歌声合成ソフト「VOCALOID(ボーカロイド)」は、「初音ミク」などを入り口に広く知られているが、その親しみやすさとは裏腹に中身はれっきとしたDTMソフト。そんな同ソフトを、鍵盤楽器のように弾くことのできるデバイス「VOCALOIDキーボード」が開発されている。
VOCALOIDを「弾く」という発想がなぜ生まれたのか
歌声合成ソフト「VOCALOID(ボーカロイド)」は、ヤマハとライセンス契約を結んだ各企業が販売している、人間の歌声をPC上で合成するためのDTM用ソフトだ。
PCの操作を苦手とする人にはとっつきづらい部分もあるが、クリエイターにも消費者にも広く受け入れられている。そのため、ソフトの入力や操作方法に工夫が必要だと感じたヤマハの有志が、「VOCALOIDを弾く」ためのデバイスを開発しているというのがおおまかな経緯だ。
「VOCALOID」という言葉が持つふたつの意味
「VOCALOID(ボーカロイド)」という単語には、ふたつの意味がある。ひとつは、ヤマハが開発した歌声合成技術。もうひとつは、同社とライセンス契約を結んだ企業がその技術を利用して開発した歌声合成ソフトを示す場合とがある。現在、「VOCALOID」という単語は後者の意味で用いられることが多い。
歌声合成ソフトとしての「VOCALOID」の代表格と言えるのが、2007年にクリプトン・フューチャー・メディアから発売された「初音ミク」だ。
「VOCALOID」という単語は、作曲に携わる人や、それを使った曲を聴かない人にとってなじみが薄いかもしれない。だが、「初音ミク」という名前であれば聞いたことがある人も多いのではないだろうか。
着々と認知度を高めている「初音ミク」
近頃の話題で言えば、国内で放映されたGoogleのテレビCMにlivetune feat.初音ミクの楽曲「Tell Your World EP」が採用された。テレビを経由することで、彼女のビジュアルがVOCALOIDファン以外の目にも広く触れるきっかけとなった。
また、海外のアンケートサイト「THE TOP TENS」上で行われた「ロンドン五輪の開幕セレモニーで歌ってほしい歌手は?」という投票ページにおいて、「初音ミク」が堂々の1位を飾ったこともトピックと言えるかもしれない。過去にはTOYOTAが国外向けの宣伝に初音ミクを起用したPVを制作したこともあり、彼女の魅力は海外でも認知されているようだ。
初音ミクは「秋葉原のキャラクター」?
「初音ミク」はキャラクターとしての認知度を著しく向上させている感があるものの、その出自はあまり知られていないのが現状だ。
2012年3月にマイナビニュース読者を対象に行った「初音ミクとは何だと思いますか?」というアンケートでも、「インターネット上の人物」、「秋葉原のキャラクター」といった回答が見られた。DTMやニコニコ動画などに通じていない人の意見が垣間見える内容と言えるかもしれない。
先ほども述べたように、「初音ミク」はアニメキャラでもネット上の架空人物でもなく、クリプトン・フューチャー・メディアが販売している歌声合成ソフトのキャラクターだ。声優・藤田咲さんの肉声をサンプリングした可愛らしい声質で、バーチャルアイドルをプロデュースする感覚を前面に押し出した「キャラクター・ボーカル・シリーズ」の最初にして最大のヒット商品となっている。
これ以降も、同社からは「鏡音リン・レン」、「巡音ルカ」など、魅力的なキャラクターを伴った「VOCALOID」が、「キャラクター・ボーカル・シリーズ」としてと展開されている。
次回は、「歌声合成ソフト」の枠にとどまらない「VOCALOID」のブレイクについて触れていく。続きはこちら。