広東省・深センの華為技術本社(画像提供:華為技術)

電話会社など通信事業者向けの設備を製造する企業としては、日本ではNEC、富士通、沖電気、日立など、欧米ではEricsson、Nokia Siemens、Cisco Systemsなどがよく知られているが、創業からわずか十数年で驚異的な成長を遂げ、世界市場における売上で5本の指に入るベンダーが中国に存在する。それが華為技術(Huawei Technologies、以下華為)である。

香港に隣接する中国南部の経済特区・新センに本社を持つ華為は、設立が1988年とまだ新しいベンダーだが、2006年の総受注額は110億ドル(約1兆3,000億円)、社員数約62,500人(2007年6月末)をかかえる巨大企業である。創業時は中小規模の事業所向けに構内交換機などの機器を提供していたが、その後通信事業者向けの大規模な通信設備、ルーターや光通信機器などのネットワーク機器の開発・製造に進出し大きく売上を伸ばした。同社によれば、創業時、中国国内の電話契約数は2,000万程度だっということだが、現在では固定・携帯あわせて8億件を超えるということで、同社の急成長は中国の電話の急速な普及を背景にしている。

現在では中国国内向けよりも海外向けの出荷が多くなっており、全体の約65%が海外市場での売上となっている。目下、同社の主力は携帯電話基地局などの無線ネットワーク事業で、全売上の4割を占める。固定電話の普及を待たずに携帯電話網の整備が進んでいる新興国市場において、2G(第二世代)にあたるGSM方式の設備を提供することでまとまった量の売上を確保しており、同社では今後も長期的に2Gの需要は存在すると見ている。通信機器ベンダーとしては、中国で2006年のシェア1位、MENA(中東・北アフリカ)地域と南アフリカで同2位、南米および旧ソ連地域で同3位に位置している。

交換機や基地局、光通信機器など同社のあらゆる通信設備が展示されている本社ショールーム(画像提供:華為技術)

一方、W-CDMA方式などの3G(第三世代)設備にも力を入れており、日本でもイー・モバイルが仙台や福岡などにエリアを拡大する際、華為のHSDPA対応設備を導入している。また、華為では3G向けで開発した技術を2G製品にもフィードバックしており、2G製品に最新の技術を投入することでコスト削減を図れるほか、設備の一部共通化により2Gから3Gへの移行が容易になるという効果も得られている。

そのほか通信設備としては、ブロードバンド接続用の設備で高いシェアを獲得しており、DSLAM(Gartner調べ・2006年第4四半期)およびMSAN(Infonetics調べ・同)では世界シェア1位となっている。光通信機器でも大きな売上を上げており、最大のものでは、フィンランド国境から朝鮮半島近くまで約25,000kmにわたるロシア国内の光ネットワークを構築した実績があるという。同社では子会社のHISILICONで半導体の設計・開発を行っており(製造はNECエレクトロニクス・IBM・TIなどに委託)、ネットワーク機器製品に搭載されるASICのうち約4割は自社設計の独自チップとなっている。

さらに、3年前からは事業分野を端末にも拡大し、データ通信カードや低価格帯の携帯電話機、セットトップボックス、ビデオ会議端末などを供給している。日本ではイー・モバイルのUSB接続型HSDPA通信端末「D01HW」が華為製で、実際に「Huawei」のロゴが製品にプリントされているが、これと同型機は世界各国の事業者でも採用されている。(華為の端末事業については別記事で詳しく解説します)

イー・モバイルにも採用されたHSDPA対応USBワイヤレスモデム「E220」。香港ではSmarTone(香港でVodafoneブランドを展開する携帯電話事業者)に提供され、タクシー内で体験サービスが提供されている(右写真)