縦横に置けるスマートディスプレイ

「Lenovo Smart Display M10」は、前述したようにGoogle Nest Hubの10.1インチ版といった趣だが、違いとしてはカメラを搭載しており、M10(またはGoogleアシスタントを搭載したカメラ付きスマートディスプレイ)同士でビデオチャットが行える。Google Nest Hubも米国ではカメラを搭載した大型版の「Nest Hub Max」が出ているのだが、日本市場ではLenovoが先行した形だ。また、ビデオチャット時に備えて縦置きに対応しているのも特徴的だ。こちらは2万2,000円だが、7インチのNest Hubは1万5,120円。大画面化+カメラ搭載で+7,000円であれば妥当なところだろう。

  • 10.1インチと大画面(解像度はWXGA:1280x800ドット)を搭載した「Lenovo Smart Display M10」。台所などで利用することを想定しているとのことだが、残念ながら防水機能は搭載していない

  • 特徴的な形状の背面は、縦横どちらでも利用することを想定しているため。スピーカーは縦置き時にステレオ再生できるように配置されている。スピーカー出力は10Wでかなり強力だ

  • 大画面を生かして、タイマーを同時に2つまで設定して表示できる。ラーメンタイマーとしてもバラバラな時間で利用できるわけだ

「スマートな目覚まし」としてはどうなのか

筆者は現在、リビングにGoogle Nest Hubを、ベッドルームにGoogle Home miniを置いて利用している。ここにSmart Clockを加えるとしたら、ベッドルームのHome miniを置き換えることになるだろう。Home miniは表示能力がないため、時間を確認したり、目覚ましを止めるときにもいちいち「OK、Google」と言わねばならないことを考えると、時刻が常時表示&タッチでいいSmart Clockはずっと手軽だ。音量スイッチがわかりやすいのも◎だ(Home miniにタッチ式音量スイッチを搭載した人間には、一度厳しい教育が必要だと思っている)。

音楽を流すスマートスピーカーとしても、3Wのフルレンジスピーカーとデュアルパッシブラジエーターを搭載しており、音量も音質も、Home miniよりずっといい。さらにスマートフォンのBluetoothスピーカーとしても利用できる。モノラルではあるが、ベッドサイドのスピーカーとしては十分だろう。

ただし、これは単純にスマートスピーカーとスマートディスプレイの違いでもある。レノボが言うように、目覚ましとして何らかの問題を解決するものかと言われると、少々疑問だ。アラームと連携して段階的に画面を明るくする、音楽を流すetcといった程度で起きられる人は、そもそも十分に快適で健康的な睡眠を取っているのではないだろうか。

私ごとで恐縮だが、筆者には中一の息子がいる。これが非常に寝起きが悪い男で、朝5時すぎから起こして、ようやく6時半ごろに起き上がり、慌てて食事もそこそこに、「どうして起こしてくれなかった」と悪態をつきながら部活の朝練(7時集合)に飛び出していく……という生活を送っている。当然Home miniなどを目覚ましがわりに使っているが、そもそも消そうともしない、図太い神経の持ち主だ。こいつを、親の手を煩わせずに確実に起こしてくれて、初めて「スマートな」目覚ましと呼びたい。

いっそのこと、人間が非常に不快に感じる周波数の音波をピンポイントに照射する、ドローンを操作して氷水をかける、早く止めないと勝手に寝顔の写真を取ってSNSに投稿する流す…など、デジタルならではの、強制的に起こす機能やデバイスとの連携を搭載してくれないものだろうか。この点では巨大なベルなどを使う、アナログな目覚まし時計のほうが、よほど優秀だと感じる。

一方で、睡眠導入デバイスとしては、なかなか優れていると感じている。「ルーティーン」機能で「おやすみ」と声をかけると、翌朝の目覚ましをセットすると同時に、各機器の電源を落とし、虫の声や波の音、川のせせらぎなど、心が落ち着いて眠りやすくなるような音(ホワイトノイズ)を流してくれるのだ(同機能はほかのGoogleアシスタント対応デバイスでも可能)。意外と快適に眠れるので、寝付きの悪い方は試してほしい。

Googleアシスタント搭載のスマートデバイスは、一斉にメッセージを送る「ブロードキャスト機能」など、複数台を連動させることで便利な機能も多い。家中にスマートデバイスを配置するに際し、Smart Clockが時計という需要が確実にある機器のかたちをとったのは理にかなっている。

目覚ましとしては(日本では、連動できるスマートデバイスがまだ少ないこともあって)もう一息という気がするが、あくまで安価な小型のスマートディスプレイと考えれば魅力的だ。たとえばスマートフォンを持たせるにはまだ早い子供部屋や、あまりゴテゴテとしたIT機器を置きたくないベッドルームで利用するデバイスを探している人は、ぜひ検討してみてほしい。