2015年10月1日、Instagramがセルフサーブ型広告の提供を全面解禁し、多くの企業・マーケターの注目を集めた。昨今では、Instagramを活用したマーケティングに取り組む事例も耳にするようになった。

日本コカ・コーラの天然水ブランド「い・ろ・は・す」も、6月からInstagramの運用を開始した。11月には、水源の一つとなる山梨県・白州で撮影した動画を、InstagramとYouTubeで公開するなど利用を加速させている。

しかし、当然ではあるが、い・ろ・は・すにとってもInstagram上での動画公開は初めての取り組み。TwitterやFacebookを積極的に活用する一方で、Instagramについてはまだ、手探り・様子見という企業はほかにも多いのではないか。

今回、い・ろ・は・すのInstagram活用に関して、同ブランドの戦略作りを担うマーケティング本部 ハイドレーションカテゴリー ウォーターチーム マネージャーの田中学氏に話を伺った。

日本コカ・コーラ マーケティング本部 ハイドレーションカテゴリー ウォーターチーム マネージャー 田中学氏

Chobani、BURBERRY ―― 海外成功事例を見てInstagramを開始

田中氏 : そもそも日本の飲料水ブランドに対し、「(海外ブランドと比べて)良い意味で真面目だけど、あまり面白味がない」といった印象を持っている方は少なくありません。「日本には楽しくて活動的な印象の飲料水ブランドはない」「軟水だとどこも似たようなもの」という雰囲気が根本にあるような気がしました。

そんな背景があって、今年のい・ろ・は・すでは、水そのものの価値を伝える取り組みを始めました。今まで消費者の方が一番に連想するイメージは「い・ろ・は・すといえば、潰せるボトル」だったと思いますが、それだけではないことを伝えようと試みたのです。

とはいえ、水を真面目に語っても決して面白くはありませんし、消費者に求められるコンテンツにはなりません。ですので、「水で楽しいことをしよう!」というのが出発点にありました。

以前、い・ろ・は・すを含め、さまざまな飲料水ブランドに抱くイメージを調査したことがあります。「学校の同じクラスにいたらどんなタイプだと思う?」と尋ねると、い・ろ・は・すには「新しいことや楽しいことをしてくれそう」といった回答が寄せられたんです。

そこで改めて、人々がブランドを買う理由には、ブランドの世界観が好きだったり、一緒に過ごしたかったり、といった思いがあるのだと再確認しました。もちろん機能や違いをわかって選んでいる方もいますが、い・ろ・は・すでは「共に過ごしたいブランド」としてイメージを打ち出せたらと思いました。

――― そのイメージを伝えるツールとして、Instagramを活用した理由は何ですか?

どうすれば水の楽しさ、面白さが伝わるか考えたとき、文字で説明するのではなく、イメージで伝えるのが適切ではないかと考えたからです。ブランドのイメージや世界観を伝えることができるプラットフォームは何かといろいろと模索する中、Instagramを活用した海外の優れた事例をいくつか目にしたんです。

1つ目は、ギリシャヨーグルトブランドの「Chobani(チョバーニ)」。食べ物を"真上"から撮影するスタイルを広めた立役者です。「朝食がお洒落になる」といった見せ方をすることで、ブランドイメージ強化につながっています。

2つ目は、ファッションブランド「BURBERRY(バーバリー)」です。同社は、中国で偽物が出回ったことで、一時期イメージが低下しつつあったようです。しかし、Instagramを活用してロンドンを連想させる洗練されたビジュアルを発信し、結果としてイメージアップに成功したといえるでしょう。

これらの例を参考に、私たちい・ろ・は・すは「水の変わった側面のほか、きれいで面白いイメージを伝えること」を目指して、今年6月にInstagramアカウントを開設し、情報発信を始めました。