その陣頭指揮を執っているのが戴社長だ。「戴社長は、いまどこにいるのかという質問をよくされるが、いまもASEANを中心に海外を飛びまわっている」と、戴社長自らが、海外に出向き、現地において、事業拡大の指揮を執っていることを明かす。鴻海流の経営手法で海外での事業拡大に挑んでいるところだ。

  • 決算発表会で質問を受ける野村副社長と、執行役員 管理統括本部 管理本部長 榊原聡氏

2つめは、2017年度実績で、IoTエレクトロデバイスが、特定顧客の需要に大きく影響されたように、この分野において、特定顧客からの影響を受けない体質への脱却が重要な鍵となる。これは、シャープだけでなく、鴻海グループ全体としての課題であり、成長戦略を推進する上でのバランス感がますます重要になるだろう。

市場環境の悪化を懸念

今回の決算発表では明るい材料が示され、着実に回復基調へと転じたことが示されたシャープだが、それでも、戴社長も危機感を持った経営を継続しているのは確かだ。4月6日付けで、社内イントラネットを通じて社員に向けて発信したメッセージでは、「2017年度第4四半期以降、市場環境は急変し、さらに日を追うごとに悪化しており、2018年度は極めて厳しい環境下での戦いを強いられることになる」とし、「現在の想定を上回る環境変化のなかでは、『攻め』に加えて、『守り』となる構造改革をさらに実行し、いかなる状況にあっても、安定的に収益を創出できる筋肉質な経営基盤を構築していくことが、引き続き重要になる」と語っていた。

そして、「このままでは中期経営計画が未達となりかねない」という厳しい見方も社員に示ししていた。今回の決算会見で、野村副社長は、「中期経営計画の1年目が順調に進捗したに過ぎない。ホップ、ステップ、ジャンプのホップが順調だっただけ。中期経営計画を完遂して復活といえる」と野村副社長は語る。

中期経営計画では、高い成長を見込んでいる。その中期経営計画の達成が復活の証だとすれば、その道筋は、まだ一歩目だ。