ポストコロナ時代・ニューノーマル時代における移動方法や働き方の変化について、デロイト トーマツ グループが消費者・企業への調査結果と専門知見に基づいたオンライン記者説明会を9月10日に開催した。本記事ではそのうち、「ニューノーマル時代の働き方・人事課題への対応」と題した講演の内容を紹介する。

講演者の小野隆氏

講演者は、デロイトトーマツコンサルティング(DTC)でHRトランスフォーメーション領域の事業責任者である、執行役員の小野隆氏。講演は、1.COVID-19のワークスタイル変革へのインパクト、2.ニューノーマルの実現と生産性維持・向上に向けたKFS(事業成功のためのキー要因)、3.タレント・ストラテジーの再構築のあり方という流れで進行した。

ワークスタイル変革

ワークスタイルの変革については、これまで働き方改革が叫ばれ続けていてもなかなか進展しなかったが、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)によりリモートワークが半強制的に実施されたことをきっかけに、いろいろな変化が起こっていくと小野氏は見ている。

企業側は、BCP(事業継続計画)の観点からリモートワークなどができる体制を構築する必要があると考えているという。ワークスタイルの観点からは、「けっこうリモートワークができるじゃないか」「ワークとライフはもっと共存させることができるではないか」という感覚を持ったことが大きな点だという。

これらにより、DX(デジタル・トランスフォーメーション)に必要な要素がそろってきて、COVID-19の状況をいわば追い風にした変革を進めようと企業が考えているケースが多いとのことだ。

一方で、エッセンシャルワーカーと呼ばれる、企業内でもリモートワークが不可能な業務に携わる人たちへの対応は、大きな課題だと小野氏は指摘する。

リモートワークが今後どれだけ浸透していくのかに関連して、同社が実施した調査結果の紹介があった。

7月上旬に実施した調査によると、企業が志向する在宅と出社の比率は週5在宅または週5出社は最多ではなく、在宅と出社のハイブリッド型が最も多くなっているという。しかし、専門・技術職では35%程度が週5出社を想定しており、設備・施設が必要な職種では、これはやむを得ないのではないかと小野氏は見ているという。

いずれにせよ、従来は出社が前提だったところから、ハイブリッド型への移行を考えている企業が多いとのことだ。

一方、働く個人の意識はどうか。原則として在宅勤務及び週4在宅・週3在宅の合計は半数以上に上り、個人からは在宅勤務が強く支持されているという。

リモートワークの推進のポイント

リモートワークの推進には、生産性が1つのポイントになるという。

従業員の生産性の変化を尋ねたところ、ほとんどの職種で生産性が変わらないとの回答が最多だったという。販売・サービス職では下がったとする回答が多かった一方で、企画・事務職では上がったという回答が他の職種を上回っている。

この結果を受けて、「リモートワークを推進しつつ生産性は変わらないという認識を受けながら、さらに上げていくことが、各社にとって重要なテーマになっていく」(小野氏)とした。

  • リモートワークによる生産性の変化

リモートワークによる個人の時間の使い方がどう変化したかを見ると、減ったまたは減らした時間では打ち合わせや調整系の業務が多く、増えたまたは増やした時間では趣味や家族との時間に加え、自己啓発や企画または付加価値の高い業務も多く、高度な、あるいは新たなアウトプットを生み出す活動への時間のシフトが見られるとのことだ。

企業の従業員に対する今後の取り組みでは、アウトプットをベースとした仕事の管理方法や、状況のタイムリーな可視化が上位だが、リモートワークはテクノロジーが前提となるため、役員・管理職層のリテラシーも含めたトレーニングが、今後の大きな取り組みのキーワードになっていると小野氏は語った。