宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2月22日11時より、小惑星探査機「はやぶさ2」の第1回目タッチダウンの結果に関する記者会見を開催した。タッチダウンを無事に成功させ、会見に出席した津田雄一プロジェクトマネージャは、「本日、人類の手が、新しい小さな星に届いた」と宣言。はやぶさ2の快挙を祝った。
既報の通り、はやぶさ2は当初の予定より30分以上も早い順調なペースでタッチダウンを実施。津田プロマネは、「想定の中ではベストの状態で、思った通りの着陸ができた」と、前日より続いた降下運用を総括した。
津田プロマネは、初号機のときは若手メンバーとして関わっていた。初号機では、残念ながら想定した通りのタッチダウンを行うことはできなかったが、その悔しさをバネに、「初号機を越える成果を出そうとやってきた」とのこと。タッチダウンの成功を確認したあと、初号機プロマネの川口淳一郎氏と言葉を交わした際には、「初号機の借りは返しました」と伝え、川口氏は笑っていたという。
会見の時点までにも、テレメトリデータがどんどん届いており、着陸時の様子が分かりつつある。気になるのは、本当に弾丸が発射されたかどうかということであるが、発射装置付近の温度データを確認したところ、10℃ほど上昇していたことが分かり、発射したことが確実となった。
弾丸を発射できなかった初号機では微粒子しか得られなかったが、今回、弾丸が発射された以上は、ある程度の量のサンプルを回収できた可能性が高い。この後の運用にて、すぐサンプル格納容器のフタを閉める運用を行うそうだ。
少し意外だったのは、弾丸を発射するトリガーとなったのが、「姿勢の変化」であったことだ。一番可能性が高いとみられていたのは、「サンプラーホーンの長さの変化」だったので、何が予測と違ったのかは興味深いところだ。このあたりの解析も、今後、より深くデータを解析することで明らかになっていくだろう。
また会見中には、タッチダウン運用中に撮影した画像が早くも公開された。着陸後、上昇中に撮影したものとのことで、地表には噴射の後が黒く残っているのが確認できる。これも今後詳細に解析することになるが、津田プロマネは「予定通りの地点に着陸できたことが強く推測される」と、現時点での評価を述べた。
リュウグウ表面が想定外に岩だらけで、平坦な広い場所がなかったため、当初の予定を4カ月遅らせ、準備を行ってきた。「もともとは甲子園球場に降りようと思っていたのに、マウンドを狙わないといけなくなった」と、今回の難しさを表現した津田プロマネだったが、「その通り甲子園のマウンドに到達できて嬉しい。これから解析して、マウンドのどこに降りたのか調べたい」と喜んだ。
今回は、「ピンポイントタッチダウン」という、初号機には無かった新機能でこの難題をクリアすることができた。これについて、津田プロマネは「ターゲットマーカーによる着陸方式という、初号機が生み出した技術があったから、ピンポイントタッチダウンを実現できた。これは日本独自の技術で、発想の凄さを実感している」と述べた。
ただ、長いと思っていた1年半の滞在期間も、気がつけば残り半分くらいになった。しかも、これからリュウグウは太陽に接近し、表面温度が高くなってくるため、残りのタッチダウン運用は、6月末か7月頭までには終わらせる必要がある。第1回目のタッチダウンを延期したこともあり、スケジュール的な余裕はあまりない。
元々の計画では、最大3回のタッチダウンと、「インパクタ」(衝突装置)による人工クレータの作成が予定されていた。インパクタの運用は、おそらく確実に実施することになるだろうが、タッチダウンをあと何回やるかは、今回の結果も踏まえ、今後議論して決定する。これ以上のリスクを避け、もうタッチダウンは止めるのか、それともさらなる科学的成果を狙い、別の場所に降りるのか。さまざまな考え方があるだろう。
これについて、津田プロマネは「探査機は健全なので、この後1カ月も何もしないということはない。今後は2~3週間おきに、クリティカルな降下運用を入れることになるだろう」と述べ、結論は「近いうちに報告したい」とした。