既報の通り、NTTドコモは今年5月以降、FOMAの新シリーズとして「904i」シリーズ5機種を発売する。903iシリーズに続いて、そのマイナーバージョンアップモデルの903iSシリーズではなく、いきなりメジャーバージョンアップとなる904iシリーズを投入、それに合わせて多くの新サービスを開始することで、さらなるユーザー層の獲得を目指す。ドコモの夏野剛・執行役員は、「904iを皮切りにドコモは反撃する」とその意気込みを話す。

開発発表された904iシリーズ。発売は5月以降となる

夏野剛氏

今回の904iに関して夏野氏は、「世界中のほかの方がまねできない新しいケータイの波を起こしていく」と強調。その一番のポイントが1台の端末に2つの番号とメールアドレスを割り当てる「2in1」の提供だ。2つの番号とアドレスは個別の契約ながら、1台の中で完全に使い分けが可能で、端末とネットワークの双方の開発によって提供できるサービスだという。

夏野氏は、端末の新機能だけであれば他社は比較的簡単に追従できるとし、それに対して2in1がネットワークを含めた新サービスであることから、他社は「なかなかまねできない」(夏野氏)と自信を見せる。

2in1では、端末は1台でも契約自体は2つとなり、ドコモ全体での契約数やARPU(ユーザー一人当たりの平均収入)の扱いがこれまでから変化していく可能性がある。一般的にTCA(電気通信事業者協会)が毎月公表している契約数の推移やARPUの結果で各携帯電話事業者の現状が判断されてきたが、2in1の利用者が増えると契約数が急増したり、ARPUがこれまでと異なる動きを示したりと、単純に判断できなくなるかもしれない。これに対して夏野氏は、「海外では2台の携帯を持ち、人口普及率が100%を超える国もある。顧客に望まれるサービスが出れば、統計の仕方も変わる」と指摘、「顧客ロイヤリティにはかなり貢献するサービス」とユーザーへのメリットを訴える。

サービス開始以降は、ユーザーの動向を見ながら「70x」シリーズへの展開も視野に入れるほか、当初は同一名義のみの契約のみを認めるが、これを一方の契約を法人名義でも認めることも検討するという。

もう1つの新サービスである定額制の音楽配信サービス「うた・ホーダイ」は、これまで1曲単位で購入してきた携帯向けの音楽配信に定額制を導入することで、たくさんの音楽を持ち歩くようなユーザーに対して訴求を図る。

携帯向けをはじめ音楽配信は伸びているが、流通や製造のコストがほとんどないはずの音楽配信にもかかわらず、音楽CDを購入するのと変わらない1曲300円などの値付けがされており、大量の音楽を購入する音楽愛好家にとってのメリットが薄い。うた・ホーダイでは、定額制を導入することでこの不利益を解消するのが狙いだ。

夏野氏はこのサービスに関してユーザーのメリットにつながる点を強調しているが、権利関係が複雑になりそうな着うた設定をできないようにしてでもサービス開始を優先させた点にも、このあたりの意識が働いていそうだ。

加速度センサーを使ったゲームに関しては旧ボーダフォンが最初だし、映像配信のビデオクリップも、決して目新しいサービスではないが、ユーザーの利便性や新しいゲームの楽しみ方を一気に投入し、端末とサービスを充実させていくことで「ケータイが変わる」と夏野氏は意気込む。