2016年はVR元年になる ?

2016年は「VR(Virtual Reality)元年」といわれている。米Oculus VRが2012年に発表した「Oculus Rift」の事前予約が始まり、Microsoftも2016年第1四半期に「Microsoft HoloLens Development Edition」の発売を予定。先頃、東京ビッグサイトで開催された第3回ウェアラブルEXPOでも、多数のVR技術を活用したデバイスが披露された。もちろん日本の企業も指をくわえて見ているわけではない。東芝はメガネのレンズ上に情報を表示させる「Wearvue TG-1」を発表し、ソニーも2016年上期に「PlayStation VR」の発売を予定している。

2016年1月から事前予約を開始し、今春にはユーザーの手元に届く「Oculus Rift」。ちなみにOculus社は2014年3月にFacebookが買収した(同社資料より)

現実世界に3Dホログラムを重ね合わせてMR(Mixed Reality)を実現するMicrosoftの「Microsoft HoloLens」。2016年第1四半期に開発版が3,000ドルで発売する予定だ(同社オフィシャルサイトムービーより)

東芝のWearvue公式サイト。50gの軽量のリアル眼鏡型ウェアラブル端末から投映された情報を用いることで、フィールドサポートや倉庫・物流、警備、ヘルスケアなど広くビジネスの現場で使える。すでに予約が始まっている

「それは、誰も知らない Virtual Reality」。PlayStation VRの公式サイト。かぶると360度全方向を取り囲む3D空間が出現するという

ハードとソフトで800億ドル市場の予測も

VR市場についてはさまざまな意見が出ているが、直近の予測とゴールドマンサックスのアナリストであるHeather Bellini氏の予測を紹介したい。同氏は2025年までのVR市場規模が800億ドル(日本円にして約9兆円)まで成長する可能性が高い、と海外のニュースメディアに述べている。内訳としてハードウェア市場が450億ドル、ソフトウェア市場が350億ドルまで拡大する急成長産業として注目しているという。さらにVRおよび「AR(Augmented Reality: 拡張現実)」がビデオゲームやライブイベント、ビデオ視聴など9つの領域に広がり、なかでもゲーム市場は116億ドル規模になると予想した。このように世界が注目するVRとは何だろうか。

目の前の現実とCGをリアルタイムに合成し、「見るから体感するへ」を提唱するキヤノンの「MREAL」(同社の公式動画より抜粋)

一般的には「仮想現実」と訳されるものの、"実体は存在しないが本質的もしくは効果として現実である"と定義するのが正しい、と日本バーチャルリアリティ学会は説明している。前述したARのほかにも「MR(Mixed Reality: 複合現実)」」というキーワードも用いられるが、そもそもARは現実世界に情報を付加する「Google Glass」や前述のWearvue TG-1が当てはまり、VRはコンピューターが作り出す世界に自身が没入するタイプでRiftやPlayStation VRが相当。そして、MRはARとVR両方の掛け合わせたもので、HoloLensやキヤノンの「MREAL(エムリアル)」が代表的だ。

VRが持つ没入感やフィードバックがUX(User Experience: ユーザー体験)に大きな変化をもたらし、これまでの枠を越えたゲームやサービスが提供可能になるのは想像に難しくないが、問題となるのはその価格だ。

例えばOculus Riftはディスプレイやマイクなどを内蔵するヘッドセット、IRカメラ、コントローラーなどがセットで599ドル。日本までの送料を追加すると8万円を超える。さらにハイスペックなPC(そして対応するVRコンテンツ)を用意しなければならない。Oculus VRは「Oculus Ready PC」として、ASUSやALIENWAREなどのPCを推奨しているが、これらも約1,000ドル(約12万円)という価格設定となる。また、Microsoft HoloLensも開発者向けながらも3,000ドル(約36万円)。まだまだコンシューマーが気軽に購入するようなレベルではない。