アビームコンサルティングは28日、企業グループが親会社や金融子会社などで資金を集中管理する仕組み「CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)」の導入効果に関する調査を発表した。同調査によれば、アンケート回答企業のうち、CMSを導入している企業が全体の約8割を占める一方、導入済み企業では資金集中率により導入効果などが二極化しており、内部統制が求める効率的な連結経営に大きな課題があることが分かった。

手元資金管理のコスト削減ができる「プーリング」

同調査は、連結売上高2,000億円以上の東証1部上場企業(銀行を除く)とそれに準じる企業400社を対象にアンケート調査を行い、86社から有効回答を得た。このうち、約80%にあたる69社がCMSを導入済みと回答。具体的な導入効果などに関して、この69社に対するアンケートを基に、詳細な分析を行った。

CMSの最も基本的な機能は、「プーリング」と呼ばれるサービスとなっている

そのほかの機能として、「支払い代行」「ネッティング」などのサービスがある

CMSは、企業グループの資金の一元管理をすることで資金効率化を図るシステムで、最も基本的な機能は、グループ企業の余剰資金を統括企業の口座に集中させ、グループ企業に不足資金が生じた場合は統括口座から融通する「プーリング」と呼ばれるサービスである。同サービスを利用すれば、グループ企業が手元資金を管理するコストの低減などが図れるという。

また、プーリングを一歩先に進めたCMSの機能として、返済期限が定められた資金の貸借について、グループ会社が統括会社に申請、統括会社が承認するといったワークフローを経て資金管理を行う「定期性貸借」、統括会社がグループ会社の支払いを代行し、統括口座から立替払いを行う「支払い代行」などのサービスがある。

CMSを導入済み企業の94%がプーリングサービスを導入、定期性貸借も67%の企業が導入している

そのほかには、グループ会社間の支払いを、銀行を通さず統括会社とグループ会社間の貸借に付け替えて清算する「ネッティング」という機能もある。これらのサービスは、金利負担の軽減やグループ負債の圧縮などの直接的な効果があるほか、財務にからむ不正やミスを減少させるコンプライアンス面での効果もある。さらに、日本版SOX法など内部統制の目的の1つである「業務の有効性および効率性」の観点から、業務の効率化を推進することも期待されている。