米Appleは、年内に8500~9000万台のiPhoneを製造する旨の通達をサプライヤらに行っていると、米Wall Street Journalは7月8日(米国時間)にサプライヤ筋の話として伝えている。画面サイズは現行モデルと同じ4.7インチと5.5インチの2種類で、解像度も現状維持となる。またカラーバリエーションは既存のシルバー、ゴールド、スペースグレイに加えて4色目の新色モデルが追加される見込みだという。

年内のiPhone製造数は9000万台に達する可能性

WSJによれば、昨年同時期の発注台数は7000~8000万台で、年内のiPhone製造数が9000万台、昨年が8000万台であれば、約13%の伸びとなる。8500~9000万台はもちろん過去最大のiPhone発注数となるが、13%の増加率は過去と比較すると、その数値が持つ意味も見えてくる。

多少誤差はあるものの、年内を目標に発注されるiPhoneの多くは、やはり年内に販売され、Appleの会計年度でいう第1四半期(10~12月期)の業績にほぼそのまま反映される。例えば、WSJが伝える昨年2014年内の発注数は7000~8000万台だが、2015年第1四半期(2014年10~12月期)の決算でAppleが発表したiPhone販売台数は7450万台だった。Apple側も年内の販売台数を想定して、ほぼ同水準の発注をかけているとみられる。

2014年第1四半期(2013年10~12月期)でのiPhone販売台数は5100万台2013年第1四半期(2012年10~12月期)でのiPhone販売台数は4780万台となっている。2012年10~12月の四半期の販売台数から翌年2013年同四半期への伸び率は7%なのに対し、2013年から2014年への伸び率は46%と大きく伸ばしている。この2014年での大幅な躍進は、中国市場での販売好調が後押ししたといわれている。

その意味では、2015年発注分の伸びしろである13%という数字はやや低めで、どちらかといえば控え目な需要予測といえるだろう。要因としては、すでに中国最大手の中国移動通信(China Mobile)での取り扱い開始も果たし、全体に大きな拡大要因がないことが理由だと考えられる。

一方で、iPhoneが主力とするハイエンドのスマートフォン市場は横ばいまたは微減の傾向が出つつあり、今年は特に経済危機の表面化で2015年後半から来年2016年にかけて、特にハイエンド市場の動向が読みにくくなりつつある。こうしたやや厳しい情勢のなか、AppleがiPhone需要予測を13%上積みしてきたのはチャレンジな部分も大きいと思われる。このあたりに留意しつつ、2016年1月後半にも発表される同社の2016年度第1四半期決算の動向に注目してほしい。