実質0円の事実上禁止はまだ逆風になっていない?

そうした逆風があるにもかかわらず、キャリアが好業績を上げているのは不思議なように見える。だが実は、少なくとも現在のところ、逆風と思われている要素の多くは、キャリアの業績にとって必ずしも逆風とはなっていない部分がある。

例えば端末の実質0円販売の事実上禁止措置は、キャリアにとっては端末の販売価格を上げざるを得ないため、端末数の販売数が減る要因となることから、一見不利になるように見える。だが一方で、割引に費やしてきた費用が必然的に抑えられることから、利益を高めることには貢献しているのだ。

例としてNTTドコモの、端末機器原価と代理店手数料の合計である「機器販売費用」を見ると、一昨年度の第2四半期にはプラス438億円、昨年度の第2四半期にはマイナス28億円であったのが、今回の決算ではマイナス269億円と劇的に下がっている。ここにはもちろん、端末の販売が減少して機器原価が下がった影響も含まれているのだが、2年間で700億円近く減少しているというのは、いかに端末の割引が減少し、それが利益の拡大に貢献しているかを見て取ることができるだろう。

端末の実質0円販売が全盛だった、NTTドコモの2014年度第2四半期決算の営業利益。機器販売関連費用は438億円に上っている

端末の実質0円販売が事実上禁止となった、2016年度第2四半期決算の営業利益。機器販売関連費用は269億円のマイナスと、大幅に減少していることが分かる

また、NTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏は、10月28日の決算説明会で「(総務省の)ガイドラインが出てすぐの頃は販売数が落ちたと思ったが、第2四半期からはほとんど計画通りになってきており、ものすごく影響を与えているということはない」と話している。iPhone 7/7 Plusの発売など季節的要因もあるだろうが、実質0円販売の事実上禁止による影響が、全てのキャリアに大きく出ているとは限らないようだ。

低価格サービスの台頭も、キャリアによっては必ずしも逆風となっているわけではない。例えばソフトバンクは、ワイモバイルブランドを展開することにより、他社から低価格を求めるユーザーを奪うことによって、メイン回線で利用するユーザーを増やしている。実際、ソフトバンクグループの決算短信を見ると、特にワイモバイルのスマートフォンの契約数が好調に推移したことから、契約者数の減少が著しいPHSやWi-Fiルーターなどを除く「主要回線」の純増数が約26万件増加したとしている。