IntelがCOMPUTEX TAIPEI 2026で発表したハンドヘルドPC向けプロセッサ「Arc G3」シリーズについて、実際にその搭載デバイスに触れるとともに、同社 上席副社長 兼 クライアント事業本部長のJim Johnson氏、ならびにクライアント事業部長のDan Rogers氏に詳細を伺う機会を得た。携帯ゲーミング市場のゲームチェンジャーになる可能性を秘めたArc G3の詳細をお届けする。
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Arc G3について、Intel幹部のJim Johnson氏(写真右)とDan Rogers氏(写真左)に詳細を伺う機会を得た。写真はCOMPUTEX TAIPEI 2026が開催された台湾・台北市内のホテルにて
11時間プレイできるArc G3マシン、実機も体験
最初にArc G3の概要をまとめる。まずは市場投入の時期だが、既にチップの量産を開始しており、今月中には搭載デバイスのリリースがはじまる予定だ。ラインナップには現時点で「Arc G3」と「Arc G3 EXTREME」の2モデルがあり、それぞれのスペックについては以下の表の通り。
| モデル | Arc G3 | Arc G3 EXTREME |
|---|---|---|
| 製造技術 | Intel 18A | Intel 18A |
| コア数 | 14 (Pコア×2、Eコア×8、LP Eコア×4) | 14 (Pコア×2、Eコア×8、LP Eコア×4) |
| 動作周波数 | ターボ時最大4.6GHz | ターボ時最大4.7GHz |
| スマートキャッシュ | 12MB | 12MB |
| PBP (Processor Base Power) | 25W | 25W |
| MTP (Maximum Turbo Power) | 80W | 80W |
| Minimum Assured Power | 15W | 15W |
| Configurable TDP Range | 8~30W | 8~30W |
| 対応メモリ | 最大でLPDDR5X 8533 MT/s、容量96GB | 最大でLPDDR5X 8533 MT/s、容量96GB |
| GPU | Intel Arc B370 | Intel Arc B390 |
| Xeコア数 | 10 | 12 |
| GPUクロック | 最大2.2GHz | 最大2.3GHz |
| GPU TOPS | 90TOPS (Int8) | 113TOPS (Int8) |
| レイ・トレーシング | 対応 | 対応 |
| NPU TOPS | 46TOPS (Int8) | 46TOPS (Int8) |
Arc G3はIntel最新の半導体製造技術、Intel 18Aプロセスによるチップであり、Panther Lake世代のCore Ultra Series 3をベースに、GPU優先でPコアやI/Oポートは規模を縮小したようなスペックとなっている。Core Ultra Series 3の時点で、もともと電力効率の良さを特徴としているが、Arc G3では、GPUは据え置きつつ、さらに省電力寄りにバランスを調整したようなかっこうだ。コア数だけでなく、電源管理やソフトウェア面でもハンドヘルドPC向けの最適化がされているとのこと。Panther Lake同等の機能を持つので、Wi-Fi 7 R2やBluetooth 6、40GbpsのThunderbolt 4が使用できる。


Arc G3は簡単にいえば、「GPUはCore Ultra Series 3の最上位で、CPUとI/Oは省電力寄りにし、さらに電源管理を最適化した」もの。Intel 18Aベースのタイルアーキテクチャが柔軟なチップ設計を可能にしている成果と見ることもできるだろう
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左がArc G3で、右がPanther Lakeのチップ。どちらもBGAパッケージで、公開情報ではサイズはともに50mm×25mmとされているのだが、どうも大きさが違うように見える。「EXTREME」かどうかで違う可能性もあるが、正確なところは追って取材したい
性能面では、ゲームベンチマークにて競合比で最大42%高速としているほか、バッテリー駆動時間も11時間のゲームプレイが可能だとしている。バッテリー駆動時間を伸ばすために、先にも述べた電力管理の工夫が多く盛り込まれており、CPUとGPU間の電力供給の最適化や、GPU動作の優先順位付けを行う新たなアルゴリズムの採用、省電力動作時のPコアへの電力供給の完全カットなどが例として挙げられていた。
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電力管理の工夫の例。CPUとGPU間の電力供給の最適化することで、電力を奪い合いで性能が不安定になることを防ぎ、電力効率やゲーム体験を改善している
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Forza Horizon 6とGTA Vで約6時間、Team Fortress 2で約12時間など、バッテリー駆動でも長時間のゲームプレイが可能に
そして要となるGPUのArc B390とB370だが、Core Ultra Series 3と遜色ない、Battlemage世代の統合GPUであり、なのでもちろん、XeSS 3の各技術、「XeSS スーパー・レゾリューション」「XeSS マルチフレーム・ジェネレーション」「Xe ロー・レイテンシー」をすべて使用できる。デバイスにおけるドライバサポートについても、発売当日のDay0から提供できる見通しだという。
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XeSS 3の超解像技術「XeSS スーパー・レゾリューション」に対応。AIベースのアップスケーリング機能で、見た目を維持しつつ描画速度を向上できる。「Xe ロー・レイテンシー」は、キー入力に対する応答を高速化する技術。シビアな入力が求められるアクションゲームなどで威力を発揮するだろう
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XeSS マルチフレーム・ジェネレーション (XeSS-MFG)のデモンストレーション。『バットマン:アーカム・ナイト』を使って、ネイティブで30FPS前後のところ、XeSS 3有効で130FPS前後までフレームレートが跳ね上がる様子を確認できた


せっかくなので、筆者は『Forza Horizon 6』を重点的にプレイしてみている。今回のForzaは日本舞台ということで、出たばかりだが、さっそく話題のタイトルだ。榛名の峠を攻めてもいいが、ラジオを聞きながら都内を流すだけでも非常に楽しい。映像は美しくリアルで、動作もなめらかだが、このタイトルはやはりハンコン&大画面でやりたくなる(が、そうなると据え置きでいい気もしてくる)
成長著しい携帯ゲーミング市場にはチャンスがある
Intelが、Arc G3という、いわゆる携帯ゲーム機の専用チップを出す背景には、PCゲーム市場の全体の成長率と比べても、この分野の成長余地が大きいという分析が存在している。同社は、2029年までに世界でPCゲーマーが10億人に達するという予測を持っており、そのPCゲーマーのうち34%が、ハンドヘルドを含む複数のデバイスでゲームをプレイしていて、このマルチデバイスでのゲームプレイの傾向は年々割合が増しているとされる。
Dan Rogers氏は、既存のPCや据え置きゲーム機という競合があったとしても、今後、携帯型のゲーミングPCには著しい成長機会が見込めるからこそ、Arc G3をはじめIntelはこの分野への投資を続けるのだと説明する。
この分野でもAMDやNVIDIAは強力なライバルとなる。Rogers氏はIntelの強みを、「x86 Windowsのゲーム体験を、低消費電力でフルに提供できること」と述べ、これは現在、「他のどの製品でも実現できていない特長だ」とアピールする。ARMベースのプラットフォームとの競争も激化しているが、異なるプラットフォームでの開発の混乱を指摘し、Intelがx86ベースのイノベーションを継続し、同社が得意とする標準化されたプラットフォームによるエコシステムを携帯ゲーム機の分野でも確立することが、優位性を高めることになると説明する。
Jim Johnson氏はエコシステムの優位性の証左として、Inteが既にパートナー企業と、Core Ultra Series 3で400種類以上のPC設計を実現しており、エッジAI向けでさらに多くのデバイス設計に取り組んでおり、大きな勢いを得ているという実績を述べる。同氏は重ねて、パートナー企業は、このような大きな規模でデバイスを網羅できるIntelのエコシステムを頼りにしているといい、Arc G3でも同様にパートナー企業の支持が得られる見通しを持っている(つまりArc G3搭載デバイスが市場を占めていく自信がある)ことを示唆する。
一方で、半導体不足は度々問題となる。現在はメモリ不足が顕著だが、パソコン用のCPUについても、Intelのパートナー企業からであっても、「Intelのチップ供給が不足している」と言う声を聞くことがある。今回のCOMPUTEX期間中に限っても、筆者が実際に会話をしたPCメーカーの担当者から、Intelチップの供給への不満の声を聞くことがあった。
Johnson氏は、目下、Intelの半導体チップへの需要が供給を上回っていることを認めるが、「生産能力を積極的に増強している。メモリ供給の課題にも、パートナー企業との連絡を密に、DDR5、LPDDR5、DDR4と幅広いメモリをサポートできるよう、18A半導体に限らない多様な製品ポートフォリオを提供することによる対応も進めている」と述べる。同氏は、「データセンターへの注力は大きいものの、クライアントPC業界は前例のないイノベーションと競争に直面しており、Intelはこれをチャンスと捉えている。(半導体供給の体制はじめ)クライアントPC分野への取り組みを、Intelはかつてないほど強化しているところだ」と、対応方針を説明する。
半導体の供給が需要に見合うだけ大規模に展開できるのかとう懸念は、特に近年の同社にとっては課題になりがちだ。CEOのLip-Bu Tan氏はかねてよりIntel 18Aによる半導体製造の立ち上がりが順調であると強調しているが、今回のCOMPUTEXでも、Intel 18Aプロセスの歩留まり向上による製品の広がりのひとつとして、Arc G3シリーズの投入に言及していた。
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Jim Johnson氏。筆者はXeon 6+への需要でIntel 18Aの供給がひっ迫しそうな懸念を持っていたのだが、Intel 18A歩留まり向上や、製造ラインへの投資、他のノードの活用などで供給面を強化していることを説明
Arc G3シリーズを搭載するハンドヘルドタイプのゲーミングPCは、この記事中でも紹介したMSIの「Claw 8 EX AI+」などが最初の製品として今月中に市場投入され、追って数カ月のうちにもパートナー企業からのリリースが相次ぐとされる。年間を通して多くの製品の投入計画があるという。製品レベルのバッテリーパフォーマンスや、具体的な価格帯などは、各社のリリースで明らかになっていくだろう。
最後に余談として、Arc G3ではBattlemage世代のGPUを搭載しているが、Panther Lakeで規模を拡張したとはいえ、設計はLunar Lake時代から続くものであり、そろそろ次の展開が気になるところだ。これについてRogers氏、Johnson氏ともに「ここでは未定としか答えられない」というものの、Rogers氏は「今回のArc G3で明らかなように、IntelはGPUをとても重視している。GPUは重要な投資項目であり、常に最適な製品を模索している」と話していた。
















