いよいよ開幕したOracle OpenWorld 2008。初日は米Oracle社長Charles Phillips氏のキーノートに続き、同社プロダクト開発担当エグゼクティブバイスプレジデントのChuck Rozwat氏がステージに登壇した。前回2007年11月に開催されたOracle OpenWorld 2007からの細かい製品アップデート情報のほか、期待の新コラボレーションツール「Beehive」のアナウンスが行われている。

米Oracleプロダクト開発担当エグゼクティブバイスプレジデントのChuck Rozwat氏

EBS R12.1やOracle+BEAの最初の成果など、新発表が続々

PeopleSoft買収を経たOracleは顧客の既存資産保護を目的にした「Applications Unlimited」構想を発表している。これは企業買収後に買収先の製品をいきなり廃するのではなく、今後も継続的なサポートを発表し、機能強化や新技術の投入などを約束するものだ。地味な作業ながら、これが買収後も顧客をつなぎとめる仕組みとなっている。この約束は現在も続いており、前回のOracle OpenWorldから1年が経過して主力製品のアップデートも一通り出揃っている。People、JDE、Siebelからはじまり、アップデート内容は多岐にわたる。そして今回のOracle OpenWorldではOracle E-Business Suite最新版にあたるR12.1のプレビューが初公開されている。

ミドルウェア分野も同様で、1年の間にFusion Middleware(FMW) 10gと11gのそれぞれで細かい製品アップデートが行われている。またFMW 11gでは初のリリースとなるJDeveloper 11gとApplication Development Framework & TopLink 11gも同日付けでアナウンスされている。だが最も大きな話題は2008年1月に買収が発表された米BEA Systemsの製品統合に関する部分だろう。AquaLogicやWebLogicなどのBEA製品統合版が発表された。Oracle SOA Suiteに統合される形で機能拡張が行われている。また後述するが、FMWでクラウド向けの機能拡張が行われている点にも注目したい。

2008年にアプリケーション分野でOracleからリリースされた製品群。今回はE-Business Suite R12.1のプレビューを紹介

ミドルウェア分野で前回のOracle OpenWorldからアップデートされた製品群。今回の最大のアップデートはBEA Systems買収でOracleとの製品統合が進められたこと

初日の目玉はコラボレーションスイートの「Beehive」

初日の発表の目玉となるのは、やはり「Oracle Beehive(ビーハイブ)」だろう。Beehive(ハチの巣)と命名されたコラボレーションツールの新製品は、メールやカレンダー、ワークスペースといった従来のコラボレーションツールで必要とされたおよそ標準的な機能をすべて包含しつつ、ボイスメールやWebカンファレンスなどの音声/ビデオ対応、インスタントメッセージング(IM)やBlog、Wikiに代表されるWeb 2.0的なコラボレーション機能まで、ありとあらゆる仕掛けを1つの統合されたプラットフォームで利用できる。「機能ごとに製品を組み合わせることで、コラボレーション機能のフラグメンテーション(断片化)が起こっていたのが従来の問題だ。システムとの親和性は低く、統合作業も困難となる」とRozwat氏は指摘し、これが統合ソリューションとして提供される点にBeehiveの強みがあるという。

日本オラクル 製品戦略本部 シニアディレクターの西脇資哲氏によるOracle Beehiveの解説がYouTube上にあるので、こちらも参照されたい。

そして今回の目玉となる「Oracle Beehive(ハチの巣)」。Collaboration Suiteの発展形ともいえ、電子メールからIM、Blog、スケジューラまで、Web 2.0世界で一般的なコラボレーションツールすべてを包含し、統合された製品だ

Beehiveに登録されているスケジュールをMicrosoft Outlookから呼び出したところ。Outlook以外の好きなクライアントを選択できるほか、PC以外にもBlackBerryやiPhoneのような携帯電話まで、好きな端末からメールやスケジューラを呼び出せる

特徴としてはいくつかあるが、まずOracleプラットフォームとの親和性が高いこと。だが決してプロプライエタリではなく、あくまで標準プロトコルやWebサービスを介して他のプラットフォームやアプリケーションとも連携できるため、Microsoft製品など既存のシステムを残したままBeehiveを導入することも可能だ。クライアントもデモストレーションではOutlookを使用していたほか、さまざまな種類のクライアントが利用できる。またPCだけでなく、スマートフォンなどの携帯電話を介してBeehiveにアクセスすることもできる。動作プラットフォームもLinuxやWindows Serverのほか、メーカー各社のUNIXサーバを活用することが可能。

チーム間のコラボレーションにはワークスペースを作成する。ユーザー一覧から目的のユーザーを選択すると、相手のアカウントに自身のワークスペースへの招待状が届く

ワークスペースにはテキスト文書だけでなく、プレゼンテーションやPDF、音声やビデオまで、好きなファイルを収納して共有できる。また特定のユーザーを呼び出してプレゼンテーションを開始することもできる

またBeehiveの特徴として、管理ツールを経由したポリシーベースの管理など、昨今のコンプライアンスに準拠した形での運用や管理者の負担を軽減する仕組みが実装されている点も挙げられる。またユーザー権限に応じてファイルや情報へのアクセスを制限するアクセスコントロール機能を実装しており、これがセキュリティと綿密に連携している。たとえばアクセス制御下にあるファイルを削除した場合、以後他のユーザーは当該のファイルにアクセスすることができなくなる。ファイルに適時暗号化を行っており、ファイルを開く際に暗号解除のための鍵を配布することで制御しているという。鍵を無効化することで、直接制御下にないファイルにもアクセス権限を適用できる。

ファイルへのアクセスコントロール機能も搭載。制御下にあるファイルを削除した後、他のユーザーがアクセスしようとすると……

このようにBeehiveによってアクセスが拒否される。画面の例はPPTファイルだが、すべてのファイル形式でアクセスコントロールできる

Beehiveの管理ツールであるBeekeeper。ポリシーベースの集中管理により、監査機能など、企業のコンプライアンスに必要な要素が提供される