2018年2月の日本初上陸以来、拠点を増やしている「WeWork」。コワーキングスペースとして入居者同士の「コミュニケーション」にフォーカスされがちだが、今回はそれぞれ違った理由で入居を決めた北海道の老舗企業北海道ガスと、IoT事業で急成長を遂げるウフルを取材した。

プロジェクトの活動拠点として選択

新規事業の創出を目指しアクセラレータープログラムを主催する北海道ガスは、プロジェクト拠点として「WeWork ギンザシックス」への入居を決めた。2019年2月までに実証実験を終えるスケジュールであることから入居期間を定めている。 ※アクセラレータープログラム:大手企業がスタートアップ企業に対して、協業・出資を目的とした募集行為のこと

「昨今の電力やガスの自由化を受け新規事業の創出にも注力しているのですが、その実現に向け今年度はアクセラレータープログラムを主催し、スタートアップ企業とのコラボレーションを目指しています。プログラムは期間が定められているので、短期で集中的に取組むために、環境を大きく変える必要があると考え、東京でかつ出会いの場として“WeWork”への入居を決めました。」

そう語るのは、同社のオープンイノベーション担当 稲垣氏。ただ札幌の本社からは東京でなくてはならない理由や入居に対する費用対効果を問われたと言う。

北海道ガス エネルギー企画部 エネルギー企画グループ オープンイノベーション担当 課長 稲垣利陽氏

「札幌でも活動出来ないとは思いませんが、対面できる企業数が全く違う。それに札幌・東京間の交通費や宿泊費、さらに面談の際に使うレンタルオフィスなど、諸々のコストも含め検討した結果、東京にオフィスを構える方がコストはかからないと算出できました。それらを話したところ、本社の上層部からも挑戦してこいと言っていただけました」

稲垣氏の熱意もあり、同社は「WeWork」への入居を決めた。

「ここはトレンドに敏感な人が集まるので、世の中の最新情報をすぐにキャッチでき、我々のように地方企業が何か新しい事へチャレンジする際には本当に最適な場だと思います。メンバーにとっても、多くの人と関わり合えるこの環境は刺激になっているようで、アクセラレータープログラムが終わってしまうことが名残惜しいようです」

多種多様な業種の人との交流が刺激に

プロジェクトメンバーである安岡氏も「WeWork」で、新たな価値観に触れ刺激になると同時に自社の強みを再認識できたと話す。

北海道ガス エネルギー企画部 料金センター オープンイノベーション担当 安岡弥生氏

「インフラの世界しか知らなかったので、多種多様な業種の方々とお話しすることで世界が広がりました。新たな気付きは社内で共有すると共に、今後何かしらの形で当社へも取り入れていきたいと思っています。また他業種の方と交流することで、自社の強みや特長を改めて認識できるようにもなりました。仕事に行き詰っても、社の先輩だけでなく他社の方にも相談でき勉強になっています」

  • 入居日にはWeWork専用のSNSアプリに記事を投稿。すぐに多数の返信があった

入居は2カ月と決めていたが、想定以上に同社のアクセラレータープログラムへの応募が集まり、延長も決めた。

「入居1カ月で約70社と面談を行い、効率良く面談を進められています。また入居企業同士のコミュニケーションも徐々に生まれ始め、同じ北海道に本社を置く広告代理店OTis(オーティス)新規事業部の林様とは情報交換を行うだけでなく、他の企業の方を紹介してもらうこともあります」

  • オーティス 林氏と情報交換を行う稲垣氏