米OmniVisionは、2種類の車載向けイメージセンサを発表した。1つはViewing Camera向けの「OX03C10」、もう1つはDrive Monitoring向けの「OVM9284」である。この2製品に関する記者説明会が6月25日にオンラインで開催されたので、その内容をお届けしたい。
まずはオムニビジョンジャパン代表取締役社長の薄井明英氏により、簡単に会社説明が行われた。過去には2009年や2014年、2019年にも記者説明会を行ってきた同社であるが、その間にも水面下では色々な動きがあり、2019年に現在のOminiVision Groupが形成されたとする(Photo01)。
-
Photo01:元々のOmniVisionは1995年に創業、2016年に一度Private Companyになり、2019年に再上場(ただしNASDAQから上海証券取引所に移動)している。これにあたり、アナログを得意とする中国のWill Semiconductor、およびCIS Sensorを得意とするSuperPix Micro Technologyをそれぞれ2019年に買収、改めてOmniVision Groupを結成したそうだ
同社は主に6つの市場エリアに注力しているとしており(Photo02)、またある市場向けの技術をそのまま別の市場に応用するといった具合にテクノロジーのシナジーが期待できる(Photo03)とする。
-
Photo02:個々のマーケットにおけるシェアは非公開扱いになっているが、例えば2018年における非IC系半導体企業では10位に入るといった具合に、勢いは間違いなくある
-
Photo03:例えばセキュリティカメラ向けに、暗くてもきちんと撮影できるHDRを搭載すると、それが自動車向けカメラとしても利用できるといった具合だ
現在は全世界に開発および営業拠点を置いており、日本にも営業だけでなくR&Dセンターが置かれているそうだ(Photo04)。
ということで以下製品の話を。まずOX03C10はViewing Camera向け(Photo05)である。
サラウンドビューとかリアカメラは米国では義務付けされており、また日本でもドアミラー代わりの電子ミラーが認可になって採用例が増えているが、ニーズとしては現時点でも高級車で2.5MPixel、将来は4MPixel程度が必要とされ、また現在でも120dB、将来は140dB程度のHDR性能が求められる。低照度でのパフォーマンスも必須だ。
この用途に向けて、OX03C10では、パッケージを積層することでチップサイズを減らしたほか(Photo06)、LEDフリッカー(Photo07)や、例えばトンネル出口でダイナミックレンジが足りずに映像が白飛びする現象に対してのソリューションを提供する。
-
Photo06:積層するとパッケージは小型化される一方、ロジックの発熱でCMOSセンサの温度が上がるとSNRが悪化するといった弊害もある。ただ同社はこの部分の省電力性にはかなり自信があるようで、CMOSセンサ自身の消費電力も含めて低く抑えられるとしている
Photo03にもあったが、同社のイメージセンサは4cellタイプのものが利用される。これを利用し、4つのセンサの出力を組み合わせる事で140dBのダイナミックレンジを確保するほか、露光センサを組み合わせる事でLEDフリッカーフリーを実現出来るとする(Photo07,08,09)。
-
Photo07:現在でもドライブレコーダーの映像を見ると、信号とか標識などが激しくフリッカーを起こした形で記録されているケースは珍しくない。もちろん人間が直接見る分には問題はないのだが、一度カメラを通して表示されるものがフリッカーを起こしていると当然見にくい
-
Photo08:ちなみに実際のケースでは瞬間的には150dB程度のダイナミックレンジが求められるケースもあるそうだが、ほぼ140dBがあれば普通の用途はカバーできるとしている
-
Photo09:こちらがHDRとLFMを両立させる仕組み。4つのイメージセンサの出力を利用して最大140dBのイメージを生成するのと並行してLEDフリッカーを検知(これはセンサの小セルを利用するとの事)し、フリッカーを起こしている場所をMapの形で出力、これを後補正する形でフリッカーを解消する
また夜間などの低照度環境に対しても、従来比で20%ほどSN比を改善することで、より明るく表示が可能になるとしている(Photo10,11)。
-
Photo10:4つのセンサを組み合わせている関係で、Pixelあたりの寸法は3μmと結構大きいが、これによって結果的に低照度であってもちゃんと撮影が可能になっている
-
Photo11:こちらは説明中に流されたデモ映像から。HDRのデモでもあるのだが、薄暗いはずのパーキングエリアがきちんと撮影されているのが判る
このあたりのバックエンドをすべて1パッケージで提供する形になっており、車載メーカーなどには使いやすい構成になっているのが判る(Photo12)。今のところサンプル出荷時期などは明らかにされていない。
-
Photo12:カメラメーカーとかだと、このISPの部分に自社のノウハウを入れたいとか色々要望があるが、自動車メーカーは逆にこのあたりをすべてパッケージされた形で提供される方がむしろ好ましいのかもしれない
次がOVM9284。Driver Monitoringとは、要するに自動運転のLevel 2以上になると、ドライバそのものがきちんと注意を払って運転している事を確認する必要があり、そのための手段として画像認識が用いられるので、このためのカメラである(Photo13)。
ここで利用されるのは940nm帯の近赤外線を使ったカメラで、グローバルシャッター式としたのがOVM9284の特徴である(Photo14)。
-
Photo14:感度とか効率で言えば850nm付近を使う方が好ましいそうだが、問題はこれだと運転者が(撮影用補助光を)赤い光と感知してしまって運転の妨げになるからだそうで、940nm帯だとその心配が無いからだそうだ
消費電力が下がるほど、発熱が減ってSN比の改善が出来るため、感度が上がる事になるのが大きな理由とされた。
またサイズに関して言えば、Aピラーの中に埋め込みの方向が現在検討されているため、より小さくかつ消費電力を下げる工夫が必要とされた(Photo15)。
実際にAピラーに埋め込んでのテスト画像はPhoto16のような感じ。顔認識で瞳の位置(というか、ちゃんと目を開いているか、どっちを向いているか、など)からドライバーの状況を判断できると説明された。
-
Photo16:これは顔認識から顔の向きや瞳の状態などを監視しているもの。もちろん顔認識あたりからはカメラではなく自動車メーカーの作業の領分なので、あくまでもきちんと撮影してその画像をシステムに送り出すまでが同社の責任範疇であるが
Aピラーに埋め込むために、モジュールはほぼ6.5mm角と非常にコンパクトであり、しかもレンズまで含めてまとめて量産できるので、きわめて低価格で実現できるという点も特徴とされる(Photo17)。
バックエンドはそれほど凝った機能は搭載されていないが(Photo18)が、これは顔認識などのシステムが入るのであれば、必要に応じてそのシステムの側で処理を行うから、カメラの側であれこれ工夫する必要はない、という話と思われる(Photo18)。
このOVM9284は現在サンプル出荷中で、2020年第4四半期に量産開始予定となっている。