Microsoft/日本マイクロソフトを巡る2018年を振り返ると、個別製品やサービスもさることながら、IT業界におけるポジショニングの変化が加速した印象を受ける。WindowsやOffice、Microsoft Azureと平行しつつ、AI(人工知能)や量子コンピューティングへの注力具合は、同社自身の変革を裏付ける一環だろう。
この1年のマイクロソフトの動きを振り返っていきたい。
AIの取り組み成果を大々的に披露
2018年、取り組みが進んだ事業のひとつがAIだ。Microsoft/日本マイクロソフトにおけるAIの取り組みは多岐にわたる。
日本マイクロソフトが2018年1月18日に開催したプレスラウンドテーブルでは、Microsoftが前年2017年12月に発表した「Everyday AI」を受けたものとして、数々の取り組みを披露。ここでは割愛するが、改めて注目したいのは、日本マイクロソフトが2017年5月に国内AI企業であるPreferred Networks(以下、PFN)との協業を発表したことである。
発表ではDeep Learning Labの設立やONNX(Open Neural Network Exchange)へPFNが参画するなど、深層学習を広める基盤ができつつあることを示した。また、分散深層学習パッケージであるChainer MNを、Microsoft Azure上のHPC VM(仮想マシン)でスケールアウトすると、「シングルノードでも100倍の学習効率がある」(日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者 兼 マイクロソフト ディベロップメント 代表取締役 社長 榊原彰氏)という。2018年を振り返ってみると、AIは研究フェーズから実用フェーズへと進み、プラットフォームベンダーを目指すMicrosoftには追い風となった1年だったはずだ。
女子高生AI「りんな」と音声会話する時代へ
ソーシャルAIチャットボット「りんな」も着々と成長を重ねてきた。2018年2月13日開催のプレスラウンドテーブルでは、「りんな歌うまプロジェクト」の結果報告や、りんなから電話がかかってくる「りんなライブ」のサーバー構成を紹介。7月31日にはプロジェクト第2弾「感情をこめる」で詩の朗読に挑戦することを明かした。9月12日には地方応援プロジェクト「萌えよ♡ローカル」と活動は多岐にわたる。
11月5日に開催したTech Summit 2018の基調講演では、日本マイクロソフト 代表取締役社長 平野拓也氏がスーツの胸ポケットに入れたスマートフォンで、りんなと会話する演出をしたことも記憶に新しい。平野氏は「リアルタイムで音声を生成し、(AIと)会話する時代へ」と語り、りんなの会話エンジン「共感モデル」が着々と成長していることをアピールした。
来年2019年にはMicrosoftおよび日本マイクロソフトが提唱する「『Microsoft AI』は人間の創造性を拡張する」シナリオを目の当たりにできそうだ。
開発者向けイベント「Microsoft Build 2018」開催
Microsoftは開発者向けイベントとして「Build」、日本マイクロソフトは「de:code」を例年開催してきた。前者に関しては過去のまとめ記事(1日目、2日目)を参照いただくとして、後者の基調講演で感じた素朴な感想を述べたい。
例年オープニングトークを務めるのは、日本マイクロソフト 執行役員 常務 デジタルトランスフォーメーション事業本部長 伊藤かつら氏だが、今年はMicrosoftの各CVPが次々と登壇した。1人目はAzure Marketing担当CVP、2人目はDeveloper Division担当CVP、3人目はMixed Reality Studios担当CVP。平野氏が登壇したのは最後。近年は米Microsoftと日本マイクロソフトの垣根がさらに低くなり、その傾向は前述したTech Summite 2018でも見受けられる。
Build 2018のセッションに目を向けてみると、Windows 10がすっかり影を潜め、Microsoft AzureやAI、IoT関連のセッションが大半だった。筆者は例年セッション動画や資料をチェックしているが、Windows 10に関連したのは主に下記(リンク群)のセッションだ。現在のWindows 10 バージョン1809はもちろん、Windows 10 Insider Preview 19H1でも実装を見送ったSetsに関するセッションも行われた。