Oracle OpenWorld史上初となる米Oracle CEOのLarry Ellison氏のキーノートスピーチの第2弾が9月22日に開催された。過去4年間、この水曜日のEllison氏によるキーノートでは数々のサプライズ発表やサプライズゲストの登場で賑わっていたが、今回はどうにも様子が違う。本来予告したテーマの発表内容よりもむしろ、「クラウド」の定義について米Salesforce.com会長兼CEOのMarc Benioff氏を攻撃するコメントのほうが目立ったのだ。今回はこの2人のCEOのコメントから、「クラウドとは何か?」について改めて考えてみよう。

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最初に攻撃を仕掛けたのはOracleだ。Ellison氏はOOW開催前夜にあたる9月19日のキーノートの中で「われわれの視点でいえば、Salesforce.comは"クラウド"ではない。Amazon.comのような"プラットフォーム"ではなく、あくまで"アプリケーション"に過ぎない」と述べ、同氏が発表した新製品「Exalogic Elastic Cloud」こそが"クラウド"技術を取り込んだ"プラットフォーム"であるとアピールしている。同氏は2006年に開催されたOOWで「Unbreakable Linux 2.0」を発表してRed Hatを攻撃の槍玉に挙げて以来、毎年サプライズでの新製品発表を行っては想定するライバルを設定して攻撃対象にしており、今回Exalogicのターゲットとして選ばれたのがSalesforce.comということになる。

だが奇妙な話だ。これまで発表されたUnbreakable Linux、Oracle VM、Exadata v1/v2はそれぞれ明確にターゲットとなるライバル製品が存在し、それらを攻撃対象にしていたのに対し、Exalogicに関してはハードウェア製品でサービス事業者を攻撃しようとしている。顧客ターゲットも明らかに異なり、Salesforce.comが中小企業を中心に幅広いユーザーをターゲットにしているのに対し、Exalogicがターゲットにしようとしているのはどちらかといえばプライベートクラウドを構築しようとする大企業ユーザーが中心となる。さらにいえば、ここでいう"クラウド"の定義そのものが両社でかみ合っておらず、傍から眺めている限り水掛け論争をしているようにしか見えない。では、Ellison氏の真意はどこにあるのだろうか?

Ellison氏の2回目のキーノートが開催される22日の午前中、OOW会場でSalesforce CEOのMarc Benioff氏によるジェネラルセッションが開催された。本セッションはSalesforce.comが最近プッシュしているビジネスコラボレーションツール「Chatter」を使っていかにビジネス効率を改善するかという、SNSとCRMの融合についてを論じるのがメインテーマだったのだが、セッションに現れたBenioff氏は開口一番にEllison氏の発言に噛みつき「箱1つで"クラウド"は動作しない」と切って捨てている。Ellison氏はExalogicという箱の中で動作している技術を"クラウド"といい、一方でBenioff氏は"クラウド"はそこで動作するようなものではないという。この違いはどこから来るのだろう。

米Oracle CEOのLarry Ellison氏。今年2回目の同氏のキーノートは"クラウド"を巡ってSalesforce.comの糾弾大会に