Adobeのユーザはデザイナーだけではない

読者の皆さんはAdobe Systemsをどういった企業だと考えているだろう。Adobeのどのプロダクトと関わっているかで、Adobe Systemsという会社はまったく違ったように見える。デザイナやDTPオペレータにはデザインカンパニーのように映っているだろうし、Webアプリケーション開発者にはFlashの会社に見えるかもしれない。ビジネスパーソンからすればPDFの会社だと思い、CTOから見ればエンタープライズソリューションカンパニーだろう。

そして、どれも正しい。Adobe Systemsはどの側面ももっている。アドビ システムズの2009年度事業戦略説明会でAdobe SVPのJohn Loiacono氏が発表した2008年度の世界市場の売上割合がそれを物語っている。

  • クリエイティブソリューション … 58% (Photoshop、Illustrator、InDesign、Fireworks、Dreamweaver、Flash、CS4ほか)
  • エンタープライズソリューション … 30% (Adobe Acrobat、LiveCycle ESほか)
  • モバイルおよびデバイス … 3%
  • そのほか 9%

クリエイティブソリューションカンパニーとしてやドキュメントプロフェッショナルとしてのAdobe Systemsという姿はどのユーザにも馴染みのあるものだ。しかし、エンタープライズソリューションカンパニーとしてのAdobe Systemsというのは、日本の経営者には馴染みが薄いものかもしれない。しかしAdobe事業の3割を支えているのはエンタープライズソリューションであり、そのソリューションには歴史と定評がある。

Adobeのエンタープライズソリューション「LiveCycle ES2」

今回、LiveCycle ES2についてお話を伺った米Adobe Systemsのエンタープライズ バイスプレジデントであるJohn Knightly氏。エンタープライズマーケティングのビジネスユニットを統括する

Adobeのエンタープライズソリューションを牽引するのはLiveCycle ES (Enterprise Suite)だ。2009年10月5日、ロサンゼルスで開催されたAdobe最大のカンファレンスAdobe MAX 2009において最新版となるLiveCycle ES2も発表された。つい先日の2009年11月5日、日本のアドビシステムズからもES2の発表がおこなわれた。新機能については以下のレポートにまとまっている。

デザインカンパニーやFlash/PDFの会社だと思い込んでいる経営者にとって、LiveCycle ES2がいったい何を実現するソリューションなのかは把握しにくいかもしれない。言ってしまえば「ビジネスプロセスを自動化する」といういわゆるエンタープライズ向けのソリューションなのだが…「なにが実現できたのか」という事例を先に見るとわかりやすいかもしれない。

まずは英国はロンドンの自治体・サウスワーク(Southwark)の事例だ。ここでは市民サービスの提供にLiveCycle ESが使われている。居住者は、同地区に転居するとその日からさまざまな市民サービスを受けられるのだが、以前のシステムでは、たとえば住宅手当を受け取るにも申請から給付までに30日以上を要していた。それがLiveCycle ESによりわずか1日に短縮されたという。

そのほかにも

  • オペレータの育成期間が2年から2日に
  • 給付に要する平均期間が26日から6日に
  • 家屋修理に関する満足度が58%から70%に

といった業務プロセスの改善が報告されている。システム開発にかかった期間が3カ月ということを考えると、劇的な効率改善が図られたと言ってもいいだろう。

業務プロセスを可視化することで、業務効率の改善が図られ、エンドユーザにも使いやすいシステムとなったサウスワークの事例。"使いやすい"はパフォーマンスの向上につながる。スピードは重要なサービスのひとつだ

日本におけるユースケースでは、公開できるものとしては次の事例がある。

  • 日立製作所 - グループ企業も含めて社内文書の管理にLiveCycleのセキュリティ機能を活用
  • 経済産業省 - 社内文書の管理にLiveCycleのセキュリティ機能を活用
  • 三菱東京UFJ銀行 - Mosaicの機能を活用して作業効率の改善
  • 住友信託銀行 - RIA業務管理システム
  • みずほコーポレート銀行 - 申請受付事務の効率化
  • 神奈川県宅建協会 - RIAを活用した不動産物件情報システム
  • 新潟県新潟市 - 申請から交付までを一元化する管理システム