Intel(Photo20)

  • Photo27: 成長後の3匹(4歳の頃:里親さんのところでの撮影)。

Intelのプロセスに関しては昨年のこちらの記事で説明した以上の話は特になく、また同社のパッケージ技術であるEMIB/Foverosについてもこちらで説明した話以上の事が今のところ出て来ていないので、あらたまって説明する事もあまりないのだが、「以上終わり」というのもアレなので、ちょっとご紹介しておきたい。

まず現状だが、10nm(10nm SuperFin)に加えてIntel 7、旧10nm Enhanced SuperFinを利用したAlder Lakeが無事に出荷開始された。無駄に長い評価記事はともかくとして、その後で掲載させていただいた、同じく無駄に長いDeep Dive最後の方で、動作周波数と消費電力の関係を示したグラフを掲載させていただいた。このグラフを見る限り、14nm++(14nm+++という話もあるが、まぁ公式には14nm++である)と比較して、確かに消費電力そのものはきちんと下がっている。ただし動作周波数の上限は14nm++と大して変わらない。結果Intel 7のIntel 14nm++に対するメリットは、トランジスタ密度と消費電力削減だけであって、動作周波数向上は果たせなかったということになる。もっとも、トランジスタ密度が上げられるという事はそれだけ複雑なダイを突っ込めるという事でもあり、事実Alder Lakeではピーク6命令解釈・実行のGolden Coveコアを導入してIPCを引き上げる事で、性能向上に成功している。その意味ではIntel 7の目的は果たせたのだろうが、逆に言うとIntel 10nm(10nm SuperFin)はIntel 7ほどに動作周波数が上がらなかったという事であり、なるほどDesktop向けに導入できなかったのも理解できる。

その次はIntel 4である。これは同社初のEUV露光を利用したプロセスであり、2023年前半に量産開始とされている。ただ2023年前半に量産開始、ということは製品が出てくるのは早くて2023年第2四半期末、実際には2023年第3四半期中か第4四半期初めというあたりではないかと思われる。ただしこれはIntelのスケジュール通りに進めば、という但し書き付きの話。2021年12月のIEDMでIntelは"2025年以降もMooreの法則を維持するためのブレークスルー"と題した発表を行っているが、肝心のIntel 4に関しての発表が皆無、というあたりは非常に微妙なものを感じざるを得ない。Meteor Lakeは2022年第1四半期にTape inするという話なので、間もなく物理設計が始まる予定だが、本当に予定通り出てくるかどうかは神のみぞ知る、という状況である。時期的にはまさにこの原稿が公開されている今、Intel 4を使ってMeteor Lakeを作るか、それともTSMCのN3を使って作るかの決断が下されるわけで、この後IntelがMeteor Lakeについての説明が変わらないか否か、である程度Intel 4の動向が見えてきそうである。

Intel 3は、順調にIntel 4が立ち上がれば、半年かそこら遅れで利用可能になると見られている。これは元々7nm++として位置づけられていたもので、その意味ではIntel 4+とでもいうべきものだから、Intel 4さえ順調ならこちらはそれほど提供に支障はないだろう。逆にIntel 4がコケると、こちらも順延ないしスキップされる可能性もある。もっともその先にはもっと難易度の高いGAAが待ち構えているので、結果的にはIntel 4が遅れてもIntel 3も提供されることになるかもしれない。

Intel 20Aは2024年前半に提供開始、となっているが実験室レベルはともかくとしてこれをIntelが問題なく量産できる、と信じるにはあまりに情報が無さすぎる。SamsungがSpeed YieldとかYieldを示した(Photo16,17)のとは好対照と言わざるを得ない。

Intel 18Aは、Samsungの2GAE同様に2025年の提供となっている。まぁこれはそもそもIntel 20Aが無事に立ち上がる前提の話だし、その大前提としてEUV露光をちゃんと利用できるようになっているのか? という問題がある(今回説明では省いたが、SamsungはSFF 2021でEUVに関する細かい動向もきちんと説明しており、既に2021年の時点で全体の1/4がEUV露光を利用していると説明している)。とりあえず2022年はまだIntel 7のままなので、あとはIntel 4がどうなるか次第であろう。

もしIntel 4がまた遅れるようだと、IntelのFoundry Businessは立ち直れないくらいのダメージを受けかねない。単に製品戦略だけでなく、Gensinger CEOの下でIntel 4や3、その先のIntel 20A/18Aまで順調に進むことを前提に、猛烈な規模でFabを増設して生産能力を高めるべく莫大な投資を行っているからで、これの回収が出来なくなる恐れすらあるためだ。

話を戻すと、そんなわけで2022年中に出てくる、Intelのプロセスを利用する製品は、Intel 7ベースのものだけである。次のCPU編で詳しく触れるが、Alder LakeとMeteor Lakeの間にRaptor Lakeという製品が入るのは多分間違いないが、このRaptor LakeはTSMC N3になるという話である。これに先立ち、一部の製品がTSMC N5に切り替わるとされている。噂ではCore i3グレード以下となっていたが、Pentium/Celeronのみという話もあり、どちらが正解か現時点ではちょっと判断できない。これはMobile向けも同じである。

Server向けは、今年Sapphire Rapidsが導入されるが、これはIntel 7ベースとなる模様。ただGPUに関しては先に書いたようにTSMC N6ベースとなる。なかなかハイブリッドな状況になるようだ。