東芝の業績回復には課題が山積

原子力事業が、メモリ事業という成長事業を毀損する形になったとの指摘も出たが、メモリ事業を担当する成毛副社長は、「東芝全体の危機と受け止めて、これを全力で乗り切ることに注力したい」とする。

また、綱川社長は、「今回のことについては責任を感じている。投資家、ステイクホルダーに心配をかけている」としながらも、「自らの去就については、指名委員会に委ねる。3月末までは責任を持って遂行する」と語る。

債務超過を回避できれば、東芝が再建の最初のゴールとして設定した「特設注意銘柄」からの指定解除にもつながることになるだけに、東芝の経営層にとっては、この山場を何とか乗り切る必要がある。

だが、メモリ事業の分社化に伴う外部資本の導入だけで、債務超過を回避できるのかどうかは不明だ。

綱川社長は、「第3四半期の業績も確定していない。減損額も確定していない。外部資本導入による目標額も明らかにはできない」として、債務超過を回避できる手応えについては明言を避けた。

その一方で、「社会インフラは事業の柱であり、重要なものである。売却などは考えていない」としながらも、「今回の施策以外にも、株式や不動産の売却による資金捻出を進めている。取り得るすべての手段を講じる」と語る。

「今年はすべての事業を黒字化するという思いでやってきた。実際、テレビ事業以外のすべての事業が黒字であり、東芝が問題を抱えるなかで、従業員ががんばってくれたことには敬意を表している」と、綱川社長は業績の回復には自信をみせる。

これが、復活に向けた最後の山場になるのか。いつまで立っても膿が出し切れない東芝は、体質改善と財務基盤の強化の成果が出せず、成長戦略を打ち出せないままだ。

2月14日に打ち出す中期経営計画はどんな内容になるのか。トンネルを抜け出すのに、まだ多くの時間を要するのであれば、従業員のモチベーションが下がり、成長力が失われることになりかねない。