本田技研工業の研究開発子会社である本田技術研究所(以下「Honda」)は3月12日、AIや自動運転などの先進技術を活用したモビリティの実現や、それらを活用した地方都市の交通課題の解決を目指し、栃木県芳賀町との間で「交通・環境課題解決へ向けた技術実証実験に関する共同研究契約」を締結したことを発表した。

Hondaと芳賀町の両者は今回の契約により、共同で地方都市における交通・環境課題の分析を開始するとのこと。またHondaは、同社独自の協調人工知能「Honda CI(Cooperative Intelligence)」を搭載したモビリティの実用化を目指し、主に「CI運転支援システム」と「地図レス協調運転技術」の技術実証実験を行うという。

前者については、ドライブレコーダー型デバイスにHonda CIを組み込んだ運転支援システムを、同社の電気自動車「N-VAN e:」に搭載し、公道での実証実験を行うとする。具体的には、デバイスに内蔵された2つのカメラで周辺環境を撮影し、CIが運転リスクを検出するとともに、ドライバーの注視方向を認識。交通シーンとドライバーの認知状況に応じて、車内に設置したLEDインジケータでのドライバーに対する注意喚起を行うことで安全行動を促し、リスク見落としによる交通事故の低減を目指すとした。

  • 技術実証実験で使用される「N-VAN e:」

    技術実証実験で使用される「N-VAN e:」(出所:Honda)

なおHondaによると、今回用意した事件用車両は、芳賀町職員の公用車や町内のシェアカーとして活用するとのこと。その利用を経てシステムの有用性を検証するとともに、年齢や運転経験などに応じた運転傾向を計測し、高齢者や運転に不慣れな人の事故低減に向けた研究にも活用するという。

  • CI運転支援システム

    CI運転支援システムの搭載イメージ(出所:Honda)

また並行して実証を目指す“地図レス協調運転技術”は、事前に整備された高精度地図を必要とせず、車両が自ら周辺環境を認識しながら自動走行を行うもの。今般の実証開始時には、搭乗型のCIマイクロモビリティ「CiKoMa(サイコマ)」に安全監視ドライバーが乗車し、芳賀町の公道において時速20km未満の低速域で同技術の検証を行う計画だとする。さらにその後は、N-VAN e:に同技術を搭載した実験用車両を用いて、時速40kmまでの中速域での自動走行技術の検証を行う予定だという。なお、茨城県常総市の公道においても同様の実験用車両を使用した中速域での技術実証実験を行うとしており、低速域および中速域の技術実証実験で得た技術や知見を組み合わせ、自動走行技術やCIマイクロモビリティの開発に活かすとしている。

今回の技術実証実験において、芳賀町は、課題に対する解決策の検討や技術実証実験に必要なフィールドの提供に加え、官公庁との交渉および支援などを行うとのこと。芳賀町長の大関一雄氏は、「この契約をきっかけとし、Hondaの先端技術を用いて地域課題の解決が図れるよう、モビリティで拓く交通未来都市を目指してHondaとの共創を進めていく」とのコメントを残している。