日本マイクロソフトは11月27日、自社およびパートナー企業の「モダンPC」を一堂に集めて、モダンPCの満足度を調査した結果や、年末商戦の活性化に向けた各社のキャンペーンを披露する説明会を開催した。
振り返れば、日本マイクロソフトが「モダンPC」というキーワードを使い始めたのは約1年前の2018年11月から。モダンPCを聞いたことがあると回答したWindowsユーザーの割合は、2018年冬商戦時は12%にとどまるが、2019年春商戦時は15%、2019年夏商戦時は23%とを着実に広まりつつある。
モダンPC施策については、「中長期かつグローバルで取り組んでいる。PC買い換えサイクルも7年8年と長くなり、進化が止まったように見えかねない。モダンPCというブランド構築で購買促進につなげている」(日本マイクロソフト 執行役員 コンシューマー&デバイス事業本部 デバイスパートナー営業統括本部長 梅田成二氏)と語った。
日本マイクロソフトは2019年度(2018年9月~2019年8月末)の経営方針で、2020年に向けてインダストリーイノベーション、ワークスタイルイノベーション、ライフスタイルイノベーションという、3つのイノベーションを推進すると説明した。一見関係ないモダンPCだが、当時の担当者は「3つが連携しながら地殻変動を起こしたい。連携させないと最大の効果が得られない」と語っていたものだ。
冒頭で述べたとおり、2019年冬商戦から注力し始めたモダンPCは認知度を高め、2019年9月のPC市場も消費増税前の駆け込み需要や、2020年1月14日にサポート終了を迎えるWindows 7からの乗り換えも相まって(*)、「(各要件の)相乗効果によって、2019年9月は前年度比80%超。翌10月は対前年度比を割り込んでいるが、1年を通じてみれば2桁成長が見込める」(日本マイクロソフト 執行役員 常務 コンシューマー&デバイス事業本部長 檜山太郎氏)という。
*:Windows 7と同時期にリリースしたOffice 2010も2020年10月13日でサポート終了
日本マイクロソフトが明かした調査結果で興味深いのが、地方・郊外におけるモダンPCの販売台数だ。昨年度比プラス118%と急激な伸びを見せている。同社は「これまで地方・郊外でPCを持って出かけるケースは少なかった。急上昇した理由は製品の置き換えではなく、携帯性に優れたモダンPCの登場でユーザーの活動範囲が外に広がった」(檜山氏)と見ている。
さらに、日本マイクロソフトがモダンPCユーザーの1,574名を対象に行ったアンケートによれば(2019年9月実施)、94%のユーザーが速さを実感し、84%のユーザーが起動時間の早さを挙げた。そして73%のユーザーが外出時にPCを携行し、そのうち84%が軽さ、70%が薄さを実感している。より詳しい調査結果は日本マイクロソフトのWebサイトで確認可能だ。モダンPCを体験したユーザーの声を映像で伝えるキャンペーンサイトも合わせて公開されたので、アクセスしてみてほしい。
一方、2019年9月末の時点でWindows 7設置台数は約890万台。約470万人がWindows 10への移行を望み、そのうち2019年末の買い換え予定は約150万人。日本マイクロソフトは、潜在的な買い換えユーザーである320万人を対象として、モダンPCの市場活性化に向けて訴求していくと語った。
今回の説明会では、各PCメーカーを交えて日本マイクロソフトの梅田氏がモデレーターを務めた、年末商戦の活性化に向けたパネルディスカッションも行われた。
NECレノボ・ジャパングループの河島氏は「上半期はかなり好調で想像以上。特に地方が大きく、Windows 7サポート終了に向けて高齢者の購入も多かった。国産ブランドに需要が集まり、NECも売り上げ好調。データを見るとWindows 7のPCはかなり残っているので、需要は続くと思っている」。
デルの田尻氏も「多分に漏れず弊社も好調。ゲーミングPCのALIENWAREや、プレミアムラインのDELL XPSが大きな成長を達成した」と好調をアピール。
各社のモダンPC、オシのポイント
話が各社デバイスのポイントに移ると、富士通クライアントコンピューティングの高嶋氏は、2in1 PCで世界最軽量の約868グラムを実現したLIFEBOOK UH95を手に持ってウチワのようにあおぎ、「パタパタできる」と軽さをアピールした。
UHシリーズは前年度比200%、消費増税後の2019年10月も120%と高い推移で販売台数を重ねているという。15秒の充電で90分使用可能な内蔵ペンや、本体の有線LANポートなど豊富な機能、堅牢性を強調しつつ、「開発・設計・製造まで国内で実施し、品質にもこだわっている。新しいワークライフを体感してほしい」(高嶋氏)と述べた。
NECレノボ・ジャパングループの河島氏は「世界最軽量は捨てた(笑)」と会場の笑いを誘う(編注:NECパーソナルコンピュータと富士通クライアントコンピューティングは、ノートPCの「世界最軽量」を競い合っていた)。最新モデルのNEC LAVIE Pro Mobileについて、「軽さも大事だがバランスも重要。剛性、デザイン、質感を両立させなければならない」(河島氏)としながら、サウンド面の特徴を紹介して「これ1台で1対1も1対複数のオンラインミーティングも快適に対応できる」(河島氏)と、今後増加するであろうWeb会議での利便性を強調した。
続いて川島氏はレノボ・ジャパンの「Lenovo Yoga S740-15」をプレゼン。GPUにGeForce GTX 1650を採用し、クリエイターやPCゲーマー向けとなっているが、「個性的なデザインが多いゲーミングPCのなかで、(S740-15は)スタイリッシュだ」(河島氏)と断言した。
次はDynabook。dynabookシリーズは現在、一般ユーザー向けの6シリーズ中4シリーズをモダンPC化するなど注力度が高い。Dynabookの長嶋氏は「4~5年使い込んでも困らない。(モバイルノートPCのdynabook Z8)に限らず、すべてのラインナップに通ずるのが『持ち歩いても壊れにくい』点。MIL規格(*)にも準拠している」と堅牢性を強調した。
*:米国防総省が制定した機材調達向けの規格。耐衝撃性などを定めた「MIL-STD-810」がある
日本HPのHP ENVY x360 15は15型ノートPCだが、2in1コンバーチブルを採用。日本HPの沼田氏は「家庭でもコンバーチブルが好評。小さいお子さんも使いやすくなり、タッチ&ペンが使える点が顧客満足度を高めた」と採用理由を説明した。
また、PC内蔵カメラに不安を覚えるユーザーも少なくないため、カメラを物理的に閉じるスイッチを用意した理由について、「インカメラのハッキングを心配するお客さまが多い」(沼田氏)という。「日本HPのノートPCはこれまで無骨なデザインが多かったが、HP ENVY x360 15は総アルミニウムのデザインも好評をいただいている」(沼田氏)とした。
デルが展示したInspiron 13 7000は1kgを切っているが、「外資メーカーのデルは、ノートPCで1kgを切ることが重要という日本市場の特性に理解がなかった」(デルの田尻氏)と述べつつ、消費者の生活需要に着目した2つの特徴を紹介した。
1つは、PCで動画を観るニーズを踏まえたDELL Cinemaテクノロジー(配色、ストリーミング再生、聴きやすいサウンド)。もう1つは、PCとiPhone(またはAndroidスマートフォン)をペアリングすることで、電話の発着信やデータ転送を容易にする「DELL Mobile Connect」だ。「我々はハードウェアだけではなくソフトウェアも工夫することで、ユーザーの生活を豊かにするモダンPCを提案する」(田尻氏)と語った。
最後に、年末商戦に向けた各社の施策をまとめておこう。
富士通クライアントコンピューティング:Windows 7サポート終了に伴うWindows 10 PCへの買い換え促進サイトをリニューアル。また、観る・聞く・打つ・持つを実体験するイベント「FMV実体験LABO」を3都市で実施。2019年11月30日~12月1日は名古屋ナナちゃんストリート、12月7~8日は秋葉原駅電気街口改札内、12月14日~15日は大阪なんばCITY本館B1F。全国の大型家電量販店でも「FMVこだわり実体験イベント」「プログラミング体験イベント」を予定している。
Dynabook:dynabook30周年を記念して、Zシリーズを含むdynabook購入ユーザーへのキャンペーンを開催。
デル:B2C向け店頭展開として、DELL CinemaやDELL Mobile Connectの体験会をはじめとする店頭イベント、B2C向けダイレクトチャネルでは冬のボーナスキャンペーンを実施。
日本HP:コンバーチブルPCの訴求強化に合わせて、2019年11月29日から始まるブラックフライデーに合わせたキャンペーンを実施。6日間限定で5%の値引きを行う。
NECパーソナルコンピュータ:LAVIE Pro Mobile年末キャンペーンと題して、テレビCM、動画広告、SNS展開や、YouTubeのプロシューマー向けにレビューを増やすアクションを実施。
レノボ・ジャパン:Lenovoブランドは最大1万円のVプリカ(ネット専用VISAプリペイドコード)をプレゼント。
阿久津良和(Cactus)