まず、RTX810では内蔵スイッチングハブがギガビット・イーサネット(GbE)に対応した点が嬉しい。拙宅に限らず、最近ではLANポートがギガビット化したPCが主流を占めており、しかも伝送能力の要求は留まるところを知らない。

回線の速度を考えると、インターネット接続だけならGbEが必須とはいえないかもししれない。しかし、LAN側のことを考えるとGbE化は福音だ。しかもSOHOユーザーであれば、ルータの内蔵スイッチングハブだけで済ませることが少なくないだろうから、尚更である。

なお、内蔵スイッチングハブのLANポート数は4ポートで、ちょっと少なく感じられるかもしれない。クライアントPCなどの数が5台以上になる場合には、後述するSWX2200との合わせ技で解決するのがお勧めである。

個人的には、VPN(Virtual Private Network)プロトコルとしてIPsecだけでなくPPTP(Point to Point Tunneling Protocol)にも対応してくれたのが嬉しい。WindowsやMacOSがクライアント機能を標準装備していて、しかもクライアント側で必ずしも固定グローバルIPアドレスを必須としないPPTPは、手軽にリモートアクセスVPNを実現するには有用性が高いプロトコルである。

これとネットボランチDNSサービスを組み合わせれば、固定グローバルIPアドレスを全く使用せずにリモートアクセスVPNを実現できる。もっともヤマハルータ同士であれば、IPsecでもネットボランチDNSサービスの併用によってVPNを実現できるが。

通信に関連する話としては、スマートフォンの利用が増加している昨今、L2TP/IPsec対応に対応して、スマートフォンから社内LANにリモートアクセス可能になった点は見落とせないポイントといえる。あいにくと筆者の手元にスマートフォンがないため、試せなかったのが惜しいところだ。

利用可能なVPNプロトコルの種類が大幅に増えたため、VPN設定画面はこんなに賑やかになった

管理者の立場から見て嬉しいのは、電源断の際にログが消えない「パワーオフログ保存」の機能と、USBポートにデータ通信端末を接続可能になっている点だろう。すでにこれらの機能を実装した機種は存在するが、ヤマハのSOHO向けIPsec対応機種としては初めてではないか。前者はトラブルシュートの際に有用だし、後者は固定回線が開通する前の試運転、あるいは固定回線が使えなくなったときの代替手段として使えそうだ。

このほか、意外と見落とされそうな改良点として、QoS(Quality of Service)関連機能の充実がある。DTC(Dynamic Traffic Control)とDynamic Class Controlの導入により、利用可能な帯域を無駄なく使い切るのが容易になりそうだ。セキュリティ関連では、Share検知機能が加わっているのが目新しい(RT107eはWinny検知機能のみ)。

セキュリティ関連機能では、URLフィルタが目につく。既定値では宛先ポート番号80番を対象としており、キーワードやIPアドレスをトリガーにして、LAN側とWAN側の入力方向・出力方向のそれぞれについて、「pass(ログなし)」「pass(ログあり)」「reject(ログなし)」「reject(ログあり)」の選択を行える。特定のIPアドレスを持つクライアントPCについてアクセス状況を記録する、特定のWebサーバへの接続を記録あるいは拒否する、といった使い方ができそうだ。

URLフィルタは、キーワードやIPアドレスをトリガーにした接続の拒否、あるいは接続の記録といった機能を実現する