最新の「11.1ch」サラウンドシステム体験

皆さんも映画のエンドロールやオーディオアンプなどのAV機器に表示された「DTS」のロゴマークを一度は目にしたことがあるのではないだろうか? DTSとは、米DTS社が提供するデジタル圧縮記録/再生フォーマット「Digital Theater Systems」の頭文字をとったもの。これまで、映画やビデオ、ゲームなど様々なコンテンツの音声方式として採用されており、限られた記憶容量の効率的な利用と高音質を両立するフォーマットとして、非常に高い評価を受けている。

また、2010年夏以降からは、DTSテクノロジーが搭載された最新モデルのPCが続々と登場し、さらにユーザーにとって身近な存在として注目度を増している。今回は、そんな現在の状況をリアルタイムに体験できたCEATEC JAPAN 2010会場の同社ブースやデモンストレーションの模様を、DTS Japan マーケティング・マネージャー 伊藤哲志氏、WWフィールド・アプリケーション・エンジニアリング/ディレクター藤崎賢一氏へのインタビューも交えつつレポートする。

「dts」のロゴマーク。映画制作の現場で磨かれたその技術は、高い信頼性と音質の証ともいえる。ちなみに、DTSが初めて採用された映画は『ジュラシック・パーク』(1993年)だ

DTSを搭載した多彩な最新PCがラインナップ

ヘッドホンなどでバーチャルサラウンドを楽しんだり、ホームシアターシステムとの接続を可能にしてくれるDTSのPC向けオーディオソリューション「DTS Premium Suite」には、DTSで収録されたすべてのコンテンツを再生可能にするオーディオデコーダー「DTS-HD Master Audio」をはじめ、PCとAVアンプなどの接続を実現する「DTS Connect」、2chスピーカーやヘッドホンでバーチャルサラウンドを楽しめる「DTS Surround Sensation UltraPC」、さらには様々なコンテンツの音量を均一化し快適な視聴が行える「DTS Symmetry」、パソコンの再生音量を最大限にし聴覚的な音量レベルを向上させる「DTS Boost」など、大きく分けて5つのテクノロジーが存在する。それぞれの機能は、Realtek製チップによりハードウェア処理されるため、CPUへの負荷も極小となっているのも大きなメリットといえるだろう。メーカーは、これらDTS Premium Suiteの各種テクノロジーを自社のパソコンにあわせて取捨選択することで、PCのサウンド能力を最大限引き出し、クリアでバランスの取れた迫力のサウンドをパソコンで実現可能なようにセットアップできるというわけだ。

PC向けオーディオソリューション「DTS Premium Suite」を搭載したパソコンなどが勢揃いしたCEATEC JAPAN 2010会場内に設置されたDTSブース

ONKYOの23型フルHD液晶一体型PC「E713」シリーズは、DTS Premium Suiteのすべてのテクノロジーが搭載されたオーディオにも注力したPC。特にDTS SymmetryやDTS Boostの効果は絶大で、ワンランク上のサウンドクオリティとなる感じ。なお、先日発表された「E715」では、iPodだけではなく、iPhoneにも対応している

最新サラウンドシステム「NeoX」を体験する

また、CEATECとは別会場に設けられたデモルームにて、現行のホームシアター向けテクノロジーである7.1chサラウンドを、さらに拡張再生可能にした11.1chサラウンド「DTS NeoX」についての体験会も実施された。会場にセットアップされたのは、通常のBlu-ray Discプレイヤーに加えて、独自のアルゴリズムにより7.1chから11.1chへのアップミックスを行うプロトタイプのNeoXプロセッサー、AVアンプといった構成となっており、製品版ではNeoXプロセッサーおよびAVアンプが一体化された、よりシンプルなデバイスとなる予定だそうだ。

11.1chサラウンドの基本的なスピーカー構成は、従来の7.1chに加えて正面および後方の左右の上方に、フロントハイト/リアハイト用スピーカーをそれぞれレイアウトするもの。これまで困難であったサウンドの高さの表現(上下位置)による臨場感溢れるサウンドを実現可能とし、音響空間そのものをリアルに再現することができる。なお、実際のサウンドを試聴してみても差は歴然であり、その3D的なサウンドはリスナーの体全体をまるごと包み込んでくれるようだ。映画などのコンテンツ以外にも、ライブ音源(DTS-CD)などでは、ステージの中心で、まるでアーティストに囲まれながら演奏を楽しむかのような贅沢な気分を満喫できた。7.1chからのアップミックスについても、無理矢理に押し広げたような違和感は皆無であり、DTS 藤崎氏からも「非常にナチュラルな心地良いサウンドを目指しチューニングしている」と述べられていた。

今回行われた体験会でのNeoXに対応した再生システム。ウーハーを含め計12個ものスピーカーを設置できるシチュエーションは限定されるだろうが、その圧倒的なサウンドのリアリティーは、サウンドにこだわるハイエンドなホームシアター・ユーザーに最適だ

携帯電話やテレビなどの多様シーンに最高のサウンドを提供

なお、DTSの採用はパソコンなどにとどまらず、急速にシェアを拡大している携帯電話・スマートフォンなどを中心としたモバイルデバイスや、薄型ハイビジョンテレビなどの分野でも進んでいる。特にサムスン電子やLGエレクトロニクスといった韓国家電メーカーなどでは、各種製品の標準搭載機能の一部として全面的にDTSのデコーダーが組み込まれる形となっており、今後は日本国内製品へもさらなる普及や積極的展開を支援していくとのことであった。

写真は今回使用されたNeoXプロセッサとAVアンプ。「NeoXは、ハイエンド・コンシューマ向けの環境として最高のサウンドを目指したもの。携帯などのモバイルから、テレビなどの各種家電製品、パソコン、業務用機器に至るまで、それぞれのシーンにおいて『ベスト・イン・クラス』なサウンドを、今後も提供していきたい」とDTS社伊藤氏は語った