ダイソンの"羽根のない扇風機"「Dyson Coolファン」の新製品が3月7日、発表された。4月30日に全国の家電量販店など小売店で発売される。

同製品は「エアマルチプライア―」として2009年11月に登場。吸い込んだ空気を15倍の風量で送風する仕組みで、羽根で風を起こして送風するといった従来の扇風機の常識を覆した商品として、話題と人気を集めた。その後、ラインナップの拡充やファンヒーター搭載の商品などを市場投入し、羽根のない扇風機の元祖として消費者の認知も定着した商品だ。

今回、発表された新製品はこれまで弱点とされていた運転音の問題を改善。全体のデザインはこれまでとほぼ同じながら、モーター等を搭載する駆動部の設計を大幅に改良し、騒音値を従来モデルの75%カットした。

従来機AM01(左)と新製品の比較。外側から見たデザインはほとんど変わらない

大幅な静音化に寄与したのは、内部に設けた「ヘルムホルツ式空洞」。高品位なスピーカーや自動車の排気口に利用されている技術で、発生したノイズが空洞内に入ることで変動圧力が作用して中和され、本体内に吸収されるという仕組みだ。この原理を応用し、モーター部で発生した騒音を内部で捉えて分散させているのだ

また、騒音の発生源となる乱気流の発生を抑えるため、空気の流入経路を再設計。ディフューザー(空気の吹き出し器具)で、空気の流れを2つの経路に分けて制御できる仕様に変更し、空気の流れをスムーズにして乱気流の抑制が図られている。

【左】新製品のカットモデル 【右】カットモデルの新旧比較(左が新製品)。空洞部分のほか、ディフューザー、送風部にあたるループ部分の隙間も設計を改良し、気流を最適化

さらに、このような騒音低減技術により、消費電力量の削減にも成功。気流を整えたことにより送風が効率化し、DCモーターの回転数を減らすことも可能になったことから、風量を維持したまま消費電力の低減につながったとしている。最小消費電力は、テーブルタイプの「AM06」で3W、タワータイプの「AM07」で4W、最大値もそれぞれ21W、52Wとトップクラスの低消費電力となった。

その他の変更点は、「スリープタイマー」機能を搭載。15分から9時間の範囲で自動電源オフが設定できる。また、付属のリモコンでの操作も可能になった。

付属のリモコン。マグネットで本体ループ部分に直接接着できる

従来モデルでもパーフェクトに近かった

デザインエンジニアのマーティン・ピーク氏

同日開催された記者発表会には、同社デザインエンジニアのマーティン・ピーク氏が登壇。「新製品は見た目はAM01(従来機種)とまったく変わっていない。それは既にパーフェクトに近いと考えていたから。日本でも商品のパフォーマンスについては非常に評価を受けていたが、音についてはフィードバックがあった。音の面からの品質向上に注力し、68人のエンジニアが3年開発に携わった」と製品改良への熱意と自信を語った。

また、「でんじろう先生」としてメディアなどで科学の解説やパフォーマンスを行う米村でんじろう氏の一番弟子として活動する「米村でんじろうサイエンスプロダクション」のチャーリー西村氏が登場。今回の新製品に応用された音の「共鳴」と「共振」の原理を解説するパフォーマンスも行われた。

西村氏は「ダイソンが考えたのは、音を音で消すという方法だ」と前置きし、「そこで生まれたのがこの空洞」とコメント。その上で、「ただし、空洞は消したい音によって適したサイズや形があり、ダイソンの新製品は計算し尽くされた空洞だ」と、科学の原理に根差して改良された新製品を評価した。質疑応答の際、ピーク氏も「音の周波によって最適な仕様は異なるが、今回は一番大きな音に合わせて改良した」と付け加えた。

会場では、米村でんじろうサイエンスプロダクションのチャーリー西村氏による、新製品の静音化技術につながる音の原理を理科の実験的に解説するデモンストレーションが行われた

ちなみに、運転音や騒音レベルを測るには、一般的にはdB(デシベル)で表記されることが多い。だが今回、同社は静音化を謳いながらも、その数値を明らかにしていない。これに対しては「音のエネルギー量(W)で比較して、従来機よりも75%カットしている。日本国内で一般に用いられるデシベル数は、条件において一定の測定基準がないため、客観的なデータが得られないため、採用していない」と説明した。

新旧の運転音を比較するデモンストレーション

新製品は「AM06 テーブルファン 300mm」(右)と「AM07 タワーファン」(左)がラインナップされる

新製品として発表されたラインナップは、「AM06 テーブルファン 300mm」と、「AM07 タワーファン」の2機種。本体サイズ/重量は、AM06が552(H)×356(W)×147(D)mm/1.83kg、AM07が1,007(H)×230(W)×230(D)mm/2.85kg。市場想定価格は、各4万800円、5万4,800円。カラーはブラック&ニッケルが共通で、AM06はシルバー&ホワイト、AM07はアイアン&サテンブルーがラインナップしている。