TBSラジオがポッドキャストから撤退する。ダウンロード数が増えれば増えるほど費用がかさむというポッドキャストの特徴を考えると、「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」や「笑福亭鶴瓶 日曜日のそれ」といった人気番組を配信しているニッポン放送も、かなり厳しい懐事情なのでは…。こんな心配を同局にぶつけてみると、返ってきたのは「デジタル配信事業を本放送に次ぐ収益の柱に育てたい」という意外な答えだった。

左からニッポン放送デジタルソリューション部の伊藤浩一副部長、金杉天斉氏、鳥谷規部長

TBSラジオがポッドキャスト撤退、ニッポン放送の受け止めは

まずはポッドキャストについて確認しておくと、このサービスはアップルのプラットフォームを利用して音声・動画コンテンツを配信する仕組みだ。配信者は自前でサーバーを用意する必要があるため、ダウンロード数が増えるとサーバー関連の費用がかさむ。人気番組を多数抱えていたTBSラジオが撤退した大きな理由もコストの問題だった。

TBSラジオのポッドキャスト撤退について、鳥谷氏は「スピード感がある」との感想を抱いたという。TBSラジオが自社のHPを改修し、インターネットラジオ「TBSラジオクラウド」を立ち上げ、ポッドキャスト撤退を発表した一連の流れが、鳥谷氏の目にはスピーディーな動きに映ったらしい。TBSラジオがインターネットラジオに導入予定の、ユーザー属性に合わせた音声広告配信手法も先進的な取り組みだと評価した。

ニッポン放送のポッドキャストは大丈夫?

ダウンロード数が月間1,500万回に達するニッポン放送のポッドキャストも、維持・管理には相当な費用が生じているはず。その点について伊藤氏に聞いてみると、「(ポッドキャストは)無料放送で経費も掛かっているが、ニッポン放送はデジタル配信ビジネス全体でみると利益が上がっているので、カバーできている」との答えが返ってきた。ポッドキャスト終了の予定もないようだ。

そもそもポッドキャストは、ラジオ本放送の面白さを多くの人に知ってもらいたいという目的で始めた取り組み。コストが掛かるのは織り込み済みだ。その役割は今後も「ずっと変わらずプロモーション」(伊藤氏)であり続けるという。

ポッドキャストはデジタル配信事業の一部に過ぎない。金杉氏は有料化や広告などでの収益化が難しいポッドキャストよりも、「自身でコントロールできる部分」、つまりは自前で運営する独自のデジタル配信事業に注力していきたいとの考えを示した。核となるのは同社が運営しているインターネットラジオ「ラジタル」だ。