日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は、同社の新たなサーバー戦略、技術を紹介する「HP BladeSystem c-Class 」新製品発表セミナーを開催、ユーザー企業のひとつである全日本空輸(全日空)IT推進室の田中正史担当部長が「『次世代ITプラットフォーム』への移行の戦略と実践」と題して講演した。全日空は将来のビジネス拡大に向け、ITインフラストラクチャを検討し、統合プラットフォームの構築を進めており、同社のIT戦略とITへの見解を示した。

全日空は2006年から2009年にかけての中期IT戦略を策定している。「安心と安全を磐石なものとする」「持続可能な競争優位を実現する」「コスト競争力向上を推進する」の3点を柱として「経営とITを連携させ、アジアでナンバーワンのエアラインを目指す」(田中部長)視点から、信頼性の高い情報システムを確立するとともに、乗客の利便性を高める意向だ。

同社は196機の航空機を保有、国内線は、49都市、139路線、917便/日、国際線はグループ運航便は、世界23都市、43路線、546便/週などの路線網を擁しており、安心感、安全性を徹底化することが事業の基本となっており、これを支えるITシステムの増強は最重要課題の一つといえる。「サービス自体、ITを駆使して実現している」(同)。また、同社はANAマイレージの会員数が約1,400万人に達しており、情報セキュリティ、個人情報保護も重点化している。

経営とITの連携を促進していくため、同社は「IT戦略推進委員会」を設け、IT戦略の主だった事項について、立案、発議、重要施策の決定とその状況の把握や、評価などを行っている。さらに「IT部門経営会議」も設置し「(IT関連の)子会社を含め、戦略のベクトルをあわせる(同)ようにして、グループ全体の足並みを整えている。

同社の情報システムは老朽化により更新する段階を迎えており、課題としては「一部は、レガシーであり、各部単位など、システムごとにハード/ソフトを採用、個別最適で、複雑な構造」(同)といった点が浮上、運用付加が増大、開発工期の長期化、といった事態につながり、システム全体のコストが上昇、「コスト削減が急務」(同)となり、同社は抜本的な改革を指向した。こうしたなかで打ち出された「サーバ統合プロジェクト」は、IT中期戦略の3本柱の基礎となるものとして位置づけられる。

同プロジェクトは、運航、CRM、会計など15システムを対象に、まずコストの低減化が主題となっており、ハード/ソフトのバージョン統一、運用監視プロセスの標準化により運用コストの50%削減を目標とし、同一のアーキテクチャー、基盤への統合化で、各種ノウハウの分散を防ぎ、一つのプラットフォームへの集中化を実現する。この1月から作業に着手しており、ハードの導入、試験運用、既存インフラの移行、検証を経て、さらに1年間の移行試験を終えた後、2009年度に稼動を開始する予定だ。