2026年もまた、ソニーの“着るエアコン”「REON POCKET」シリーズによる上質な冷感体験が頼もしく感じられる夏がやってきました。

REON POCKETを開発するソニーサーモテクノロジーから、今年は2つの新製品が同時期に出て、ラインナップの厚みが増しています。なかでも、5月12日に発売されたナンバリングシリーズの最新モデル「REON POCKET 6」は、前世代のREON POCKET 5から冷却性能が向上。「最大-2℃の冷たさ」を実現しただけでなく、デザインや機能面でも進化を果たしました。

新しいREON POCKET 6の快適さの秘密はどこにあるのでしょうか? 今回はプロダクトデザインの視点から、本機の魅力を深く掘り下げます。

ソニーグループ クリエイティブセンターのデザインプロデューサーである平野心平氏と、ソニーデザインコンサルティングのシニアデザインコンサルタント、八木橋達也氏を訪ね、最新モデル「6」のデザインコンセプトや完成までに乗り越えた課題を聞きました。

  • REON POCKET 6を担当した、ソニーデザインコンサルティング株式会社 シニアデザインコンサルタントの八木橋達也氏(左)、ソニーグループ株式会社 クリエイティブセンター インキュベーションデザイン部門 スタジオ3 チーム4 デザインプロデューサーの平野心平氏(右)にインタビューしました

    REON POCKET 6を担当した、ソニーデザインコンサルティング株式会社 シニアデザインコンサルタントの八木橋達也氏(左)、ソニーグループ株式会社 クリエイティブセンター インキュベーションデザイン部門 スタジオ3 チーム4 デザインプロデューサーの平野心平氏(右)にインタビューしました

最新REON POCKETを手がけたベテランデザイナーの横顔

八木橋氏は、歴代のREON POCKETシリーズにおいて、当時のデザイナーと一緒にプロダクトデザインの方向性を決めてきたキーパーソンです。最新モデルの「6」については、平野氏が主担当としてプロダクトデザインを手掛けています。

平野氏はこれまで、ソニーのクリエイティブセンターにおいて「WH-1000XM5」や「LinkBuds S」といったポータブルオーディオ、INZONEシリーズのゲーミングヘッドセット、そしてウォークマンやXperiaといったソニーを代表するプロダクトのデザインにも長く携わってきました。

平野氏が手がけたプロダクトの中には、ヘッドホンやイヤホンを含む、ソニーの「ウェアラブルデバイス」も数多く含まれます。ユーザーの体に直接触れ、長時間にわたって装着されるデバイスが不快感を与えないよう、平野氏はこれまでにも多くの知見を積み重ねてきました。

2024年に発売されたナンバリングシリーズのREON POCKET 5から見ると、最新の「6」はデザイン的にも大きく様変わりしています。2025年に登場したフラグシップの「REON POCKET PRO」のフィードバックも活かしながら、デザイナーの目線から「6」のデザインをどのように磨いてきたのでしょうか。

  • 2025年にソニーサーモテクノロジーが発売したREON POCKET PROと同じく、「DUALサーモモジュール」構造を採用して冷却効果を高めたREON POCKET 6

    2025年にソニーサーモテクノロジーが発売したREON POCKET PROと同じく、「DUALサーモモジュール」構造を採用して冷却効果を高めたREON POCKET 6

REON POCKET 6は上位モデルのPROと同様に、冷却構造に2基の独立したペルチェ素子を組み込む「DUALサーモモジュール」を採用しています。「PROで確立された冷却性能向上のための構造を活かしつつ、『6』はキーコンポーネントであるペルチェ素子やバッテリーパックのサイズが少しPROよりも小さいことから、前提として本体をPROよりも小さくできる余地があった」と平野氏は振り返ります。

しかし、一方で「6」の基本設計を最初に見た時に、平野氏は「とにかく本体を小さくして最軽量を目指す」ことよりも、「ユーザーが身に着けて心地よさを実感できる」ことを優先すべきと考えたそうです。

なぜならば、その「心地よさ」こそがREON POCKETシリーズの本質であり、デザイナーが最大限まで引き出すべき体験価値だからです。

ソニーデザインのフィロソフィーを具現化する

ソニーのデザインフィロソフィーには、プロダクトや体験の「原型=スタンダード」を創るという発想の下に、「3つの柱」を確立しています。

  • 「先駆」(Visionary):「人のやらないことをやる」好奇心と創造力で先駆をデザインする
  • 「本質」(Integrity):課題に誠実に向き合い、精錬を重ね本質をデザインする
  • 「共感」(Empathy):社会の文脈を深く理解し、感性に訴えかける共感をデザインする

ソニーのREON POCKETシリーズには、このフィロソフィーがどのように息づいているのでしょうか? 八木橋氏は次のように総括します。

「まず『先駆』という意味では、REON POCKETというプロダクト自体が、ウェアラブルサーモデバイス、あるいは現在は広く親しまれている“着るエアコン”という新しい原型を切り拓いてきました。新しいREON POCKET 6では、平野をはじめ、デザインチームのスタッフと一緒に本機の『本質』と『共感』を探求してきました」

  • ソニーデザインの3つの基本的な考え方を語る八木橋氏

    ソニーデザインの3つの基本的な考え方を語る八木橋氏

八木橋氏が、さらに説明を続けます。

「当社のヘッドホンやイヤホンなど、ウェアラブルなプロダクトの進化を通じて見極めてきた『本当に使いやすく、肌に優しいこと』や『清潔さが感じられること』に代表される『本質』をデザインに反映しています」

「共感」という視点からも、REON POCKETシリーズの「PRO」よりもさらに広いユーザー層をターゲットにする「6」を磨きあげてきたといいます。

「気候変動により、年々厳しさを増している夏の暑さへの対策や、ホットフラッシュといった多様な悩みを持つ方々も、REON POCKET 6を気軽に手に取りやすいように、どんなファッションにもなじむデザインを追求しました」

REON POCKETシリーズの「本質」をさらに極めて、手に取った多くの方々が価値ある体験を「共感」できるように、最新モデルの「6」ではソニーのデザインフィロソフィーが細部にまで落とし込まれています。さらに詳しく平野氏に聞きました。

冷感と装着感を最大化する新しい3次元形状

REON POCKETは「夏は涼しく、冬は暖かく」使えるように、冷感と温感の両方の動作モードを備えています。それぞれに冷感・温感の「強度」をマニュアルで調整するか、またはREON POCKETに内蔵する各種センサーの情報をもとに、設定した冷感・温感の好みに合わせて自動調整してくれる「SMARTモード」があります。

それぞれの効果を最大化するためには、本体が肌に直接触れる箇所の設計が要になります。REON POCKET 6では、肌に触れる冷温部のステンレスプレートの形状が大きく変わりました。

「5」など過去のナンバリングモデルや「PRO」では、ステンレスプレートの形状はフラットで、本体の側面もストンと、背面に対して垂直に立てたデザインでした。

「6」では、ステンレスプレートが側面へ緩やかにカーブしながら回り込むような、3次元的な形状に変更されています。平野氏によると、この形状には極めて実用的な意味もあるのだといいます。

  • 冷感・温感を伝える本体背面のステンレスプレート。側面を湾曲させて、冷温感効果と装着感の両方を高めています

    冷感・温感を伝える本体背面のステンレスプレート。側面を湾曲させて、冷温感効果と装着感の両方を高めています

  • REON POCKET 5のステンレスプレートはフラットな形状でした。四辺のエッジが立つ感覚を、最新モデルの「6」で軽減しています

    REON POCKET 5のステンレスプレートはフラットな形状でした。四辺のエッジが立つ感覚を、最新モデルの「6」で軽減しています

「従来の2次元的な構造にすると、ステンレスプレートの端(エッジ)を隠すため、周囲に細い溝をつくる必要がありました。『6』では、プレートを本体の側面にまで回り込ませることで、溝をユーザーの身体に触れる面からサイド側へ逃がしています。これにより、身体に触れる面にエッジや溝がなくなり、より柔らかなフィット感が得られます」

筆者も、ふだんから「6」を使いながら、このステンレスプレートが緩やかにカーブするデザインになったことでホールド感が上がり、プレートがいつでも首もとにピタリと触れて、冷感をキープしてくれる手応えを確かめています。

心地よさが冷却効果も高める

安定した装着状態をキープするために、REON POCKET本体の形状だけでなく、専用のネックバンドと、服装に合わせて長さと角度が調節可能なエアフローパーツによる「アダプティブホールドデザイン」を上位モデルの「PRO」から継承しました。

「6」は、首回りのサイズが約28cmから46cmまで広く対応するようにデザインされています。バンドにメカニカルフレキシブルチューブを採用したことで、「5」のネックバンドよりも自在に形を調整できるので、窮屈さを感じません。

背面のステンレスプレートは、首もとから背中に触れる箇所を「逆台形」のフォルムとしているので、背中のラインに沿って自然にフィットします。

  • ネックバンドの先端には、柔軟に形状が変化するシリコンキャップを採用。身体に触れる箇所のストレスを軽減しています

    ネックバンドの先端には、柔軟に形状が変化するシリコンキャップを採用。身体に触れる箇所のストレスを軽減しています

  • REON POCKET 6の背面ステンレスプレートは、多くのユーザーの体型にフィットするように幅をスリムにしています

    REON POCKET 6の背面ステンレスプレートは、多くのユーザーの体型にフィットするように幅をスリムにしています

さらに、ネックバンドに取り付けるエアフローパーツの構造も大きく見直しています。2026年のもうひとつの新商品である「REON POCKET PRO Plus」にも採用する、長さと角度の調節が可能な「アジャスタブル」なロングサイズのエアフローパーツを同梱しました。平野氏は、設計のディティールを次のように語ります。

「エアロパーツの機構は『PRO』と『6』とで変えています。伸び縮みする部分を内側にではなく、外側に設けたことで、エアロパーツを縮めた状態にした時に『線(隙間)』が1本少なくなります。また、ボタンを押さなくても本体から着脱できる機構にしました」

使用頻度の低いボタンを省略したことで、本体のデザインがよりシームレスに見えるだけでなく、着脱時などに意図せずボタンが押され、エアロパーツがうっかり本体から外れてしまうリスクも防げます。

  • 本体の先端に着脱するエアロパーツ。着脱機構を内側に設けることで、本体をシームレスな外観に仕上げています

    本体の先端に着脱するエアロパーツ。着脱機構を内側に設けることで、本体をシームレスな外観に仕上げています

本体を清潔に保つためのこだわり

REON POCKET 6で本体の溝や段差、細かなパーツの隙間を徹底的に減らした背景には、装着感の向上や誤操作の防止だけでなく、ユーザーのニーズに寄り添ったもうひとつの重要な理由がありました。それは「衛生面への配慮」です。

  • 身体に装着するウェアラブルデバイスでありながら、清潔に使えるようにデザインの細部までこだわり抜いたという平野氏

    身体に装着するウェアラブルデバイスでありながら、清潔に使えるようにデザインの細部までこだわり抜いたという平野氏

「コロナ禍の前後で、直接肌に触れるウェアラブルデバイスに対する、人々の衛生面への意識が大きく変わりました。デバイスをこまめに拭いて清潔に保ちたいという要望が、とても強くなっています。REON POCKETは、特に暑い夏場は、汗をかいた肌と直に接触させて冷感を得るデバイスです。身体に触れる面に溝があると、そこに汗やホコリがたまってしまいます。『6』ではこれらを極力排除して、サッとひと拭きで綺麗にできる隙間のないデザインを意識しています」

八木橋氏も、REON POCKETが身体に装着して使うデバイスである以上、プロジェクト全体の方針としても清潔感を保ちやすいデザインを重視したと振り返ります。装着時に汗が入り込まないようUSB充電端子にカバーを付けて、見えない部分の安全設計についても綿密に議論を繰り返してきたそうです。

本体を清潔なまま保てることへのこだわりは、本体背面側のデザインにも貫かれています。

過去のREON POCKETシリーズでは、本体背面の上に覆い被さる衣服との接触面を減らして放熱効果を高めるため、背面パネルに細かなスリットを配置していました。ところが、細かな溝はホコリがたまりやすく、手入れも面倒です。

そこで最新モデルの「6」では、本体の背面に浅くスプーンでカットしたような凹みを付けています。衣服への張り付きを防ぎながら、十分な冷却と放熱の効果を実現しています。

  • 「6」は、本体の背面に浅い凹みを設けて、衣服との接触による冷却効果の低減を防いでいます

    「6」は、本体の背面に浅い凹みを設けて、衣服との接触による冷却効果の低減を防いでいます

  • 「5」は、背面に縦縞模様の凹凸を設けて放熱効果を高めていました

    「5」は、背面に縦縞模様の凹凸を設けて放熱効果を高めていました

日常に溶け込ませるカラーと質感

ビジネスシーンや日常のカジュアルなファッションに合わせた時に「目立たず、さりげなく着こなせる」ことも、歴代REON POCKETシリーズは目指してきました。平野氏が、最新モデルの色彩へのこだわりを明かします。

  • 右側はREON POCKET 6の最初期のデザインプロトタイプ。当時はまだ、REON POCKET PROをそのまま小型化するようなコンセプトでした。左側は完成した商品版

    右側はREON POCKET 6の最初期のデザインプロトタイプ。当時はまだ、REON POCKET PROをそのまま小型化するようなコンセプトでした。左側は完成した商品版

「これまでのシリーズは、涼しさを表現するためにクール系のホワイトを採用してきました。『6』では、さまざまなユーザーのファッション、ライフスタイルに寄り添う身近なプロダクトとなるよう、肌なじみがよく、衣服にも合わせやすいカラーリングを目指しました」

新旧モデルを並べてみるとよく分かりますが、新しい「6」は少し温かみのある暖色系のライトグレーを採用しています。男女を問わず、衣服とのコンビネーションでも悪目立ちしない絶妙なニュアンスカラーです。

  • 衣服の下に装着しても目立たない形状・カラーに仕上げています

    衣服の下に装着しても目立たない形状・カラーに仕上げています

本体表面には「良触感シボ」と呼ばれる、特殊な加工が施されています。一般的なシボ加工は傷や汚れには強いものの、ザラザラとした硬い感触になりがちです。かと言って、マットで優しい触り心地を追求すると、今度は傷がつきやすくなるというジレンマがありました。平野氏は、最新モデルに採用した良触感シボ加工のメリットを次のように説いています。

「とても柔らかく優しい触り心地でありながら、傷がつきにくく、汚れも入り込みにくいという特性を持っています。ソニーのプロダクトとしては、良質感シボをそのままストレートに採用した初めての例になります」

REON POCKET 6のデザインは、形状や装着感、清潔に保ちやすい質感、衣服になじむカラーリングまで、日常に寄り添う細やかな気配りの集大成といえます。この夏は、最新のREON POCKET 6を身に着けて、ソニーらしい洗練されたデザインの心地よさを体感してみてはいかがでしょうか。