マウスコンピューターが8月14日と15日の各日、小学生の親子を対象にパソコン生産を体験する、「親子パソコン組み立て教室 2026」を開催した。毎年、夏休みの恒例イベントとなっており、今回で14回目。会場となったのは今年も、マウスコンピューターのパソコンを実際に生産している「飯山工場」(長野県飯山市)。リアルな生産現場をそのまま使って「ものづくり」を体験できる貴重な機会となった。
ものづくりの楽しさとパソコンへの理解を深める
親子でパソコン部品の学習と組み立てを行い、ものづくりの楽しさやパソコンへの理解を深めることを目的としたイベント。工場見学・パソコン部品の学習・部品集め・パソコン組み立てなど充実した内容を体験できる。学習の講師や組み立てをサポートするスタッフも、普段は同工場でパソコン製造に携わっているメンバーが担当する。参加者は事前にマウスコンピューターの製品から希望の機種を選んでおき、当日は実際の製造ラインを使って組み立て作業を行う。
今回参加したのは、全国の小学6年生とその保護者が、2日間合計で計76組。当初は抽選で60組の予定だったが、応募が多数であったことから、なるべく多くの親子に参加して欲しいとの考えで急遽、工場内の体験スぺースを拡張して、当選数を増やしたそうだ。
なお、8月14日の開催回では、ちょうど飯山市で同日開催される「千曲川河畔納涼花火大会」と日程が重なっており、花火大会の観覧席付きという嬉しい余興もあった。日本で最も観客席に近いとされる場所から約2,000発の花火が打ち上げられることで知られるそうだ。ものづくり体験と一緒に飯山の夏も楽しめるとあってか、今回は長野県外からの参加家族が圧倒的に多く、遠方からだと山口県や和歌山県から参加したという親子も見かけた。
開校式が終わったら、いよいよ組み立て教室がスタート
ここから当日の模様をお届けしたい。組み立て教室を開くにあたり執り行われた開校式で、まずはマウスコンピューターの軣秀樹社長が登壇。全国から多くの親子が参加してくれたことに感謝を述べるとともに、ちょうど開催直前に豪雨被害に見舞われた千葉県からの参加親子もいたことから、お見舞いの言葉を述べた。
軣社長は、この催しは「子どもたちに、ものづくりを体験できる機会をつくりたい」という思いで続けているものだと紹介。そして参加者へ、「自分だけのPC、世界でひとつだけのPCを、親御さんと一緒に、楽しんでつくってほしい。そして家に帰ったら、今日つくったPCを使って多くのことを学んでほしい。今はまさにAIが重要であり、AIは是非、体験してみてほしい」と呼びかけ、子どもたちに、「大きくなったら、これからの日本のAI、日本のものづくりをけん引してくれたら嬉しい」と期待を寄せた。
さらに今年は、「飯山市を知ってもらえる体験も増やした。特に花火大会は、打ち上げ場所と見る場所が近い、とても良い花火大会なので、楽しんでほしい」などと、飯山市の魅力にも触れた。
続いて開校式に来賓として登壇したのが、本教室を共催する飯山市の江沢岸生市長。自身も飯山市で生まれ育ったという江沢市長は、「故郷(ふるさと)」の作詞で知られる同市出身の文学者・作詞家の高野辰之氏に触れ、同氏が作詞した「朧月夜」「春が来た」「春の小川」「もみじ」といった、「故郷」同様に日本人に馴染み深い数々の唱歌を紹介。これらの歌が、飯山の風景を歌ったものであることを説明し、その歌にも歌われた飯山の風景を実際に見て、楽しんでほしいと話していた。
パーツ探しからOS起動まで、楽しくも貴重な体験の連続
いよいよ親子パソコン組み立て教室がスタートして、最初は座学の時間だ。飯山工場のスタッフが、パソコンの内部パーツの役割や、組み立て時に気を付けること、さらには工具の使い方などを講義し、必要な知識を学んでいく。
座学が終われば実践あるのみ。内容は実際のパソコン製造に沿った流れとなっており、組み立て指示書をデータベースと連動させながら、まずは工場内の部材倉庫からパーツ類をピックアップしていく。指示書はイベント用に工夫されており、部材の在庫場所指定や組み立てマニュアルの呼び出しには、本物の製造用バーコードを用いて連動しているが、特別に宝の地図の様なデザインに紙面が改造されており、宝探し気分で工場探索ができるようになっていた。
材料がそろえば、飯山工場のセル生産設備をそのまま使ってPCを組み立てる。親子で試行錯誤、工場スタッフのサポートをあり、組み上がったPCは動作チェックとOS起動の試験ブースへと持ち込まれ、無事通過すれば、完成となる。本物とまったく同じ出荷梱包が終われば自宅へ配送となるが、即日使いたいのだろう、そのまま車へ積んで持ち帰る家族も多く見られた。
組み立て教室の最後には、課程修了を証明する卒業証書の授与式も行われていた。自分でつくった、自分だけのパソコンといっしょに記念撮影をする親子の表情は、一様に晴れやかなものだった。
参加した子どもたちに話を聞いてみると、「難しかった。でも、ちゃんと起動したのが本当にうれしかった」などと、大きな達成感を得られたようで、強い印象とともに思い出にできたことが伺えた。子どもが完成したPCに手を置き「ゲームで遊んでみたい」と話していると、「ゲームばっかりになるなよ」とたしなめる親御さんの顔もニコニコしたものであり、満更でもない様子。ところで、参加対象の6年生と一緒に、下の子が同行している家族も見られたが、往々にして「お兄ちゃんばかりうらやましい。私も欲しい」などという話になったりする。教室は来年以降の夏休みも継続開催が見込まれるので、また飯山に戻ってくるしかなくなると、親は覚悟しておくと良いと思う。
「ものづくり」とは? 未来を担う子どもたちと、全国のユーザーへ - 軣社長インタビュー
―― 改めて、「親子パソコン組み立て教室」の開催の主旨、込められた思いを教えてください。また、教室のプログラムをつくるにあたって、楽しいことは前提とは思いますが、教室を通して子どもたちに学んでほしいこと、子どもたちに期待していることとして意識したものはありますか?
軣社長: 未来を担う子どもたちに、「ものづくり」の楽しさを知ってほしいというのが、最も大きな主旨です。
PCに初めて電源を入れた時、うまく電源が入った時の喜びというのは、いつまでたっても記憶に残るものです。この記憶とともに、自分で組み立てたPCが特別な存在となり、PCを使いこなす動機になり、モノを大切にする価値観を育む良い機会にもなる。夏休みの思い出としてずっと記憶に残り、未来につながる経験となることを期待しています。
そして、この特別なPCを使って、AIを学んでほしい。今の日本はやはりエンジニアが不足していると見ています。AI人材は特に足りないでしょう。学校で配布されるような安価なタブレットや、スマホはあるにしても、それらはAIに触れるには良い入口ですが、AIを本格的に動かすエンジニアやプログラマーを増やすに足るかといえば、やっぱり子どものうちから高性能なPCを使ってほしい。
AIは無限の可能性を秘めていて、日本の技術力を維持、発展させるためも、子どもたちがPCを通じてAIに興味を持ち、中には10年後に大活躍するような人材に育ってくれたりしたら嬉しいと思います。
―― 社長はかねてより、対外的にも「ものづくり」というメッセージを強調し、社内にもその精神の浸透を推進していますね。今回の教室も「ものづくり」の楽しさを子どもたちに知ってほしいというものでした。ここで、社長の考える「ものづくり」とはどんなものなのか、詳しく教えてください。
軣社長: 私は、「ものづくり」というのは、単なる製造を超えた、「考え方」なのだと捉えています。「ものづくり」とは、日々の改善で良いものを生み続けるプロセスと思想そのもの。製造だけでなく、営業、アフターサービス、総務、人事など、会社の全ての部門に応用可能な概念であると捉えています。皆が自身の業務を「ものづくり」の視点で見直し、「誰かのためになっているか」「顧客を笑顔にできているか」を常に問い直す。それが「ものづくり」です。
―― 日々、アップデートして良いものを生み続けることが「ものづくり」の本質ということですね。顧客の声を聞き、開発するというマウスコンピューターの姿勢もここから来ているのですね。
軣社長: はい。特に今はコンシューマ市場が成熟しきっていて、マウスコンピューターのビジネスとしてもBtoB(法人向け)市場へのアプローチを強めているところなのですが、この市場で、顧客の意見を積極的に聞き、製品開発へ直接反映することが成果をあげつつあります。
例えば、コンシューマ市場ではWindowsタブレットってすっかり消えてしまいました。しかし、以前にWindowsタブレットを導入していたとある法人顧客から、「後継モデルがないと困る」という声を受けたことで、Windowsタブレットを復活させ、特定業務に最適化したPCを提案・開発するなど柔軟な対応を強化するようにし、ご評価いただいた。
メーカー主導で、最新の半導体、最新の技術を載せれば売れるという時代は終わったのだと思います。飽和する技術環境では顧客の真のニーズへの適合が不可欠です。要望を聞き、法人の具体的なニーズや課題を深く理解し、工場の知見を加えて製品化する。弊社の特徴であるBTO(Build to Order)の深化を、「ものづくり」の思想、顧客視点の改善追求で進めていきます。
―― 国内開発のメーカーで、飯山という国内工場があることが、顧客視点の柔軟な改善に強みとなる面がありそうです。
軣社長: 飯山工場はとても重要な存在です。飯山工場だからこそ、納期と価格、こういう性能、こういうPCが欲しいというニーズに応えやすくなる。
法人向けPCで「MousePro」のブランドを展開していますが、法人営業の目標として、開発がつくったものを営業が売るのではなく、顧客の声を営業が聞き、それを開発に反映するというかたちにすることを目指しています。法人PCの市場には既に大きなメーカーがたくさんありますが、「MousePro」は国産であることはもちろんですが、顧客の声に聞き柔軟に対応するPCであることを強みに差別化を図ります。
―― 全国の法人ユーザーは、対マウスコンピューターの営業さんには「無理強い推奨」ということでよろしいでしょうか(笑)
軣社長: はい(笑)。なので、「ものづくり」で良い製品をつくるためにも、ぜひ要望をぶつけてほしい。私たちに無理を言ってみてください。
























































