今後も拡大が続くイメージセンサーの適用分野
さらに、インダストリー領域では、省人化や自動化のニーズが加速しており、今後も需要が拡大すると予測。セキュリティ領域では多画素化の進展や、AIとの組み合わせによる高付加価値市場が拡大すると見ている。
FA用途を想定したグローバルシャッターやToFなどに加えて、大型グローバルシャッター搭載センサー、イベントベースビジョンセンサー、SWIR(短波長赤外)センサー、UVセンサーなどを商品化。対応可能なユースケースを広げ、事業拡大につなげるという。
清水社長兼CEOは、「今後は、センシングテクノロジーが社会の重要な基盤になる『センシング・ソサエティ』の時代がくる」と指摘。「多くの情報量を取得できるイメージセンサーのポテンシャルは大きい。モバイル、車載、インダストリーのほか、メタバースなどのVR、ARの領域に至るまで、あらゆるシーンで利用されることを期待している」とした。
なお、コロナ禍で縮小したAV領域は需要が戻らず、今後も同程度の水準で推移すると予測した。
新たな商機が期待されるソリューション事業
一方、新たな取り組みとして説明したのが、ソリューション事業である。
2019年5月に、ソニーグループは、米マイクロソフトと戦略的パートナーシップを発表。そのひとつとして、イメージセンサーを活用したソリューション領域での提携を行っている。2020年5月には、ソニーグループのインテリジェントビジョンセンサー「IMX500」と、Microsoft Azureを活用したスマートカメラソリューションの提供に向けた協業を開始。スマートシティやスマートビルディングにおける実証実験を行ったほか、2021年10月には、エッジAIセンシングプラットフォーム「AITRIOS」のサービスを開始している。
「AITRIOSは、ソリューションの効率的な開発や、短期間での導入を支援するものであり、将来的にはIMX500だけでなく、多種多様なセンサーにも対象を広げていく。多くプレイヤーに価値を認めてもらえるように活動をしていく。AITRIOSでは、センサー事業の拡大だけでなく、リカーリングビジネスの拡大にも挑戦していく」と述べた。
センシングの新たな活用領域としたのが、VRおよびARである。
ゲームやメタバースなどのの利用が想定されるヘッドマウントディスプレイでは、バーチャル空間を表示する有機ELマイクロディスプレイや、ハンドトラッキングを可能にするToFイメージセンサーなどを活用。ARグラスでは、現実空間を重ねて表示するために無機マイクロLEDの採用や、人物や空間を認識するイメージセンサーの搭載、低消費電力で常時稼働が可能なオールウェイズオン機能の活用が求められるとし、さらに、ヘッドマウントディスプレイとARグラスに共通に用いられる技術として、虹彩認証、視線検出、SLAM(Simultaneous Localization And Mapping)をあげた。「VRおよびARは、市場成長が期待できる領域であり、常に動向を見ながら先手を打ち、新たなビジネスの獲得につなげたい」と語った。
第4次中期経営計画として約9000億円の設備投資を実施へ
イメージセンサーの設備投資は、引き続き拡大していく姿勢を改めて強調した。
「設備投資は少しずつ減少していくと見ていたが、事業成長にあわせて中長期的に継続投資する必要があると考えている」とし、2021年度からの第4次中期経営計画では、約2000億円増額し、約9000億円の設備投資を計画している。
長崎テクノロジーセンターFab5では、2021年の稼働開始以降も拡張工事を進めており、2022年7月には拡張部分に稼働する予定であるほか、2022年5月からはさらなる拡張に向けて着工を開始している。
また、大部分を外部から確保しているロジック半導体の安定調達に向けて、JASMに出資。この取り組みを通じて、TSMCとの技術連携強化や、日本国内のサプライチェーン強化にも貢献できるとしている。
なお、ソニーセミコンダクタソリューションズでは、「Sense the Wonder」をコーポレートスローガンに掲げている。
清水社長兼CEOは、「人間が何かに気づいたり、感じとったりする行為などを指すSenseと、ソニーのカルチャーであり、研究開発の原点である好奇心を表すWonderを組みあわせている。もっと驚きと感動に満ちた世界にするために、我々から社会に呼び掛ける言葉である」とし、「イメージングセンシングテクノロジーは、かつてないほど社会に対して、果たすべき責任が大きくなっている。ソニー製品へのキーデバイスの提供から始まった半導体事業は、スマホの普及によって、イメージング技術の社会的インパクトが増大し、今後はセンシング技術により、さらに多くのパートナーと協働する時代が来ている。このスローガンに込めた思いを、理解、共感してもらえる人々との出会いを生み出すことが、新たな価値創造につながる」と述べた。