スイス出身の双子の映画作家、ラモン&シルヴァン・チュルヒャーが、人間たちの共同生活をめぐって生み出してきた「動物三部作」――『ストレンジ・リトル・キャット』(2013)、『ガール・アンド・スパイダー』(2021)、『煙突の中の雀』(2024)が、「ミニアチュールの詩学 チュルヒャー兄弟『動物三部作』」(提供:JAIHO 配給:グッチーズ・フリースクール)として、2026年10月30日よりシアター・イメージフォーラム、新宿武蔵野館ほかにて全国公開されることが決定した。これにあわせ、日本版メインビジュアルと予告編が公開となっている。
長編デビュー作『ストレンジ・リトル・キャット』は2013年ベルリン国際映画祭フォーラム部門で初上映され、その後トロント、カンヌをはじめ世界各地の映画祭で上映。兄弟が共同で脚本・監督を手がけた第2作『ガール・アンド・スパイダー』は、2021年ベルリン国際映画祭エンカウンターズ部門で監督賞とFIPRESCI賞を受賞。そして第3作『煙突の中の雀』によって、三作にわたる「動物三部作」は完結を迎えた。
猫が歩き、蜘蛛が巣を張り、雀が出口を探す。家族が集うベルリンのアパート。引っ越しの荷物が行き交う二つの部屋。姉妹とその家族が集う、森のほとりの古い家――。ラモン&シルヴァン・チュルヒャーの映画では、世界はいつも、見慣れた小さな場所から始まる。静止したカメラが見つめるその内部では、人々の視線や身体、言葉と沈黙、家具や家電、食器の音や機械の唸り、扉の向こうの気配までが互いに反応し合う。誰かが歩けば、別の誰かが立ち止まる。何気ないひと言が親密さを生むこともあれば、小さな傷となって残ることもある。人と物と動物が精密な運動を始めるとき、ありふれた日常は、家庭内のバレエとも呼ぶべき独特の映画空間へと変貌していく。三作品をつなぐ猫、蜘蛛、雀は、それぞれ異なる自由のかたちを映し出す。野性をあとにした猫。さまざまな場所に自らの住処を編む蜘蛛。閉ざされた煙突から空への出口を探す雀。その姿は、家族や友情、社会的な役割のなかにとどまりながら、より自由な生を求める人間たちと静かに響き合う。 このたびの全国公開決定にあわせて、日本版メインビジュアルと特集予告編が公開となった。メインビジュアルは、三作品のスチールと『煙突の中の雀』の開放的な風景を組み合わせ、静止と運動、室内と屋外が交差する「動物三部作」の世界を一枚に凝縮。整然とした文字組みのなかに二匹の蛾を配し、秩序のなかへ生き物の予測不能な気配が入り込むチュルヒャー作品の感触を表現している。中央には、白い罫線で幾重にも縁取られた「動物三部作」の大きなタイトル。右側には、本特集のキャッチコピー「小さな部屋に、世界はあふれる。」が縦に配され、整然と組み上げられたタイポグラフィそのものが、静止したフレームのなかに人物や物を精密に配置するチュルヒャー作品の構図を思わせる。
あわせて公開となった予告編では、夕食会を準備する一家、引っ越しの部屋、森のほとりの古い家を舞台に、人々の視線や身体、言葉、物音が次々と連鎖していく三作品の世界を凝縮。軽やかなユーモアから、やがて親密さと孤独、愛情と暴力、秩序と反乱がせめぎ合う濃密なドラマへと変貌していく「動物三部作」の軌跡を映し出す。最後には「ジャック・タチとロベール・ブレッソンの出会い」というチュルヒャー作品の作家性を端的に示すコメントも。
ストレンジ・リトル・キャット
カリン(アンヨルカ・シュトレッヒェル)は、両親と幼い妹クララ(ミア・カサロ)が暮らすベルリンのアパートを訪れる。その晩には親戚たちも集まり、皆で夕食をとる予定だ。洗濯機の修理を待ち、台所のテーブルを囲み、オレンジの皮を使って実験をする。肺について語り、わざと引きちぎられたボタンを縫い直す。猫と犬が部屋を歩き、人々は出入りを繰り返す。一見すると、何も特別なことは起こらない。しかし、小さな行為が次の行為を呼び、一つの言葉が別の言葉へと連なっていくうちに、ありふれた家族の一日は、奇妙で精密な連鎖反応へと変わっていく。
監督・脚本・編集・サウンドデザイン:ラモン・チュルヒャー
撮影・カラーグレーディング:アレクサンダー・ハスケル
美術:マティアス・ヴェルナー、ザビーネ・カッセバウム
衣装:ドロテ・バッハ
製作:シルヴァン・チュルヒャー、ヨハンナ・ベルゲル
出演:イェニー・シリー、アンヨルカ・シュトレッヒェル、ミア・カサロ、ルク・プファフ、マティアス・ディットマー、アルミン・マレフスキ
© Deutsche Film- und Fernsehakademie Berlin 2013
ガール・アンド・スパイダー
リザ(リリアーネ・アムアト)は、長年マーラ(ヘンリエッテ・コンフリウス)らと暮らしてきたシェアハウスを出て、初めて自分だけのアパートへ引っ越そうとしている。新しい生活を楽しみにするリザとは対照的に、残されるマーラの心は激しく揺れていた。段ボール箱が運ばれ、壁が塗られ、家具が組み立てられる。リザの母アストリッド(ウルシナ・ラルディ)、引っ越し作業員のユレク(アンドレ・M・ヘニッケ)とヤン(フルリン・ギガー)、新しい隣人カレン(ザビーネ・ティモテオ)らが二つの部屋を行き交うなか、人々の切望、嫉妬、密かな欲望が浮かび上がっていく。リザの送別パーティーを経て、引っ越しはいよいよ佳境へ。変化のただ中で、つながりを求めるマーラの欲望は強まり、部屋そのものが、切望に震える一つの身体へと変わっていく。
監督・脚本:ラモン&シルヴァン・チュルヒャー
編集:ラモン・チュルヒャー、カタリーナ・ベンド
撮影:アレクサンダー・ハスケル
美術:ザビーナ・ヴィンクラー、モーティマー・チェン
衣装:アンヌ=ソフィー・レミ
音楽:フィリップ・モル
製作:アリーヌ・シュミット、アドリアン・ブレーザー
出演:ヘンリエッテ・コンフリウス、リリアーネ・アムアト、ウルシナ・ラルディ、フルリン・ギガー、アンドレ・M・ヘニッケ、ザビーネ・ティモテオ
© 2021 Beauvoir Films / Zürcher Film / SRF
煙突の中の雀
カレン(マレン・エッゲルト)は夫(アンドレアス・デーラー)と子供たちとともに、森のほとりに建つ、彼女が幼少期を過ごした家で暮らしている。夫の誕生日を祝うため、カレンの妹ユーレ(ブリッタ・ハンメルシュタイン)が一家でやってくる。自由奔放なユーレは、亡き母を思い起こさせるこの家を幼いころから嫌っていた。カレンの娘ヨハンナ(レア・ゾーイ・フォス)や息子レオン(イルヤ・ブルトマン)も母に立ち向かい、家族のなかにカレンを引きずり下ろそうとする力が生まれていく。さらに、森のはずれに暮らす謎めいた女性リフ(ルイーゼ・ハイヤー)が現れる。人々の気配で家が満たされ、煙突に迷い込んだ雀が出口を探すなか、カレンの緊張は頂点へ向かう。
監督・脚本・編集:ラモン・チュルヒャー
製作:シルヴァン・チュルヒャー
撮影:アレクサンダー・ハスケル
美術:ペーター・シェルツ
衣装:リンダ・ハーパー
音楽:バルツ・バッハマン
サウンドデザイン:ペーター・フォン・ジーベンタール、ラモン・チュルヒャー
出演:マレン・エッゲルト、ブリッタ・ハンメルシュタイン、ルイーゼ・ハイヤー、アンドレアス・デーラー、ミリアン・ツェルツァヴィ、レア・ゾーイ・フォス
© 2024 Zürcher Film / SRF / SRG SSR
