難しかったラジオ番組の“共有”

現代の職場や学校において、前日のラジオを聴いたかどうかについて話している人はどのくらいいるのだろうか。深夜放送全盛期と比べるのは酷だとしても、ラジオについて話題にしている人はかなり減っているものとみられる。この状況に一石を投じるのがシェアラジオだ。

シェアラジオとは、ラジコの聴取画面に設置される「シェア」ボタンを押すことで、SNSで知り合いと番組を共有できる仕組み。タイムフリーとシェアラジオの組み合わせにより、話題になった過去の番組を後から知人同士で教えあうことが可能となる。ラジオ好きな人にとってみれば、番組の面白さを人に伝えるには聴いてもらうのが手っ取り早いのだが、録音したSDカードなどのメディアを知人に手渡すのはハードルが高い。これからはSNSで気軽に番組を共有できるわけだ。

ラジオに馴染みがなくても、ネットニュースなどで話題になった番組を、後から聴けるのなら聴いてみたいと考える人はいそう。それはタイムフリー聴取で可能になる。実際に聴いてみて面白ければ、シェアラジオで番組を拡散する人も現れるだろう。

民放連ラジオ委員会はシェアラジオを広める施策として、タイムフリー聴取が始まる10月11日から民放連加盟ラジオ101局でシェアラジオ特別番組「サントリー天然水 presents 宇多田ヒカルのファントーム・アワー」を放送予定。活動再開から間もない宇多田ヒカルさんを起用し、シェアラジオの認知度を高める意向だ。この番組は放送時間こそまちまちだが、AMとFMを問わず101局全てで放送する。これはラジオ界でもめったにない取り組みだ。

約2年半前、最後に出演したレギュラーラジオ番組の最終回で、「番組が放送されたあと一定期間ストリーミングでネットで聴けるとか(中略)そういうようなポジティブな変化が起きれば」とラジオのタイムフリー聴取実現に期待を示していた宇多田さん。特別番組はシェアラジオ普及のきっかけとなるか

タイムフリー化には紆余曲折

ラジコのタイムフリー化については以前から一部で話題となっていたが、対応は遅れていた。ラジオ番組には広告主、出演者(所属事務所)、レコード会社など多方面の権利者が存在しているので、その調整にはかなりの時間を要したようだ。

例えばレコード会社の場合を考えてみると、ラジオ番組が後から、何度でも聴けるようになることは、番組内でかかった曲が、実質的には聴き放題になることを意味する。これが無料サービスで始まることに抵抗があるのも無理はない。ラジコのタイムフリー聴取に3時間の聴取制限があり、何度でも繰り返して番組を聴けない仕組みになっているのは、さまざまな権利者が合意できるポイントを模索した結果なのだろう。