"格安"な料金で人気を博し、大手キャリアからユーザーを奪って急成長しているMVNO。そうした中にあって、ハードからソフトまでを自社で手掛け、子供やシニアをターゲットにするなど、独自色を打ち出して販売拡大を進めているのが、カルチュア・コンビニエンス・クラブ傘下のトーンモバイルだ。同社があえて他社とは一線を画す戦略を取る理由はどこにあるのか。

CCC傘下ながら独自性の強いサービスで注目

ここ数年来、大手キャリアからネットワークを借りて、“格安”な月額料金でモバイル通信サービスを提供するMVNOが人気を獲得するようになった。最近では大手キャリアが、MVNOなど格安なサービスに対抗するため安価な料金プランを提供するようになったことからも、その影響の大きさを見て取ることができるだろう。

だがそうしたMVNOの中にあって、「スマートフォンが安く使える」というMVNOの王道の施策に力を入れるのではなく、独自の方針をもってサービス展開している企業もいくつか見られる。そのうちの1つとして挙げられるのが、レンタルビデオショップの「TSUTAYA」などで知られるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の傘下企業であるトーンモバイルだ。

CCC傘下のトーンモバイルが、MVNOとして展開する「TONE」は、他のMVNOとは大きく異なる戦略を取っている

実際、トーンモバイルがMVNOとして展開する「TONE」のサービス内容を見ると、他のMVNOと比べ大きく異なる戦略を取っていることが分かる。多くのMVNOはSIM、つまりネットワークのみを提供し、端末は別に購入してもらう、水平分離型の販売方法が主流だ。だがTONEはスマートフォンとネットワーク、サービスを一体で提供し、全てのサポートをトーンモバイルが請け負うなど、キャリアと同じ垂直統合型の販売手法をとっている。

通信料は月額1,000円と安いが、通信速度は500~600kbpsと低速で、動画の視聴やアプリのダウンロードをする時は別途高速通信ができるチケットを購入する必要があるという点も、独自性の強さを感じさせる。音声通話に関しても、通常の音声通話を利用するには別途料金を支払う必要があり、標準で用意されているIP電話の利用を推奨。IP電話では利用できない緊急通報に関しても、ソフトウェアで対応できる別の手段を用意している。

ハードウェアに関しても、トーンモバイルが提供するスマートフォンは基本的に1機種のみで、カラーもホワイトの1種類のみと選択の余地がない。しかも販売されるスマートフォンはトーンモバイルが独自に開発・調達したオリジナルモデルであり、採用するOSは標準的なAndroidながら、通常のAndroidでは実現できないさまざまな制御ができるよう、独自のミドルウェアを搭載するなど大幅なカスタマイズが施されたものとなっている。

TONEの新機種「m17」。富士通コネクテッドテクノロジーズが製造しているが、トーンモバイル独自のカスタマイズが施されているのが特徴となる