2020年1月15日~17日にかけて東京ビッグサイトにて開催された「第12回 オートモーティブテクノロジー展(オートモーティブワールド2020)」において、STMicroelectronicsの日本法人であるSTマイクロエレクトロニクスは、クルマで進む電子化と電動化という2つの進化の方向性に対応できるさまざまなデモを披露していた。

PowerアーキテクチャからCortex-R52へ

劇的に進む電子化/電動化(E/E)の中心となるものの1つにECUやDCU(ドメインコントロールユニット)があり、その中心にはマイコンが搭載されることとなる。同社は長くPowerアーキテクチャを採用した「SPC58x Chorusファミリ」を提供してきたが、Powerアーキテクチャは現在、新規開発は停止している。同社は車載向けに最大200MHz動作(3コア)のSPC58Hxxシリーズなどを提供してきており、まだまだ強い引き合いがあるという。

その一方で、もっとパフォーマンスが欲しい、という声も年々強くなってきており、次世代自動車に向けて、新たにCortex-R52ベースのマイコン「Stellarファミリ」を開発した。

Stellarファミリは28nm FD-SOIを採用し、最大400MHz(6コア)の構成が可能で、ソフトウェア分割方式のハイパーバイザなどにも対応可能。また、その最大の特徴は、組み込みメモリとしてPCM(相変化メモリ)を採用した点にあるといえる。同社としても以前よりPCMを組み込みメモリに活用することをアナウンスしていたのだが、その第一弾がStellarファミリということとなる。PCMは最大40MB搭載可能で、ビットごとにダイレクトオーバーライトが可能だという。

また、Stellarファミリはパワートレイン用とゲートウェイ用の2シリーズが展開される予定で、2020年末ころのサンプル出荷、2022年の量産出荷を予定しているという。

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    28nm FD-SOIを採用し、PCM搭載マイコン第1弾製品と位置づけられる「Stellarファミリ」のサンプル品。こちらはパワートレイン向けのものとのこと

HEV/EVの航続距離の増加に向けた新モジュール技術

また同社は、ロームの子会社SiCrystalとSiCウェハの長期供給契約を締結するなどSiCに注力している。同社ブースでは、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)の航続距離の増加に向け、小型化と低損失化を可能にする新コンセプトのEVトラクション・インバータ向けパワーデバイスモジュール「STPAK」の展示も行っていた。

パワースイッチ1個と保護回路を搭載したディスクリートタイプのモジュールで、導電性の向上を可能とする多層焼結型実装技術を採用することで、薄くて放熱効果が高い小型モジュールを実現した。ちなみに焼結方式は、すでに活用しているユーザーがいるということで、信頼性の面でも問題なく、そうしたノウハウを活用することで実現できたという。

デモは水冷式を模した形で行われていたが、空冷方式での利用も可能だという。

  • STマイクロエレクトロニクス
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  • 「STPAK」と、それを6個組み合わせた3相のトラクションインバーターを模したデモの様子

加速度センサでロードノイズをキャンセル

このほか、同社ブースでは、開発中の車室内ロードノイズキャンセルシステム向けオーディオ加速度センサのデモも行われていた。

オーディオ加速度センサといわれると、いまいちよくわからないが、一般的な加速度センサのインタフェースであるSPIなどではなくTDMスレーブインタフェースを搭載し、ホイールなどの振動で生じたロードノイズを音声データとして出力。その信号波形に逆位相をかけることでノイズキャンセルを可能とした。

こちらはすでに型番も「AIS25BA」と決まっており、興味を示すメーカーもあるとのことで、2020年第4四半期からの量産出荷を予定しているという。

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  • オーディオ加速度センサ「AIS25BA」のデモの様子。当該のチップはもっとも大きいSTM32マイコンの左下のチップとのこと