e-Sportsがメディアで大きく取り扱われる起爆剤となった、東京アニメ・声優専門学校のアニメ総合制作科「e-Sports プロフェッショナルゲーマーワールド」にも触れておきたい。プロゲーマーというセンセーショナルな職業が印象深いが、この学科には「総合プロゲーマー専攻」のほか、「ゲーム実況・MC&声優専攻」「イベント&テクニカルスタッフ専攻」「ビジネス&宣伝プロモーション専攻」と計4つの専攻が用意されている。
以前より同校では、ゲームに関わる数々のイベントが開催されていた。これまで同校が培ってきたノウハウと、現役でe-Sportsに関わっている講師陣を生かし、これからのe-Sportsシーンを支える人材を総合的に育成するのが狙いだ。学校側は開校の意図について「アニメや声優といったビジネスを志す学生に、少しでも多くの出口を用意してあげたかった」と語る。
開校にあたっての反響は非常に大きく、資料請求の要望は1万を超えたという。また実際に学科を希望した生徒の数も、想定の5倍に達していると述べる。e-Sportsという市場への渇望と注目の高さが如実に現れた結果といえるだろう。この学科より輩出された卒業生が、e-Sportsをさらに広める役割を担っていくことを期待したい。
日本のe-Sports市場、今後の課題とは
草の根から始まり、多種多様な業種に影響を与えながら、ついに拡大を始めた日本のe-Sports市場。ファミリーコンピュータなどで初めてゲームに触れた世代も、いまや40代。国民の多くがゲームに親しんでいるだけに、ビデオゲーム競技を観戦することに抵抗のない人は多いと思われる。ほかのスポーツ同様、現役でプレイすることは難しくなっても、観戦という形でゲームを楽しむことができるのだ。一文化として根付いたビデオゲームの魅力をより広げ、また新たな興行の形を生み出すe-Sportsの存在は、ゲームに慣れ親しんだ世代にとって歓迎すべきものだろう。
一方で、その急拡大のスピードに対して、市場の構築が追い付いていない側面もみられる。ユーザーの熱意とチームやスポンサーの思惑、そして運営やメーカーの展望が複雑に絡み合った衝突がたびたび起こる現状は、期待が強いがゆえに発生している悲しいすれ違いといえるだろう。今後は、さらに明確なルールの確立や公正な組織作り、意識の向上などによってe-Sportsの基盤を安定させることが望まれる。日本にe-Sports文化が根付く日を心待ちに、まずはその動向をしっかりと見守っていきたい。
移ろいゆく日本のレジャー産業
●急拡大するe-Sports市場 - 日本のゲームシーンは新たな興行を呼び起こすか?【後編】
●急拡大するe-Sports市場 - 日本のゲームシーンは新たな興行を呼び起こすか?【前編】
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