完全ワイヤレスイヤホンの勢いが止まらない。多くのメーカーから新製品が続々登場し、いまやポータブルオーディオ市場での存在感はかなりのものだ。値段も数千円から万単位の高価なものまでさまざまな製品があるが、できれば安くて音がよく、所有欲も満たしてくれるモノを選びたい。

筆者は最近、実売1万円の手ごろな完全ワイヤレスイヤホン「TEVI」(テヴィ)を購入し、コストパフォーマンスのよさに満足して毎日使っている。今回は約1カ月、TEVIを使ってみた印象をお伝えしたい。

  • LYPERTEK TEVI

    完全ワイヤレスイヤホン「TEVI」のパッケージ

  • LYPERTEK TEVI

    TEVIは1万円という手ごろさながら、あなどれない実力を秘めている

香港発、新進気鋭のLYPERTEKブランド

TEVIは、LYPERTEK(ライパーテック)ブランドの完全ワイヤレスイヤホン。発売日は1月24日で、Amazon.co.jpでは税込でちょうど1万円とリーズナブルな価格で販売している(2020年2月28日時点)。ただ、Amazonのレビュー欄には400以上の書き込みがあり、星4つと比較的高評価であるものの英語圏からの書き込みが非常に目立つ。おまけになじみがないブランド名なので「知らない名前だけどコレ買っても大丈夫?」と思われてしまうかもしれない。

実は、LYPERTEKは香港に拠点を置き、15年以上にわたってオーディオ機器開発を手がけてきたメーカー・SOUND INNOVATIONが2017年に設立した新進気鋭のブランド。今回、TEVIを引っさげての日本初上陸となった。国内では、RHAやGradoといったオーディオ好きによく知られているブランドの製品輸入を手がけるナイコムが取り扱い、製品には日本語で書かれたクイックスタートガイドを同梱。さらに、TEVIの製品ページにはTEVIを使っていて困ったときに役立つFAQページも用意されている。完全ワイヤレスイヤホンをはじめて買う人にとっても、こうした気づかいは頼りになるだろう。

TEVIってどんな完全ワイヤレス?

TEVIのサウンドは、超軽量かつ強度の高いグラフェン素材を使った6mm径の「ハイパフォーマンス・グラフェン・ドライバー」が担う。再生周波数帯域は20Hz~20kHzで、一般的な完全ワイヤレスイヤホンと数値上は大きな違いはないが、クアルコムの32bitトリプルコアチップ「QCC3020」やデュアルコアDSP「Kalimba」を採用するなど、「徹底した高音質設計で、価格を超えたシグネチャーサウンドを可能にする」とアピールしている。

Bluetooth 5.0に準拠し、コーデックはSBC、AAC、aptXをサポート。iPhoneなら高音質なAACコーデックで音楽を楽しめる。aptX対応のAndroidスマホであれば低遅延コーデックの恩恵を受けられ、NetflixやAbemaTVといった映像配信サービスの動画を観ていても映像と音のタイミングがほぼ一致。人やキャラの口の動きとセリフがズレるといった不自然さは感じられなかった。

このほか、普段はイヤホンを使って通話はしない(スマホを耳に当てて電話する)ので試していないが、内蔵マイクを使ったハンズフリー通話にも対応。cVc 8.0マイクノイズキャンセリングによってクリアな通話を実現するという。

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    6mm径の「ハイパフォーマンス・グラフェン・ドライバー」と、クアルコムの32bitトリプルコアチップ「QCC3020」、デュアルコアDSP「Kalimba」を搭載

完全ワイヤレスイヤホンは音だけでなく、接続性の高さも大事なポイント。TEVIは左右独立伝送で安定したワイヤレス接続を実現する「TrueWireless Stereo Plus(TWS+)」に対応し、TWS+対応スマホと組み合わせると音の途切れを抑えられるという。ただ、TWS+には対応しないAndroidスマホや、TWS+が使えないiPhoneでは接続が切れやすいか?というと、そんなことはない。筆者が試した限りでは、通勤時にスマホをポケットにいれたままでも、ごくまれにプツッと切れることがある程度。ストレスが溜まるほどではなかった。

TEVIの連続再生時間はイヤホン単体で約10時間(SBC/AACコーデックの場合)と、他の完全ワイヤレスイヤホンと比べて比較的長く聞けることにも注目。TWS+で接続していないときに、左右のうちバッテリー残量が多い方が自動でマスターユニットとなり、どちらかが先に充電切れを起こすのを防止する「マスター・スレーブ・スイッチング・テクノロジー」を備えていることも功を奏しているのだろう。付属の充電ケースと組み合わせると、合計で約70時間も音楽をたっぷり楽しめる。急速充電にも対応しており、15分の充電で約2時間音楽を聴けるのもありがたい。aptXコーデックを使用するとバッテリー消費が増えるが、それでも普段使いには十分なスタミナがあると感じている。

ちなみに、充電ケースの表面は凹凸のあるファブリック調の質感で手触りがよく、高級な完全ワイヤレスイヤホンのケースにも決して引けを取らない仕上げになっている。フタをあけると充電仕様などの細かい文字がズラズラ書いてあるのはデザイン的に工夫して欲しかったが……。充電端子にUSB Type-Cを採用しているので、手持ちのスマホ充電ケーブルを使い回せるのはうれしい。

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    ファブリック調の質感で手触りのいい充電ケース。フタの中のデザインは工夫して欲しかった……

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    充電端子はUSB Type-C

イヤホン本体はIPX7相当の防水仕様で、スポーツ時の汗や雨天時の水しぶきにも耐えられる。プラスチック製の本体デザインは手ごろな価格帯なりの見た目であることは否めないが、片側5gという軽量かつコンパクトな設計で、耳にはめていても違和感がない。耳の小さい女性にもフィットするだろう。ハウジングには音楽再生などを操作する物理ボタンを備えている。イヤーピースはシリコンのものと、フォームタイプの2種類が付属し、自分の耳に合ったサイズを選べばピッタリはまって抜け落ちる心配はない。

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    手元の完全ワイヤレスイヤホンを並べてみた。左からソニーの新しい完全ワイヤレスイヤホン「WF-H800」、LYPERTEK「TEVI」、Noble Audio「FALCON」、TaoTronics「SoundLiberty 77」。TEVIの小ささがよくわかる

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    TEVIの充電ケース(中央手前)は、手元の他の完全ワイヤレスイヤホンよりもややずんぐりしている