている転売を防ぎ、入場から年齢確認までカード1枚で済ませられるなら便利、と言えなくもない。

しかしフェスという最高にハイな上に酒も入る場所で、マイナンバーカードを出したり入れたりする行為は「なくすチャンスでしかない」という意見もある。少なくとも「フェスで便利」「転売撲滅」という理由でマイナンバーカードを作る気になるかというと怪しいところである。

特に現時点で「面倒」という理由でカードを作っていない人間を「得」や「便利」で動かすのは至難の業だ。

ならば「マイナンバーカードを作らないとあなたはこのような悲惨な死を迎えます」と死のバリエーションを増やせば良いかというと、それですら難しい。「いずれ死ぬ」では我々は動かない、「今すぐ死ぬ」と言われてやっと布団から出てくるレベルなのだ。

どれだけ、メリットを示しデメリットで脅しても「市区町村の役所にマイナンバーカードを作りに来てください」と言っている時点でダメなのだ。

本当に全国民に作らせる気があるなら、「マイナンバーカードの方が作られにお前の家に行く」と言うべきである。

ただし、居留守を使わない保証はない、何せ布団から出て玄関まで出るのが面倒なのだ。