シャープが発表したハイエンドスマートフォン「AQUOS R6」。その最大の特徴がカメラです。ドイツの名門カメラメーカーであるライカと協業し、スマートフォン最大級の1インチという大型センサーを搭載しました。大注目のAQUOS R6(SH-51B)を、NTTドコモの新スマートフォン体験会で触ってみました。

  • AQUOS R6 SH-51B。カラーはブラック、ホワイトの2色で、発売は6月中旬ごろの予定

    AQUOS R6 SH-51B。カラーはブラック、ホワイトの2色で、発売は6月中旬ごろ、価格は5月23日時点で未定です

1インチ&ライカレンズとてんこ盛りのカメラ

1インチというサイズのセンサーは、デジタルカメラでも「高級コンパクトデジタルカメラ」と呼ばれる製品が採用することの多いサイズです。スマートフォンとしては破格の大型サイズで、前モデル「AQUOS R5G」の1/2.55インチと比べて約5倍の大きさとなります。

  • 手に持つと大きいAQUOS R6

  • 背面の上4分の1ほどを占める大きなカメラエリアはそれなりのインパクトがあります。レンズ自体のサイズも大きめ

センサーサイズが大きくなると何がよいか、というと、画質が向上します(より多くの光を取り込み、明るい画像/映像が映せるため)。その代わり、薄型のスマートフォンに内蔵するには難しい部分もあるので、これまでなかなか搭載メーカーが出てきませんでした。

過去にはパナソニックが「LUMIX DMC-CM1」という1インチセンサー搭載スマートフォンを発売したこともありますが、こちらはスマートフォンではなく「コミニュケーションカメラ」という位置づけ。どちらかというとカメラが主軸で、「通信機能付きカメラ」という製品でした。

  • カメラ部が大きめといっても、例えばGalaxy S21 Ultra 5Gと比べると、そこまで大きいわけではありません。S21 Ultraはカメラが4つ、AQUOS R6はカメラが1つという違いはあるにしろ、どちらもうまく収めているといっていいでしょう

  • こちらはLUMIX DMC-CM1(右)との比較です。CM1にはサードパーティーのフードを装着しており、レンズがフードに近い高さまでせり出します

LUMIX DMC-CM1では、カメラ起動時にレンズがせり出す沈胴式を採用したため、スマートフォンサイズの厚みに巨大センサーを収められていました。今回のAQUOS R6では防水性能や堅牢性などを踏まえて、スマートフォンを主軸とした形にこだわったため、1インチセンサーの搭載はより制約が大きかったと思われます。

室内環境でポインコぬいぐるみを撮影してみる

AQUOS R6のカメラ部分はそれなりに出っ張っていますが、センサーサイズを考えるとよく健闘したという印象です。このぐらいなら、通常のスマートフォンとしても十分使えるでしょう。AQUOS R6の試作機で、体験会場に仲良く座っていたポインコを撮影してみました。

  • カメラアプリのUIは一般的。マニュアル撮影も可能です

  • 実際に撮影した作例その1。室内環境ですが、ぬいぐるみは質感よく描写できています。色味は自然で過度な派手さはありません(画像は1,200ドットにリサイズ。画像クリックで原寸大を表示できます)

  • 実際に撮影した作例その2。被写界深度が浅いため、並んだ2体のぬいぐるみの奥の方はすでにボケています。背景のボケににじみが出ていて、このあたりは薄型化の難しさという感じがします(画像は1,200ドットにリサイズ。画像クリックで原寸大を表示できます)

本体サイズは162×74×9.5mmと、厚みが9.5mmしかありません。この薄さに大型センサーとレンズを収めきったぶん、色々なしわ寄せもありそうです。特にレンズはかなり無理をしている印象でした。

搭載レンズは非球面レンズを含む7枚構成で、35mm判換算19mmという超広角レンズを採用。メインカメラは24mm相当ですが、これは19mmのレンズでクロップした上でデジタル処理で2,020万画素の画像にしているそうです。

  • こちらはシャープの資料。9.5mmの本体厚にレンズをこれだけ詰め込んでいます

実際に撮影してみると、19mm撮影では周辺が流れます。特に近接撮影時に顕著なようで、19mmは風景撮影用となりそうです。24mm相当にすると、クロップしていることから、周辺の画質低下は減るようです。ただ、背景ボケにコマ収差などの収差が残っているなど、レンズで無理をしている様子がうかがえます。

試用時は室内撮影だったので環境的な条件が悪かったのですが、ピタッとはまるとかなりの画質になりそうで、条件が良ければ1インチセンサーの実力が発揮されそうです。ただ、光学式の手ブレ補正がないこともあって、なかなか使い方の難しいカメラになりそうな印象です。

逆に言えば、1インチセンサー、ライカレンズ、ライカ監修というキーワードにはまる人なら、いろいろ楽しめるカメラではないかと思いました。

また、動画は4Kどまりですが、とにかく強力な手ブレ補正機能を備えており、動画撮影にも向いています。動画撮影中にAIがシーンを認識して静止画を記録してくれる機能も、動画と静止画を切り替える必要がなくて便利そうです。手ブレ補正は別記事でも紹介しています。

AQUOS R6の強力な手ブレ補正。動画の左上が撮影風景、右下は実際に撮れた映像です(音声は無効化してあります)。途中、映像が乱れているのは手ブレ補正の限界を超えたからのようです

もはや「一新」。OLED&指紋センサーでさらに便利に

AQUOS R6ではディスプレイも要注目。同社として初の「Pro IGZO OLED」ディスプレイを搭載しています。今までIGZOといえば液晶でしたが、昨今のスマートフォン向けの有機EL人気を踏まえて、省電力が特徴のIGZOブランドで有機ELディスプレイを開発し、搭載しました。

  • こちらはシャープのAQUOS R6体験会で紹介されていた最大2,000nitという高輝度ディスプレイの紹介。花火と夜空のコントラスト差に対して、飽和せずに描写しきっています。ちなみにAQUOS R5Gは最大1000nitでした

Pro IGZO OLEDはさすがのコントラスト比と高輝度で、見栄えも良くなっています。リフレッシュレートは最大120Hzですが、表示更新に合わせて黒画面を挿入することで240Hzにも対応。1~240Hzの間でダイナミックに(自動で)駆動させることで、残像を抑えながら省エネを確保する、という特徴があります。

5,000mAhの大容量バッテリーと省電力性能を合わせ、長時間駆動も目指しました。1インチセンサーを搭載したことでカメラの消費電力も増えているはずですが、そうした工夫で長時間のバッテリー駆動時間を確保しているそうです。

ディスプレイには指紋センサーも内蔵。Qualcommの3D Sonic Maxを搭載しており、この技術を採用したスマートフォンは世界初とのこと。従来よりも高速な指紋認証が可能となり、指紋認証エリアが大きくなったことで、「指の位置をピッタリ合わせないと認証されない」といった不自由さがなくなっています。

  • 指紋センサーは指2本が収まる広さ。1本指なら、このエリアのどの位置に指を置いても高速で認証します

  • 最初の指紋登録時も、1回指を置けば登録が完了する簡便さも特徴。一般的な指紋登録は場所を変えつつ数回指を押し当てますよね

エリアが大きくなったため、2本指を同時に認証することもできて、セキュリティ性が向上します。まあ、2本指でセキュリティを高める必要性がどれほどあるかはともかくとして、エリアが広くなって指紋認証が高速化する点は大きなメリットです。特に本機のような大画面スマホでは優位なポイントでしょう。

AQUOS R6は、型番こそ前モデルのAQUOS R5Gの後継機種ですが、「一新」といっていいほどのスペックの変更で、期待度の高い製品です。

LUMIX DMC-CM1や高級コンパクトデジカメのLUMIX DC-TX2ユーザー(筆者)としては、1インチセンサーの実力はある程度理解しているので、そういった製品と比較してどうか、実機の検証が楽しみなモデルです。