既報の通り、米AMDは19日(現地時間)にデスクトップ向けのミドルレンジGPU「Radeon R9 380X」を発表した。すでにいくつかのメーカーから搭載カードの発売がアナウンスされているが、税別で3万円台半ばから4万円台前半という価格となるようだ。今回も非常に短期間ではあるが、試用する機会を得たので、パフォーマンスなどを含めて紹介したい。

Radeon R9 380X

隙間を狙ったポジショニング

既存のRadeon R9/R7シリーズと同様に、GCNアーキテクチャベースのGPUで、製造プロセスは28nm。2,048基のStream Processorを備え、256bit接続の4GB GDDR5メモリを搭載する。メモリのメモリ帯域幅は最大182.4GB/sで、演算性能は3.97TFLOPsに達する。補助電源は6ピン×2で、Typical Board Powerは190W。

Radeon R9 300シリーズとしては、「Radeon R9 390X」「Radeon R9 390」「Radeon R9 380」がすでに販売中だが、スペック面では「Radeon R9 390」と「Radeon R9 380」の間に位置する製品となる。スペックを見ると分かる通り、Radeon R9 390と380ではかなり差があり、ここに生じた隙間を埋めるべく、Radeon R9 380Xが用意されたものと思われる。

■既存モデルとのスペック比較
モデル Radeon R9 390 Radeon R9 380X Radeon R9 380
製造プロセス 28nm
Stream Processor 2,560基 2,048基 1,792基
動作クロック 最大1,000MHz 最大970MHz 最大970MHz
メモリ GDDR5 8GB GDDR5 4GB GDDR5 4GB
メモリインタフェース 512bit 256bit 256bit
メモリ帯域幅 384GB/s 182.4GB/s 182.4GB/s
補助電源 8ピン+6ピン 6ピン×2 6ピン×2

"ミドルレンジに生じた隙間"はAMDだけに限った話ではない。NVIDIAのラインナップを見ると、GeForce GTX 960とGTX 970でパフォーマンス・価格ともに開きがある。Radeon R9 380Xは、ここの隙間も狙っている。

■競合とのスペック比較
モデル GeForce GTX 970 GeForce GTX 960
アーキテクチャ 第2世代Maxwell
ベースコア GM204 GM206
製造プロセス 28nm
CUDAコア数 1664基 1024基
GPUベースクロック 1,050MHz 1,126MHz
GPUブーストクロック 1,178MHz 1,178MHz
メモリ 4GB GDDR5 2GB GDDR5
メモリインタフェース 256bit 128bit
補助電源ピン 6ピン×2 6ピン×1

製品のポジショニング。2013年発表のRadeon R7 270やGeForce GTX 760比で最大2倍の性能向上を実現しており、これらのリプレースとしても適しているという

1440pでのゲームプレイを見据えた製品

さて、Radeon R9 380XやRadeon R9 380は、1080pから1440p(2560×1440)でのゲームプレイを想定した製品だ。ただし、最高設定(Ultra)ではなく、手前の"High"設定で快適にプレイすることを目指しているようだ。「Grand Theft Auto V」や「Battlefield Hardline」といったタイトルにおいて、1080pで70fps以上、1440pで50fps以上のゲームプレイを可能にするという。

Radeon R9 380X/380は1440pでのゲームプレイを想定。1440pでのプレイしたいというニーズがそこまであるかは疑問だ

これらを"High"設定でプレイした場合、1080pで70fps以上、1440pで50fps以上を実現するという

このほか、既存のRadeon R9 300シリーズと同様にDirectX 12やVulkan、MantleといったAPIをサポートするほか、AMDのディスプレイ表示技術「FreeSync Support」、フレームレートを一定以下にすることで電力消費を抑える「Frame Rate Targeting Control」(FRTC)、仮想的に大きな画面サイズで映像を描画し、実際に使っているディスプレイ解像度にダウンスケールすることで、映像の品質を改善する「VIRTUAL SUPER RESOLUTION」(VSR)といった機能ももちろん利用できる。