日本AMDは24日、秋葉原UDXで同社の最新GPU「AMD Radeon R9 Fury X」の発売を記念したイベント「Feel, Fear, Fury」を開催した。これに合わせて記者説明会を開催し、Radeon R9 Furyと、Radeon R9/R7 300シリーズの製品概要を紹介した。

イベントには米AMD本社からチーフ・ゲーミング・サイエンティストを務めるリチャード・ハディー氏と、デスクトップ向けGPUのプロダクトマネージャーのデヴォン・ネケチャク氏が来日し、同社の最新GPUを紹介した。

DirectX 12対応をアピール

米AMD チーフ・ゲーミング・サイエンティスト リチャード・ハディー氏

ハディー氏は、Radeon R9 Furyと、Radeon R9/R7 300シリーズについて「PCゲームの新しい時代に向けて設計された製品」と説明する。次世代に向けた特徴としてあげられたのが、DirectX 12への対応だ。

Radeon R9 Furyと、Radeon R9/R7 300シリーズでは、「Multi-Threaded Command Buffer Recording」「Async Shaders(非同期シェーダー)」「Explicit Multi-Adapter」をサポートする。

いずれも性能向上につながる技術で、「Multi-Threaded Command Buffer Recording」は、マルチコアCPUのパフォーマンスを最大限に引き出すとともに、ワット当たりのパフォーマンスが改善するという。「Async Shaders」については、VR向け技術「LiquidVR」の発表時にも解説があったが、GraphicとCompute、Copyの各タスクを並列に実行できる仕組みだ。これによりGPUを効率よく活用でき、パフォーマンスの向上につながる。「Explicit Multi-Adapter」は異なるGPUを組み合わせて活用するもので、マルチGPUでのパフォーマンス向上の寄与するという。

Windows 10のローンチが2015年7月29日に決まり、DirectX 12の登場も間近に迫る

Multi-Threaded Command Buffer Recording

Async Shaders

Explicit Multi-Adapter

Radeon R9/R7 300シリーズは5モデルをラインナップ

米AMD デスクトップ向けGPUのプロダクトマネージャーのデヴォン・ネケチャク氏

続いてネケチャク氏がRadeon R9/R7 300シリーズの紹介を行った。まずRadeon R7 300シリーズは、Radeon R7 360とRadeon R7 370をそろえる。この2モデルは「最も人気のあるオンラインゲームに向けた製品」と位置付ける。

E3でのプレゼンテーションでは、"e-sports"についての言及もあったので、例えばDOTA2やLeague of Legendsといったタイトルを年頭にいれたモデルだろう。どちらも60fps/1080pのディスプレイでゲームプレイを想定しているが、Radeon R7 370はよりGPUのパフォーマンスが必要なゲームに向けたGPUだという。

1080pでのゲームプレイに向けたRadeon R7 300シリーズ

一方で、最新のゲームをより高い解像度でプレイしたいというユーザーに向けられた製品がRadeon R9 300シリーズだ。Radeon R9 380、Radeon R9 390、Radeon R9 390Xの3モデルをそろえる。

このうち、Radeon R9 380は144Hz/1440pのディスプレイで、Radeon R9 390とRadeon R9 390Xは4Kディスプレイでのゲームプレイを想定した製品だという。

1440pでのゲームプレイに向けたRadeon R9 380

Radeon R9 390/390Xはその先の4Kでのゲームプレイを想定する

将来のゲームを見据えて開発された"Fiji"

Radeon R9/R7 300シリーズに続いて、Radeon R9 Fury Xに採用された"Fiji"チップが紹介された。「現在のゲームに関する需要については、Radeon R9 390やRadeon R9 390Xで満たせるかもしれないが、VRや最高設定での4Kゲーミングといった将来のゲームに必要なのが"Fiji"だ」とハディー氏はコメント。

"Fiji"チップを掲げるネケチャク氏

"Fiji"チップ

チップの裏側。GDDR5対応のGPUと比べてピン密度は減っているという

"Fiji"の最大の特徴は広帯域メモリHBM(High Bandwidth Memory)の採用だ。HBMはDRAMダイを積層したもので、インターポーザーを介してGPUと接続する。メモリのバス幅は4,096bitと従来のGDDR5と桁外れでその分、メモリクロックを下げることができる。さらにGPUとグラフィックスメモリを同一パッケージに収めることでカード自体の小型化も実現できる。

HBMの構造。DRAMダイを4層に重ねている。GPUとはシリコンインターポーザーを介して接続する。Fijiに搭載するHBMは第1世代で積層したメモリチップ当たりの容量は1GB。Fijiではこれを4枚搭載するので、合計の容量は4GB

HBMを使うことでGDDR5に比べて実装面積も削減できる

向かって左側が従来の基板、右側がRadeon R9 Fury Xの基板だ。かなりコンパクトになっている

GDDR5とHBMの比較、メモリのバス幅と帯域幅、メモリクロックが大きく異なる

"Fiji"を採用した製品として「Radeon R9 Fury X」のほか、「Radeon R9 Fury」「Radeon R9 Nano」「dual "Fiji"(名称不明)」の合計4モデルが投入される。「Radeon R9 Fury X」は冷却に水冷ユニットを採用したハイエンドモデル。「Radeon R9 Fury」は空冷モデル、「Radeon R9 Nano」は6インチのコンパクトモデル、「dual "Fiji"(名称不明)」はその名の通り、2つの"Fiji"チップを搭載したデュアルGPUモデルとなっている。

Fiji搭載製品は4モデル投入予定だ

Fiji搭載製品の第1弾は「Radeon R9 Fury X」。ハイエンドカードながら7.5インチとコンパクトな基盤だ

冷却には水冷ユニットを採用する。Radeon R9 Fury XのTDPは275Wだが、この水冷ユニットは500Wサイズも冷却できる性能を備える

Radeon R9 Fury Xとdual "Fiji"の基板

説明会では、「Radeon R9 Nano」についても軽く説明があった。「Radeon R9 Nano」はHBMの採用による基板の小型化を最大限に活用したモデルといえる。詳細なスペックは公開されていないが、小型モデルながら「エンスージアスト向け」という位置付けだ。ネケチャク氏によると「Radeon R9 290Xよりも高いパフォーマンスを備えながら、カードサイズと消費電力は半分くらいに抑えられている」という。

「Radeon R9 Nano」。「エンスージアスト向け」という位置付けながら6インチとコンパクトな製品となっている

具体的なスペックは公開されていないが、Radeon R9 290Xよりも高い性能を備えるという

小型PC「Project Quantum」も紹介

説明会では小型PC「Project Quantum」にも言及した。E3のイベントでも言及があったが、「Project Quantum」はMini-ITXに対応した250mm×250mmの筐体を採用する。容量8Lのコンパクトサイズながら、2つのFijiチップを搭載したハイエンド仕様だという。

「Project Quantum」。E3での発表以来、かなりのパートナーから販売したいという引き合いがあるという

「HBMはこれまでのアーキテクチャとは異なる。世界を変えるほどの技術だ」とハディー氏。AMDでは今後、HBMをすべての製品セグメントで活用する方針で、ノートPCやサーバ分野でも利用していくとしている。

会場には「Radeon R9 Fury X」を使った展示も

会場には「Radeon R9 Fury X」を搭載したPCによるデモや、各カードベンダからRadeon R9/R7 300シリーズ搭載製品の展示も行われた。

マウスコンピューターが開発を表明した「LITTLEGEAR」とOculus Riftの最新プロトタイプ「Crescent Bay」を使ったVRの体験コーナー

ディスプレイに取り付けたセンサで頭の動きをトラッキングする

センサは後方にも搭載する

デルの5Kディスプレイを使ったデモ

2系統のDisplayPortから出力する

3枚のFreeSYNC対応ディスプレイを使ったデモ