シャープは12月11日、1957年に同社初の冷蔵庫「HR-320」を生産開始して60周年となる今年、世界累計生産で6000万台を達成したと発表した。

シャープ 常務執行役員 健康・環境システム事業本部長の沖津 雅浩氏は、「シャープが白物家電事業に本格的に参入したのが1957年。冷蔵庫、洗濯機、掃除機の3つの製品を投入し、1958年には水冷式クーラーを発売した。シャープとして厳しい時期も経験したが、白物家電事業は利益を出すことにこだわり、研究開発も継続し、元気なシャープを表に出せるように努力してきた。こうした観点からも、今回の東証一部復帰に貢献している」と語る。

  • シャープ 常務執行役員 健康・環境システム事業本部長 沖津 雅浩氏

2000年~2007年頃までは、円高による収益の悪化や、低価格製品が需要の中心になるといった影響から事業部として苦難の歴史もあった。ただ、1980年代までの好調ぶり、そして2008年以降の右肩上がりの成長と、同社の収益を支える「優等生事業」であったのは確かだ。リーマンショックでさえ、白物家電事業はシャープ全体の業績へ悪影響を及ぼすことのない"強い体質"だった。

  • 1957年に発売した第1号冷蔵庫「HR-320」

その体質は、かつて同社が発信していた「目のつけどころがシャープ」というキャッチレーズを裏付けるような「シャープらしい」商品の数々によって支えられていた。

60周年を迎えた冷蔵庫の例では、1968年に冷却方式の主流となる「ファン式霜なし2ドア冷蔵庫」を発売。その後、1972年にはチルド室の先駆けとなる「フレッシュルーム」、1974年には独立した野菜室を搭載した「独立野菜室3ドア冷蔵庫」、1988年には、世界初となる左右開きを可能にした「どっちもドア」、2000年には、世界で初めて液晶インフォメーションパネルを搭載した冷蔵庫を発売するなど、独自性の強い製品を投入してきた。

一方で「ユニークな白物家電製品」もシャープのDNAと言っていい。お茶をたてることができる「お茶プレッソ」や、無水自動調理鍋の「ヘルシオホットクック」、天井設置型プラズマクラスターイオン発生機「ニオワンLEDプラス」などがそれに当たるが、意外にもこれらの製品は、当初計画の数倍の販売台数を記録するヒット製品となっている。

「家事負担の軽減」の時代から「便利なスマート家電」へ

沖津氏は、白物家電事業のこれまでの取り組みを振り返り、3つのフェーズにわける。最初は、1957年から1990年代までの時代で、白物家電の役割は「家事の負担を軽減する」ことであったと定義する。

シャープは、国内初の業務用電子レンジ「R-10」や、業界初の全自動クーラー「SFD-22H1」、国産初のターンテーブル式家庭用電子レンジ「R-600」、穴なし槽を採用した洗濯機「ES-BE65B」などを投入。さらに、先にも触れたように冷蔵庫においても、数々の業界初、国内初の製品を投入し、家事負担の軽減につなげてきた。

  • 第1号機の掃除機「SC-1」は、「ペッカー」の愛称を持っていた

  • 1957年に発売した洗濯機の「ES-163」

  • 1958年に発売した水冷式クーラー「RC-101」

第2フェーズは、2000年代~2011年までの期間で、ここでは「健康で快適な暮らしを実現する家電」が求められた。

2000年に発売したプラズマクラスターイオン搭載空気清浄機「FU-L40X」に端を発し、2004年のウォーターオーブンヘルシオ「AX-HC1」によって、独自技術であるプラズマクラスターイオンや過熱水蒸気技術を活用。新たな切り口で家電製品の提案を行った。2008年には組織名を「健康・環境システム事業本部」に改称しており、名実ともに「健康と環境を追求した白物家電製品」を投入していった時代だろう。

そして現在。2012年以降は、「AIoTで、我が家流に賢く成長し、便利なサービスも利用できるスマート家電」に力を入れる。

新たな時代の第1号製品だったのが、2012年に発売したココロエンジン搭載のロボット掃除機「RX-V100」だ。その後、2013年には無線LAN対応エアコン「AY-D40SX」やココロエンジン搭載洗濯機「ES-Z110」を投入し、2017年にはヘルシオホットクック「KN-HW24C」、冷蔵庫「SJ-GX55D/50D」、加湿空気清浄機「KI-HX75/HS70/HS50」といったAIoTに対応した製品を追加。COCORO+による提案を加速し、COCORO KITCHEN、COCORO AIRといった広がりを見せている。